本文



 ジャリジャリジャリ




 ジャリジャリジャリ




 小豆を洗う、音がする。


「久しぶりだな、婆さん」


『おぉ、あんたか。久しぶりじゃの。』


「あぁ、ところで何かあったか? 木に引っ掻き跡があったが。」


『なに、少し揉めただけじゃよ。』


「気をつけろよ。」


 そんな気はしたが、やはり何かあったか。

 ほんと、体調には気をつけてほしいんだが。


『あんたこそ、どうしたんじゃ。浮かない顔をしておるぞ。』


「はは、バレてたか。」


 やっぱり、年の功かな。


「なんか、心配になってね。婆さんたちのいない未来が。」


『大丈夫た。お前なら問題ない。』


 相変わらずの、過大評価。年寄りになるとこうなのだろうか。


「ありがとう。」




 ×+×+×+×+×




 ザーザー


 ザーザー



 静かな、葉の音。小豆の洗う音がしない。


 そこには、鍋が一つ。


『懸命に』


 そう、書かれていた。




 そこに置かれていたぜんざいは、なによりも、おいしかった。


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