第3章47話:山小屋の状態

2日後。


昼。


雨。


私は、モント村からキトレル山に戻っていた。


山小屋の状態を確認するためである。


「……」


山小屋は……


ジルの宣言したとおり、破壊されていた。


崩れ落ちたかのように、倒壊している。


雨が降り注ぐなか。


私はつぶやく。


「許さない……」


勝負は明日。


ボコボコにしてやる。


そう、私は心に誓った。







<ネリアンヌ・ジル視点>


キトレル山の高級宿。


その最上階に泊まるネリアンヌ。


夕方。


部屋にジルが訪れていた。


ネリアンヌと、明日の決闘について語り合っている。


ネリアンヌは尋ねる。


「それにしてもジル、本当に良かったの? 決闘なんか受けちゃって」


「はあ? いいに決まってんだろ」


とジルは肩をすくめる。


そして続けた。


「俺があんな雑魚に負けるわけねえしな」


あんな雑魚……とはセレナのことである。


調べたところによると、セレナはまだ11歳の子ども。


ジルは、セレナには万が一にも負けるわけがないと思っていた。


「それより、ザカルの件だがよ」


とジルが話題を変える。


ネリアンヌが尋ねる。


「連絡がないんだっけ?」


「ああ。ザカルだけじゃねえ、ザカルと一緒に山に入ってた盗賊どもの音沙汰もない。たぶんあいつら……られたな」


ザカルは四人組でキトレル山に入っていた。


ところが、山に入ったきり帰ってこなくなった。


何があったのか不明だが……


帰ってこないということは、殺されたと判断するのが普通だ。


ネリアンヌは推測を述べる。


「ザカルはCランクの凄腕。なのに殺されたとなると、かなりの手練てだれが山にいることになるわね」


「見当はついてるのか?」


「……おそらく、クレアベルとかいう女よ」


「誰だそりゃ?」


「クレアベルは、セレナの母親。もともと軍で隊長をしていたらしいわ」


「なるほどな。それならザカルを殺れたとしても不思議はねえか」


もちろんザカルを殺したのはクレアベルではなく、セレナである。


しかし、セレナを大して強くないと思っているネリアンヌたちは、真相には気づけなかった。


「セレナをぶちのめしたあとは、俺がその、クレアベルとかいう女を殺す。ザカルのかたきだ。血祭りにしてやるぜ」


とジルはあくどい笑みを浮かべた。


別にジルは、死んだザカルに同情しているわけではない。


ただ暴れる理由が欲しいだけなのだった。




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