第3章54話:決着

ジルは発狂するかのように叫んだ。


「あああぁぁッ!! どこまでも虚仮こけにしやがって!! テメエは殺す!!! 殺してやるぞォオオオオ!!」 


「殺すって……あなたのパンチ力じゃ無理だと思います。できもしないことを言うのは、やめたほうがいいですよ?」


「ねちねちネチネチ、うるせえんだよクソガキがァッ!! 死ねやッ!!」


ジルが殴りかかってくる。


もはや回避する気もなかった。


食らってあげる。


「オラァアアアアアッ!!!」


ジルが発狂じみた攻撃を繰り出してくる。


これだけ怒りに飲まれていても、攻撃のキレは上がっている。


だが。


それだけだ。


私には通用しない。


何度殴られようと。


何度蹴られようと。


私は倒れない。


けろっとしていた。


「なぜだ……ッ」


ジルが焦りと必死さを含んだ顔で、言う。


「なぜ、俺のパンチが効かねえ!?」


「まあ、あなたのパンチが弱すぎるからでしょうね」


「……!」


ジルが屈辱に歪んだ表情をする。


私は肩をすくめて告げた。


「なんか、ヘボすぎて可哀想になってきました。今からあなたをボコりますが、本気で攻撃したら、うっかり殺しちゃうかもしれないので、手加減してあげますね?」


「なんだと―――――ぐはっ!!?」


私はチョコレート・パンチで、ジルを殴りつける。


ジルが思い切りぶっ飛ばされた。


なんとか受身を取って、立ち上がる。


「な、なんだこの威力!? まさか、俺のパンチよりも……!?」


チョコレート・パンチの重さを味わったジルが、驚愕に震えている。


たった一発で、力量差りきりょうさを理解しただろう。


ジルのパンチより、チョコレート・パンチのほうが、強力だと。


「テメエは、まだ、11歳のはずだ……なのに、なのに……」


ジルが、つぶやく。


「俺より強いなんてことが、あっちゃいけねえだろうがアアアァァッ!!」


絶叫し、発狂し、ジルがやけくそに殴りかかってくる。


そんなジルに、私がチョコレート・パンチを食らわす。


「ぐはっ!?」


チョコレート・ハンドで張り手を食らわす。


「ぐふっ!!?」


殴る。


叩く。


打つ。


最後に正拳突きを食らわして、ジルをぶっ飛ばした。


「ぐはああっ!!?」


ジルがもんどり打って、転がった。


もう起き上がれないようだ。


呆気なかったな。


ジルが、顔を覆ったり、髪をかきむしったりしながら、つぶやいた。


「ありえねえ……ありえねえ……こんなこと、あっちゃいけねえ……」


私はジルに近づき。


にこやかな笑顔を浮かべ、彼を見下ろしながら、告げた。


「現実を見れて良かったですね? こんな雑魚みたいな実力で、人の家を壊すのはやめましょうね」


生き生きとあおりながら、チョコレート・ハンドを振り上げる。


振り下ろす。


バタァァン、とてのひらをジルに叩きつけた。


「ぐぼはっ!!?」


チョコレート・ハンドの下敷きになったジルが、つぶれたカエルのような声をあげた。


白目になって、気絶する。


勝負アリだ。

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