第21話 朝の闘争とエレンとのダンジョン潜り
次の日の朝、俺は攻略対象であるシリウス・フォン・アルトリウスに呼び出されていた。隣には奴隷になったアムネシアがいる。一体何の用だろう。
「ルーク・ジルベルト。僕は君に感謝している。このように彼女を手に入れられたのは彼女が奴隷になったからだ。だが、それと同時に怒っている。アムネシアに何てことしてくれた。決闘だルーク・ジルベルト」
「本気で言ってるのかシリウス」
「シリウス君駄目、こいつ化け物だよ」
「大丈夫だアムネシア俺にも策がある」
「あっそ。ならその決闘受けない。何を対価に差し出すか分からないからな」
「卑怯だぞルーク・ジルベルト」
「勝手に言ってりゃいいさ。決闘を強制なんてできるルールはここになかったはずだが」
「くっ。なら死ね」
シリウスは虹色の鉱石を取り出した。名前のないダンジョンのゴーレムのと同じものだろうか。
「ストーンフィールド」
シリウスがそう唱えると石から虹色の空間が広がった。
「この結界の中で魔法は無効。魔法科に行っているお前には分が悪い」
「そうかよ。ならこれはどうだ」
俺は周囲の魔力を思いっきり吸収する。空間に向けて吸収するようにイメージして虹色の空間は消え去った。
「何だと!くそ、どうしてだ」
「その石、魔力を吸収すると壊れるんだよ今の技がどんなのか知らないが魔力を吸収すればへっちゃらだ。こんなもので俺に勝とうとしてたのか」
「ちっ。覚えてろよ。行くぞアムネシア」
「ちょっと待て、俺に危害を加えようとしたのに逃げるのか。きちんと償ってもらおうか」
「な、何を」
俺は土属性の初級魔法ストーンバレットを放つ。シリウスの体を土の小さな塊が貫通する。それを回復魔法ですぐに治した。
「もうやめてルークさん。私が全部悪かったからシリウス君に撃つなら私に撃って」
「そういうことじゃない。こいつが余計なちょっかいを出してくることがないように釘を打ってるだけだ」
「ルーク・ジルベルト、俺をどうする気だ」
「俺に歯向かうことがどういうことか教えてやろうと思ってな。二度とこんなことをしないならやめてやってもいい」
「ふざけるな。一人の人間の人生を奪っておいて」
「そうか、続けるか」
俺はストーンバレットを放ち回復魔法をかけるのを繰り返した。それでもシリウスは耐えていた。
「こんなに強い人間がどうしてアムネシアを守らない」
「それはお前がアムネシアに対して盲目じゃないからか。その女のどこがいいのか分からない。それにアムネシアがジゼリウスを奴隷にしようとしたのは事実だろ」
「それも俺は信じない。アムネシアは確かに魅了を使って俺を虜にしたが、それから別のところに俺は惚れていったんだ」
「それと俺がアムネシアを守らなければならない理由に何の関係がある。お前が守ればいいじゃないか。第一俺に彼女が守られてお前は幸せか?」
「それは......」
「俺には守るべき人がいる。俺は自分で守ってるつもりだ。他人任せにしないで自分で守れ」
「ルークさん。もうやめて」
「俺に歯向かう気がどんな形であれなくなればいい。お前からも何か言えアムネシア」
「シリウス君。私の事ならいいから。今でも十分幸せだから。奴隷になるって聞いた時真っ先に駆けつけてくれて私を守ってくれたシリウス君がいたから私は救われた。魅了して男を虜にするって分かってても貴方は助けてくれた。私は復讐なんか望んでないよ。ねえ、もどろうシリウス君」
「はあ、はあ、君はそれでいいのか」
「いいよ」
「ルーク・ジルベルト。俺はお前を許さない。だけど今度からは戦わないことにする。お前を倒そうともしないし仲間も傷つけない」
「その言葉本当ってことでいいんだな」
「ああ、アムネシアが復讐を望んでないなら」
「分かった。信じよう」
俺はその言葉を聞くとその場を後にした。シリウスが俺達に害をなさないと思ってのことだった。その後、俺はエレンと合流する。
「おはようルーク」
「おはようエレン」
俺達は授業で教室に集合していた。とはいっても実戦でこれから俺達はダンジョンに潜るつもりですぐにいなくなるが。
「俺達はまたダンジョンに行こう」
「そうだね。私、支援魔法覚えたい。そしたらルークの手伝いできるかもしれないし」
「分かった。ダンジョンで教えるよ」
俺達は授業の訓練場を抜け出してダンジョン地獄の蓋に向かう。俺は昨日は1体エレンにガーゴイルを倒させたので、今度は2体にしようと思った。そして、エレンには結界魔法の練習をしてもらおうと思った。俺は不気味な扉を開けガーゴイルの群れを2体残して倒した。
「エレン、攻撃が通らない見えない壁があるイメージをしてみるんだ。そして、それを魔法にする」
「結界魔法だね。やってみる」
エレンは結界魔法を使おうとした。エレンが魔力を放出して出したそれは俺のより当然薄かった。
「うー、ルークみたいにはいかないよ」
「大丈夫だ。最初はそんなものだろうし。これから練習すれば上手くなるだろう。じゃあ昨日みたいにガーゴイルを倒してみるんだ」
「分かった」
エレンは火属性の中級魔法ファイアーランスを2体のガーゴイルに向けて素早く数発放った。炎でできた槍が1体のガーゴイルの翼に1発当たった。最初は躱されていた昨日と比べると成長しただろう。
「凄いぞエレン。昨日は1発で当てられなかったのに」
「ルーク程じゃないよ。でも褒めてくれてありがとう」
「再開するぞエレン。まだ敵は倒れてない」
俺とエレンは戦いを再開する。翼に火傷を負ったガーゴイルが一匹、無傷なのが一匹だ。エレンはまたファイアーランスを数発放つ。さっきのよりも速い、魔法を打つごとに感覚が研ぎ澄まされているようだった。今度のは翼に火傷を負ったガーゴイルにはすべて当たった。そして倒れる。無傷だった方も足に火傷を負った。
「頑張れエレン」
「うん。頑張る」
エレンはさっきよりもさらに早いファイアーランスを放ち残りのガーゴイルにとどめを刺したのだった。
「よくできたよ。エレン」
「ありがとうルーク。ルークのお陰だよ」
俺達はダンジョンのガーゴイルをすべて倒した後、学園に帰還する。エレンはそのまま授業を受けるのに対して、俺は名前のないダンジョンに潜ろうと思った。
「エレン。ちょっと難しい方のダンジョンに行ってくる」
「分かった。気を付けてね」
俺は名前のないダンジョンに走って行って到達する。光り輝く扉を開けて天使のような魔物を倒し、ゴーレムも倒すのを99回行い次の階層に進む。最初の内はこれに苦戦していたが魔力を吸収することができるようになってからそうでもなくなった。俺は次の階層も天使のような魔物とゴーレムを99回倒して先に進んだ。そして、メタトロンも苦戦はしたが問題なく倒せた。そうして、俺は今度こそ学園に戻った。学園ではエレンが待っていた。
「ルーク、どうだった?」
「ちょっとなまってた感じが取れたよ。これで強敵が来てもちゃんと戦えそうだ」
俺は夏季休暇中はダンジョンに潜っていない。そこからくるなまりがさっきの戦いで取れた気がした。授業はそして、座学に入る。魔法の理論についての勉強だった。魔法のイメージと理論上できる魔法について教わった。エレンが魔力増強魔法や防御力向上の魔法について一生懸命メモしていた。それで俺を支援しようということだろうか。エレンは休み時間に図書室に行きたいと言っていたので俺も付き合うことにした。エレンは図書室の本の中から支援魔法入門という本を手に取った。
「これだよ。ルークの支援ができそうだし読もうと思ってたんだ」
「そうか。俺を支援してくれるのはありがたいな。それで一応聞くけどどんな内容なんだ」
「防御力向上魔法や魔力増強魔法のやり方が載ってあるんだよ。ルークの役にも立てると思う」
「ありがとう。その気持ち嬉しいよ」
「ルークはこういう魔法は使わないの?」
「一応覚えてるけど俺戦う時ほぼ一人だったし、あんまり使わないな」
「これをマスターすればルークの協力になるってことかな」
「覚えてくれるととても助かると思う」
「よーし、マスターするぞー」
俺とエレンは本を借り教室に戻った。次の授業は魔法科学。今日は実験をする日で実験室に行ったのだった。そこでポーションを作る実験をした。薬草をある温度で沸騰させて金色の砂を足す面白い実験だった。そうして、授業が進み昼休みになった。
「ルーク、今日は何にする?」
「今日は牛丼にしようと思う。久しぶりに体を動かしたし」
「そうなの、私は今日もサンドイッチにしよう」
俺達は食堂でそれぞれの料理を注文する。そこにはクリスとアルティも来ていた。
「あ、ルーク。久しぶり」
「久しぶりだなクリス。今日は2人で食べるのか」
「そうだよ。あれから僕達恋人になったんだ」
「良かったな。邪魔しちゃ悪いか」
「そうでもないよ。みんなで食べよう」
「そうよ。私達も貴方達にはお世話になってるし」
「そうかな。アルティ、私よりもルークの方が活躍してるけど」
「ルーク、魔道具作ってくれたのは感謝してるよ。でもエレンも話し相手だし活躍ってほどではないけど感謝はしてる」
「そうかなルーク」
「エレンも友達同士だしそうだと思うよ」
俺達はそんなことを話しながら食堂でそれぞれの頼んだものを貰う。そして、今日は4人で食べた。
「ルーク、あーん」
「エレン、そんなこともしてるの私たちもするわよクリス、あーん」
「恥ずかしいよアルティ。でもこういうのも悪くないね」
こうして俺達は昼食を食べた。そうして、噴水に向かう。今日は4人で向かった。だが、魔法の仕様なのか途中でエレンと2人になった。
「ルーク、今日もお疲れ様」
「ありがとう。エレンこそお疲れ様。今日はよくガーゴイルを倒したね」
「愛してるルーク」
「俺もだエレン」
こうして、俺達はキスをする。2人だけの時間が流れ、俺達はしばらくした後その場を離れた。そうして、行ったところに、アムネシアとシリウスがいた。
「ひっ」
「ルーク・ジルベルト。何のようだ」
「何って2人で噴水に来てただけだけど」
「そうか。邪魔して悪かったな」
「す、すいません。2人って付き合ってるんですね。私はそんな2人に酷いことを」
「反省してるなら何も言わない。行くなら行けばいいだろう」
「そういえば、ルークさんも異世界からの転生者なんですよね。ゲームのことは知ってるんですか」
「知ってるけど、お前に気を付けてはいたよ」
「やっぱりエレンさんは悪役令嬢だからですか」
「え、悪役令嬢?」
「大丈夫だ。現実はそんなんじゃないから」
エレンが悪役令嬢と話された時にきょとんとするエレンだった。これは話が必要そうだ。
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