第2章16話:対決

私とヘンリックくんは木剣を受け取る。


使い込まれた木剣である。


手に馴染む。


近くにいると危険ということで、他の者たちは距離を取った。


40メートルぐらい離れた位置で見物するようだ。


草原広場のうえで、私はヘンリックくんと10メートルほどの間隔を取って向かい合う。


「安心しろ。手加減してやる」


と、ヘンリックくんが言ってきた。


ナメられてるな。


しかしユズナさんが口を挟んだ。


「ヘンリックくん、手加減はダメです。本気でやってください」


「は、はい! わかりました!」


ヘンリックくんは、ユズナさんには従順のようだ。


「では、双方構えて……」


ユズナさんが指示してきた。


私たちは木剣を構える。


ヘンリックくんは正面に構える。


いわゆる正眼の構えだ。


一方、私は右に剣を構える。


互いに【身体強化魔法】を練り上げる。


「お姉ちゃん、頑張れー!」


と、アイリスの声援。


サァッ……と風が吹き抜ける。


緑の草たちがたなびく。


静寂。


ユズナさんが号令した。


「では、はじめ!」


次の瞬間。


ヘンリックくんが、私へと素早く接近してきた。


「……!」


ヘンリックくんの袈裟斬けさぎり。


私は後ろに飛んで回避する。


しかし、


ヘンリックくんはすかさず二撃目を放ってきた。


けんが速い!


私に避けられることを想定のうちに入れていたな。


なかなか剣術に慣れてる。


私はヘンリックくんの二撃目を、地面を転がって避けた。


草が身体にへばりついてくる。


「ほう。これを避けるか。雑魚じゃないようだな。それに、身軽そうだ」


と、賞賛してくる。


「だったら――――」


ヘンリックくんはそう前置きして、左手に魔力を込めた。


風の魔法弾を放ってくる。


私はとっさに木剣に魔力を流して、迫りくる魔法弾を切り裂いた。


「そっちは陽動だよ」


「……!」


気づいたらヘンリックくんが側面から私に迫っていた。


風魔法弾はおとりであり、私の注意を向けるためのもの。


ただ、その程度は私も想定している。


だが。


「……!!?」


音がした。


風魔法弾の音である。


さっき魔法弾は切り裂いたはず……


と思って、音のしたほうをちらり見やると。


(もう一つの魔法弾!?)


ここでヘンリックくんの戦術を理解する。


最初の風魔法弾はおとり。


本命はヘンリックくん……それと、もう一つの風魔法弾だ。


つまり、ヘンリックくんと風魔法弾で、私を挟み撃ちにする構図。


それが狙いだろう。




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