第12話 異世界三日目 一日三十六時間?!
まだ真夜中というのに目が冴えて眠れないので、そのまままた泉の
とりあえず、使える魔法はすべて試してみるつもりである。全属性・全魔法が使えるので、数が多い。それをすべて把握して、使い熟せるようにならなければならない。
興味を引く魔法から順番に試していくと結構面白く、やがて空が明るくなってきた。
ただ、妙な事に気付いた。ふと時計を見たら、九時と表示されていたのだ。まだ夜は明けていないのに???
不思議に思った俺は、何か設定とか解説とか出ないかと時刻部分をタップしてみたが…何も起きない。
今度は長押ししてみた。すると…
…時計の表示がアナログに変わった。
「おお……そういう事か!」
アナログ時計の文字盤を見て理解した。文字盤の数字は、なんと12時間ではなく18時間表示となっていたのだ。
「つまり一日が三十六時間……いや、十八時間の可能性もあるか…?」
とりあえず、一日三十六時間と仮定して……
「えーっと……十二等分が十八等分になるんだから、九時は…六時…かにゃ???」
ちょっと混乱してきたので、地面に十二時間時計と十八時間時計を描いて考えてみた。と言っても定規や分度器があるわけではなく、フリーハンドなのでかなりアバウトな図であるが、別にそれで問題はない。
慣れ親しんだ十二時間時計は簡単に描ける。十八時間の文字盤は、ステータス画面の時計の文字盤を見ながら描き写してみた。
文字盤を見比べてみると難しい事はなかった。
十二時間時計の二時間が、十八時間時計では三時間になっているだけである。
十八分の十二。イコール三分の二。
要するに、異世界時間を三分の二すれば地球時間になるという事だ。
つまり、この世界の二時は、地球時間なら一時二十分、九時は六時と言う事である。
その後、時間をチェックしながら一日過ごしてみて、一日は三十六時間である事が分かった。文字盤二周で一日が過ぎたのである。
「んー慣れれば大丈夫かにゃ…」
だが、その後ずっこける事になってしまった。
十八時間アナログ表示だったのを、もう一度デジタル表示に戻そうと思って長押ししてみたら、今度は地球と同じ十二時間表示のアナログ時計表示になったのだ。これで解決!
……だが、待て待て待て。
まだ問題がある。
それは、一日の長さである。
時計の表示は、一日の長さを何等分しているか、というだけの話。では、その一日の長さはどれくらいなのか? 一時間の長さは地球と同じか?
だが……色々知恵を絞ってみたものの、それを測る手段がまったく思いつかない。
それはそうである。この世界から、地球時間を観測する手段がまったくないのだから。
地球に居た頃、平静時の心拍数からおよそ一分間を割り出すという手法があるのを知っていた。だが、それは人間=地球人であるから使える手法である。
そもそも今の肉体は人間ですらない。また平常時の脈拍数がどれくらいかも分からない…。
ステータス画面にある時計の十二時間表示は、十八時間表示とピッタリリンクしている。つまり、この世界の一日を十二等分して表示しているだけで、地球の十二時間とは長さが違うようであった。
最初、地球からの転移者である自分に分かりやすく表示してくれる都合の良いサービス機能かと思ったのだが、良く見たら、時計の文字盤の中央に小さく「ルーシス時間」と書いてあった。
てっきり時計のメーカー名のロゴかと思って見過ごしてしまっていたのだが。
十八時間表示のほうの文字盤には「アルカ時間」と書いてあった。
つまり……もしかして、この世界には、異なる時間制度や暦を使う国や地域がある、ということなのかも知れない…。
考えてみれば、地球だって、文明が未発達で離れた地域と交流がなかった時代は、それぞれの国や地域で異なる暦を使っていた可能性もあるんじゃないか?
それでも、だいたい似通った暦や時間になっているのは、天体の動きを観測して一日、一年の長さを区切ったからであろう。
だが、例えば一日の長さは同じでも、一日を二十四時間ではなく例えば十二時間や三十六時間等で区切る事も不可能ではないわけである。割り切れる数であれば整合性は取れるはず。あるいは割り切れない区切り方をしている地域もあったかも知れない。
例えば、江戸時代の時刻表示は、干支を使った十二等分だが、二周で一日ではなく、一周で一日、二時間区切りだったはず。しかも、何故か読み方は四・五・六・七・八・九の六つの数字の繰り返しで、しかも九から始まって八つ、七つ、と少なくなっていくという謎の表現だった。(※学生時代、時代劇の時間の表現について調べる機会があって、意味が分からんと思って印象に残っていた。)
しかも、江戸時代は一日を均等に十二等分しているのではなく、太陽が出ている時間と出ていない時間をそれぞれ六等分していたのだそうだ。そのため、夏場は昼間の一時間が長く、夜の一時間が短い。冬場は昼の一時間が短く夜の一時間が長くなる仕様であったそうだ。
……とまぁ、暇にまかせて色々と考察してみたものの……
「まぁ、それほど気にする必要もないにゃ。仕事に行く必要もにゃいし。時間に追われる事はにゃいのだから…」
■その後の日々
それからしばらくは、泉の辺りで魔法の訓練を続けた。
それから泉の周辺も少し探索してみたところ、最初に見つけた木以外にも、果実の生る木をみつけた。
まずは鑑定。見た目は美味そうだが、毒だったら困るからだ。結果は…
――――――――――――
【モネードの実】
食用
非常に美味
食べると魔力が上がる効果がある
――――――――――――
魔力が、回復するのではなく上がるとある。試しに食べてみると、ステータスに表示される魔力の上限値が10上昇しているのが確認できた。
この実を毎日食べ続ければ、魔力の上限をアップできるということか。これは
それから、数日過ごしてみたが、泉の周辺には一切動物の姿は見えなかった。(泉に水を飲みに来る動物とか居るのではないかと警戒していたのだが、皆無であった。)
確かこの世界には動物と、その他に魔物も居るはずだが、どちらも今のところまったく見えない。
まぁ出ないならそれで生活に何の支障もないので、当面は気にしない事にした。
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