修正テープと私。~引き離された幼馴染みが奇跡の再会を果たすまで~
きつねのなにか
コロコロと廻すと、修正するテープが出てくる
こいつの関係はもうないな、修正。
こいつもないか、修正修正。
「何してるの、沢田さん」
顔を上げると古澤がいた。椅子に座って、あたしの机のものを前のめりでみてる。失礼な奴だな。
「ん、古澤か。関係処理をしてるの。中学の同期ももう連絡ないしさ、連絡帳に修正テープを貼ってるってわけ。あんたもすれば? スッキリするよ」
「はは、俺は小学高学年と中学全部は病院学校だったからね」
古澤の腕と脚には根元からぎっちりと義手と義足がはめられている。SFの到来ってわけではないけど、この義手などはとても高性能で生活に不自由することはない。昔は欠損って相当辛かったみたいだけどね。今は違う。
「あーそだっけ。中学からのお友達はいないの?」
「んー、まあ、大体死んじゃったからね。小児性の病気は進行も速いし治療も難しいし」
「ああ、ごめんな。それじゃあ君の記憶を修正テープで埋めてあげよう。おりゃおりゃ」
やめてくれーと義手側の腕を出す古澤。ずるいなー、あたしだってこの高性能な義手がかなり高いことを知っている。
「ずりーぞ古澤、ちゃんと生身の体を向けたまえ」
「学力トップの高校に進学した人はずる賢いのです。
「あたりめーだよ! というかあたしは優しいの!」
「ギャルってそんな言葉遣い荒かったっけ?」
「あたしは江戸前育ちなんだぁ!」
嘘である。
栃木県日光市出身である。生粋の栃木人である。でも、しもつかれは食べられない。あれは日光人が食べるものじゃない。
宇都宮市は男子校だった旧制高校(この学校の大元だね)があるが、そこも共学になっている。だから私がここにいる。ギャルもいる。ギャルはどこの高校でも産まれ、繁殖するのだ。
「あはは、まあ僕には消したくない過去があるから修正テープはまだ必要ないかな」
「あとで修正してやるんだから」
「それ修正テープとは違う意味だよね。あ、チャイムだ、待ったねーん」
なーんかこう突っかかってくる、おちょくってくる古澤。なんか心に引っかかるが分からんし、ギャルには他にもやることが沢山あるからほっておこう。
修正テープ事案以来、古澤は暇さえあれば私の所へ遊びに来るようになった。
「丁寧にもネイルの処理手伝ってくれたりするし、あんた何者だい」
「正義のヒーロー、コザワヒロト」
「子供番組の見すぎ」
そうかもね、などとほざきつつ、私の筆箱を漁り修正テープを取り出す古澤。
「あんた一体何をする気?」
「とある記憶を思い出してもらうために、脳に修正テープを貼ろうかと。大丈夫、俺病院とは付き合い長いんだ」
「正直一番不安なんだけど、それ」
あはは大丈夫などと言いながら、不敬にも私の頭にピーッと引いてきた。
「あんたー! あたしの手が動かせないことを良いことに! 不敬罪で処分する! あ、しかも大きな修正テープじゃん!」
「ふふふ、今からそこに修正内容を書き込むから顔を動かすなよ、筆ペンで書くからテープの外に外したら落ちないぞ」
「殺す! あとでぜってー殺す!」
ぎゃあぎゃあわめき立てる私の顔をそっと押さえて、静かになった私にサササッと書き込んでいく。こいつ顔は良いんだよなー。こんなことしなければ。背も高いし。右半身がほぼ義の体だから機械人間って陰口をする人もいるけど、あたしはそんなこと思わない。技術の結晶だ。
「んじゃあお昼終わってチャイムそろそろなるし、あとで手鏡でも使って読んでねーん」
「あたしを放置して帰る気!? 帰りに焼きそばパン買ってきなさいよ! 絶対だからね!」
ネイルの乾燥が終わり、手鏡で顔にやられた修正テープを見る。消しゴムで消せる奴を使ったのが奴なりの優しさか。くそがぁ。
「えーと、
沢村弘人は死んだのだ。私をかばって。しかも翌日私は宇都宮から日光に引っ越した。
私は罪人なのだ、友達殺しの。だから友達なんて作ってはいけない。
それを何で知ってるんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます