第18話 エロい女子、咆哮する。
……ぺち、ぺちぺちっ!!パ、ぱぁん!!
〔おぅっ!!オウ、オオおうッ!!〕
私の部屋の入り口の
この、壁から凛々しく生えている尻は、私がかれこれ五年前に開発した大ヒット商品。土壁という無機物に、精霊になれなかった人々の無念の愛欲を練りこむことで受肉に性交じゃない成功した肉肉しい逸品で、触ってよし、撫でてよし、叩いてよし、くすぐってよし、舐めてよし、におってよしの万能インテリアなのよね。
…いやあ、出生直後にひらめいたアイデアが、まさか空前の大ヒット商品になろうとは!!って、まあいいや。
「はい、どうぞ…お入りになって」
「アス…、今日の企画会議のお迎えにあがったよ。……ああ、午後もかわいい、すごくかわいい、めちゃめちゃカワイイ、とにかくカワイイ、うう、かわいすぐるねえねえギュウしていい?いいよねはいむぎゅー♡」
わりかし淡いカラーの髪色が多いこの世界でかなり際立つ、色素が薄めではあるけれどもしっかり黒・茶系のダークカラー天然茶髪のエエ声のイケメンに、今日二回目となるほっぺスリスリを施される私、わたしっ!!!
改変された【アナくれ】世界に降り立って早半年…、すっかりこの世界のシステムにもなれ、状況を把握し、気がつけばまるでずっとこのお屋敷で暮らしていたかのようにしっくりと馴染んだカナメは、もはやナンセンの運営全般/行政改革/経済活性化対策業務/身内の暴走を止める役割その他もろもろ、なくてはならない人物となっておりましてですね!!
いやぁ、はじめのドタバタがすごすぎたから、こうも丸く収まるとは思いもしなかった…。もともと私を通じてこのお屋敷はもちろん世界を丸のぞきしてたからね、当たり前かとは思う部分もあるっちゃあ、あるんだけれども。
ホント未来ってのは…出来上がっていないというか、毎日生きてみないとナニが起こるかなんてわかんないよね。しみじみこう…出来事を重ねて過去を積んでいくという行為に、トウトミを感じるわけですよ。
ゼンブシッテいてもわからない、今現在変わっている、これから変わって行く、この世界。
わからない瞬間を何度も何度も経験して、【ゼンブシッテル】の一部にしていくんだね、私。
……大好きな人たちと一緒に、これからも…ずっと、……ずっと。
「カナメってばもー!!朝もムギュしたのに!!ホント好きねえ、アタシのこと!!…まぁ、わ、私も?あなたのこと、……大好きだけどっ!!!」
「……!!!ッ!!!くぅ~!!!」
ああ…ナレす・・・カナメが感動していらっしゃる。これは相当頭の中で大喜びヒャッホウ中に違いない。この人わりとエム傾向で、私がツン発言すると俄然喜んじゃうんだよねえ…、ま、そこがまた可愛いんだけれども♡
…さてさて、感動に浸っているだけでは、地方自治体の運営はできませんのことよ。名残惜しいけれども、ここはきちっと公私の線引きをしなくてはね。失礼にならない程度で束縛をほぐし…、25センチ大きな体を見上げ、ニッコリと微笑を向け。
「さ!!今日は踏ん張りどころよ!!可決になってしまったら…とんでもないことになるもの。……戦う準備は、良い?」
「…もちろん!僕はアスと共に、最後の一滴まで出し切って戦う所存だよ!!」
よーし!!頼もしい彼氏もいることだ!!
今日もがんばって、ナンセンの発展に尽力するぞぅ!!オー!!
「…じゃあ、今期の決算はプラス修正が入るということで!!反対意見のあるヒトは今すぐ挙手してー!!!特になければ今日の会議はコレで終了、
「……ちょっといいですか、この壁尻の報告なんですけど、ここ…これはまだ発注段階で収支が上がってません。プラスにするには時期尚早だと思います。あと、ざらつく尻に至っては開発段階であり……」
年度末の決算報告会議が開かれているグドブランズドーテル家のだだっ広い執務室に、鼓膜がしびれあがるエエ声が響く……。
ああ…熱弁を奮うカナメ、カッコいい……♡もう半年も聞いているのに、全然飽きない、むしろもっと聞いていたくなる、本当に脳髄に染み込むエエ声…♡
この声を長年自分の脳内だけに独り占めできていたなんで…ホント私って幸せ者よね。また脳内で響かせたいような、でもそんなことをしたら生カナメがいなくなっちゃうわけでぇ…うん、ナシナシ!!
私は思いがけないことを耳元で囁いたり、テンパってわちゃわちゃしたり、底知れぬ感動到来に本気で叫び声をあげたりする肉体つきのイケメンに夢中なわけであって…って!!
……イカンイカン、ついついトリップしてしまうクセが!!ブンブンと頭を振って、気を取り直し!!只今の状況を、確認をば。
大きな円卓を囲むのは、連日の激務で
「そもそも計画がずさんです、このような工程を踏まない作業では滑らかな尻肌を…手の平にしっくり張り付くようなフィット感を出せません。伝説に残るような手触りを生み出してこそのブーム到来なんですよ?…ね、アスはどう思う?こんな強引な計画、開発者としても
「そうですわね、何でも…無理やりぶち抜こうとすると痛みは大きくなるものです、ここはやはり、慎重にそっと、丁寧な流れで推し進めて行くべきだと思います!!ゆっくりと慣らして、イケそうだと思った時に一気に突っ込む、そうすれば多少の問題なんて気にならずに円滑に・・・
「ちょっと待ってそれホントに尻の話?!お前いよいよアスたんのアスたるアスをアスあちゅ?!よくも僕のかわいい娘をオオオオオおおおおお!!!」」
「ちょ?!お、お父さん?!何か勘違いをっ!!!僕はその、まだ・・・
「フンヌー!!カナメッチにお父さん呼ばわりされる覚えはないんだけど?!8歳の時に子作りなんか多分してないし!!そもそもあちゅにはね、同い年の肌のプルプルした可愛い男の子がいいと思ってたのに、なんで10歳も年上のこんなあっさりしたおっさんにぃいいイイいいいイ!!!キー!!!」」
「ラブたん落ち着いて!誰しも一度だけ経験することってあるでしょう、父親ならドンと構えていなさい!年齢はいくらでも操作できるから!!」
あーもー!!!
全然会議が進んでいかないんですけど?!
どうもこう、うちの家系はみんなしっちゃかめっちゃかになって収集がつかなくなる傾向にあるんだよねぇ。気がつくとおかしな言い争いが勃発してしまって、そのせいで議題がどっかにフッ飛んでっていつの間にか無駄に時間が過ぎているという……。
…私だってね?!できることなら早めに仕事を終わらせて、カナメといっぱいラブラブしたいのよ?!誰だって…私だって、自分のうれしいことを優先したいんだからね?!
でも、大人だからがんばってやらなきゃイケないことに集中してるのよ?!
…コッチなんか、お父様みたいにチャらい欲望なんかへでもないくらいの…ナンセンの平凡な運営よりも深刻な問題を抱えていて……ホント大変なんだからね?!
あ~も~!腹立ってきた!!!
「ハイハイ!!ちょっといったん落ち着きましょう!!いいですか、まずはじめにお伝えしておきたいのはね、結局尻は
「…貴いだけじゃ経営は成り立たないよ?アスっち。僕やラブたんを納得させる理由をきっちり示してもらわないと」
「そうだよ!!何度議論を重ねたところで結局安かろう悪かろうのほうが売れるんだって!!100エロショップ(注意:この村の通貨はエロ)の売上しってるでしょ?!あんなバッタもんのグッズにみーんなじゃぶじゃぶ金使ってさあ!!」
「高いものに手が伸びずに劣悪なものに飛びつく者は多いと思われます。気軽に叩いてもらいたいと願う尻だっているはずですし。お嬢様は恵まれていらっしゃるから、サツマイモの蔓で全身を縛り上げねばならない人々の苦しみをお分かりになれないのですよ」
「いやいやいやいや…だからと言って、美尻を作らないというのは全く違う話です。お金のない者が創意工夫をして目指すような存在があるからこそという話なんです!!高いものには高いものとしての価値が、サツマイモの蔓には乾燥してさらに締めあがる&ほど良いところで破損して助かるという利点もあるでしょ?別物なんですってば!!」
この部屋の中に、尻に対する底知れぬ愛を持っているのは……、私とカナメただ二人!!なんとしてでも…目先の欲に惑わされている
「あのね?!こう見えても私は壁尻職人の第一人者なのよ?!ここまでのブームを作り出したからには、譲れないものがあるの!!あの重力に逆らいきれない垂れ下がったまろみ、掌(てのひら)にしっとりと張り付く絶妙なフィット感、まさに触られることを意識したとしか思えない形状、尻は叩かれでなんぼ、何度も触られるために存在しているのよ?!ダメダメ、中途半端にできの悪い尻なんて絶対に認められません!!この件は本日の決定を見送り、保留にします!!」
「ええ?!じゃあ休みは!!もうヤダよ、自由自在に楽しめないニセモノの尻だけ見て過ごすのは!!いやだいいやだい!!今月こそは
「……わりと自由な発想で尻を楽しんでいたラブたんとは思えない発言だね。これは相当ストレスと性欲が溜まっている…事故が起きる前に長期休暇を挟むべきだと思うけど?」
「イェンスさん、ちょっとその件、あとで詳しくお聞かせいただけません?!新たなビジネスのニオイがプンプンします!!生尻マットに続くヒット商品が生まれるかも!!」
「そんな事より
「お嬢様ー!お風呂沸きましたよぅ!!って、今なんかニオイって言いませんでした?!」
ア~!!
もぉおおおおおおおおおおお!!!
「……じゃあ、今日から一週間肉欲ツアーに行ってくるけど!!いい?!カナメ…もし僕のアスタンを泣かすような事したら…フンヌー!今度こそ枯れ枝にして魂ヌケルまで
「ち、誓って、
どうにかこうにか壁尻企画の愚かな妥協案を退ける事に成功し、引き続き開発を見守るというこちらの希望が通ったのは昨日の事。結局なんだかんだで議論が白熱しちゃって、気が付いたら18連勤になっててさあ!!
疲れが溜まっているせいで正常な判断がつきにくくなり、無駄に議論が長引いてしまったのだなあ。その失敗を踏まえつつ、ストレスや疲労の蓄積が限界を超える前にどうにかするべきだという事になってね、キリの良い所で長期休暇を入れる事にしたわけですよ。
まあ…新しい事業計画が立ち上がったので、これからさらに忙しくなるだろうから今のうちに休んでおこう的な意味もあるんだけどね…。
「もう!!お父様ってば心配し過ぎよ!!カナメはね、ホントめちゃめちゃやさしくて紳士なんだからね?!どこかのエロまっしぐらな人と違って一途だし、自分の悦び最優先な欲しがり屋さんでもないんだから!!」
「だって!!だってぇえええ!!!ああ、アス…かわいそうに、こんなのっぺりしたおっさんの、あんな重量感のある…立派…凶暴な…うっ!!がぁアアア!ぼ、僕はね?!あちゅの身体が心配なんだよ?!フンっ、クゥワァナメぇええええ!!!!あちゅはね、おっぱいだけは立派な大人だけどまだまだ子供なんだぞ?!こんなに可憐でまだ小さくて華奢でちんまいのに!あんな化け物みたいなっ…!!!まだ生娘…初めて…ブツ、ねじ込み…ブツ……がぁああアアアア!!!」
「ラブタン!!も~、みっともないよ!!ほらぁ、馬車来たよ!!はい、乗った、乗った!!!……アスッチ、無理しないで…ガンバ♡」
にこやかな表情で
中身は……うぎゅッ!!!
筋弛緩ローション、媚薬各種、裂傷によく効く塗り薬……!!!
……ッ!!!!!!!
こ、こんなモノっ?!
―――いつも男湯で見てるから心配してくれたのね…って!!!!!!!
こ、こここここんなモノ、こんなモノっ、こんなモノ、こんなモノっ……も、もらっとくわよ!!!
「~~~~ッ!い、行ってらっしゃいませっ?!」
真っ赤になって馬車に向かって手を振る私を不思議そうに見る、か、カナメがっ!!!慌ててきんちゃく袋を…ポッケに押し込みっ!!!
「・・・?」
くぅウウウウ!!恥ずかしくて目が合わせらんない、自然と視線が下がって、アアア、ダメ、今はまだその部分に注目してはアアアアアアア!!!
「アス、…今日から一週間……二人で、頑張ろうね!」
「は、ひょふぇっ?!は、ハハハハハい、が、がむばりまちゅ、へへ、えへへ!!!!」
そう、頑張らねばならない時がね?!
だってカナメと私ってばめちゃめちゃ体格差があって!!ドンだけがんばっても貫通しないこの苦しみ、生の肉体を使って喜びを得る難しさときたらもうね?!
ドンだけ据え膳食わすのよ、この奥ゆかしくて清楚で可憐な天使の化身たるアストリットの身体はさあ!!はっきり言って挫けそうでね?!というか挫けてるんだけどね?!
毎度毎度チャレンジするも無残な結果しか…世の小柄な女性ってのは、如何にしてこの苦難を乗り越え感動を得ているのってね?!
―――並々ならぬ努力でこじ開けているのか。
諦めた人もいる?!
ゲゲ!!手術してる人までいる!!
ああ、でも私はそこまでではないのか…地道にがんばればイケそう…ああ、良かった……。
ああ、いよいよ…明日香時代もあわせて39年、長年憧れ続けてきた、生の、おt――――――
「シリエさんもトロンさんも、メイドの皆さんもみんなお休みでいなくなっちゃったからね。掃除とかは…全部やらなくてもいいかな?僕の魔法があるからなんとかなりそうだね、しばらく自炊生活になっちゃうけど、ふ、二人で一緒に…美味しいもの作ったり、お、お風呂なんかも…そのぅ……あのさ!!!とりあえず、僕アスの手作り料理とか食べてみたいな!!」
なんで料理?!
―――ああ、美味しいよって言って、その流れで…もっとおいしいものを食べたいなっていうつもりなのか!!
わ、わりとけっこうかなり綿密に計画を練っていらっしゃるぅううう!!!こ、これは期待にお応え、するしかっ!!!
応えたら私、きっと、うん、ずっと追い求めていたものに…たどり着けるよね?!
―――未来はまだ存在していないからわからないのか。
……うん、そうだね、未来は自ら作っていくものだもんね!!
「う、うん、わか、わかった!!!じゃあ、今日は腕によりをかけて作るわね?!」
……頑張って、美味しい料理をたくさん作って。
『うわあ♡めちゃめちゃおいしそう!!いっただきまーす!!!はぅむっ……』
いっぱい、いっぱい、美味しいって言ってもらって。
……パンケーキって、焼いてみないと、どんな風に出来上がるかは、わかんないのよね。
……どれだけ美味しい鶏肉料理のレシピを知っていても、うまく焼けるかどうかは、わかんないものなのよね。
ちゃんと、焼けてるかどうかなんて、恋する乙女の前では……わりと、重要ではないっていうか。
大好きな人が自分の作ったものを喜んで食べてくれているのを見てたら、うれしいがあふれて…他の事が考えられなくなっちゃったというか。
ち、チェックが甘くなっちゃうなんて…よくあることじゃない?!
……ゼンブシッテても、わかんない事なんて……いっぱいあるっていうかッ!!
「…う~ん、う~ん……、アス、あちゅぅうう…好き、好きスキ、大好きだよぅ……、うーん、うーん…!!」
シリエやトロン、つやつやしたお父様に、疲労困憊のイエンスさまがお帰りになるまで……。
付きっ切りで……大好きな人の看病を、する羽目にね?!
私は……、エロい事に憧れる、本当のエロを知らない、ただのエロい人を、まだしばらく続けなきゃいけなくなったわけでね?!
ねえ、いつになったら私、人体の神秘のシステム…官能のもたらすそこしれぬ感動という体験を!この身体で!心行くまで堪能できるの?!いつになったら気絶体験できるの?!だいしゅきホールドは?!いつになったらおねだり上手?!床上手?!
―――未来はまだ存在していないからわからないのか…って!!!
もぉ~いぃ~わぁ~あああああアアアアアアアあ!!!!!
「あ、アストリットさんや……、新しい、げ、下痢止めの、く、くすり……を」
ギュル、グルルルル、ギュルル……!
あ、アアア!
聞こえてはならない、音、おとぉおおおお?!
―――ああ、決壊が近いのか……ってぇエエええ!!
「ぅ、ううう…ごめん、ごめんねえ?!カナメぇえええええ!!!」
う、ウワアアアアアあああああああああああん!!!
~おしまい~
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