誕プレなににしよう?
翌日、私は昨日のダンジョンメンバーで、ルーシブル王国の首都・ルリルのメインストリートを散策することにした。
もちろん、ダンジョンには近づかないことを堅く約束させられて。
「カナのおかげでほんっと助かったよ。靴舐めずに済んだよ」
「むしろ靴舐めるくらいで済むならまだいいのでは? 私もよく考えもせずに貴方に着いて行って、レイナとカナ様を危険に晒して反省してますよ」
ノホホンとしているキースの頬は真っ赤に腫れている。
ヒールはするなと言われているので、とりあえずはそのままにしている。
しかし、今回のダンジョンでの一件で、よいこともあったのだ。
「昨夜、ビス様が守れなくてごめんって。今日は、埋め合わせになんでも買ってあげるからって言ってくれたんです」
「そ、そう。良かったじゃない」
「あの時、ビス様の腕の中で怖かったけど、でも、いつもよりドキドキしちゃって」
やれやれ。レイナの恋心が燃え上がり、ビスもまたしかり。これはいわゆる「吊り橋効果」ってやつだね。
もともと両想いっぽかったけど、これで一段と進展しそう。
でも、「吊り橋効果」って結構バカにならないと思う。だって私も、あの時ラセルが来てくれて、バンッて強烈な攻撃魔法放った姿がめっちゃカッコよかったなぁ……とか思ったり。
顔が美しいのも、魔法が得意っていうのもわかっていたけど、なんか気を抜くとあのカッコいい姿を思い出しちゃうというか。
いやいや、やめよう。きっと一時的な気の迷いだ。
ここ、首都ルリルには、ダンジョン目当てにやってくる冒険者の他、ダンジョンで取れる魔石を目当てに訪れる商人も多い。各国の商人が拠点にここを選ぶだけあって、大国のナルメニアよりも栄えている。
荒くれ者が集まるわりには、ナルメキアよりも治安がいいようだ。
さっそくギルドでドロップアイテムとお金を交換した。貨幣価値はいまいちわからないけど、10枚の紙幣とコインが数枚。
絶対に豪邸には手が届かないな……。
「結局もらえたお金はこれだけかぁ~。37,830ルピカ。キュウに換算するとどのくらい?」
ルピカ、がルーシブルの通貨ね。手持ちのお金を見せて、レイナに数えてもらう。
「キュウにしたら、今のレートだと7,566キュウですかねぇ」
やっぱり豪邸にはまったく手が届かなかった……。
「でも、がっかりすることじゃないですよ! 殿下の剣は国費から出てますから、また国王陛下が買ってくれますって!」
「それ、国民の血税じゃない」
レイナも貴族だから、血税って意識ないんだろうなぁ…。
「でも、37,830ルピカあれば、メインストリートでいろいろ買えそうですよ! ほら、あそこなんてアクセサリー売ってるし」
レイナは可愛らしいアクセサリーショップが並んでいる方を示す。
男女がそこのアクセサリーショップに入って、なにやらいちゃいちゃしている。プレゼント交換かな。
「あの王子様が庶民のアクセサリーなんて喜んで付けると思う?」
そもそも私、ラセルが何を好んで、何が苦手とか、全然わからない。
しいて言うなら、殺気を帯びた目で睨まれるのが好きってくらい? あ……それって趣味というよりは性癖か。
「あ、あのネックレス可愛い! ビス様……!」
レイナが目を輝かせてビスを呼んだ。店頭には淡いピンクを基調とした、可憐なネックレスが飾られている。
「レイナにとても似合いそうですね。カナ様、入ってよろしいですか?」
「どうぞ」
二人の世界になったレイナとビスを眺めながら、私も飾られているアクセサリーを見てみる。男性用もあったけど、うーん……あの人はこんなジャラジャラしたもの付けないよねぇ。
ドクロを形度ったジャラジャラしたネックレスを手に取り、また陳列棚に戻した。
「あー、羨ましい。俺も彼女ほしい」
キースがビスを妬ましそうな目で見つめ、女性用の可愛い指輪を私同様に陳列棚に戻した。
「キース、彼女いないんだ?」
「俺のお目がねにかなう女の子がいないんだ。決してモテないわけじゃないからね」
「モテないとは思ってないから安心して」
キースもイケメンではある。可愛いアイドル風の容姿だ。
性格も話しかけやすいから、大学のサークルにいたら真っ先に女の子から目をつけられそう。
「ちなみにラセルもフリーだよ」
うっ……その話題にその名前出さないで。
「ラセルがどんな女が好みか教えようか?」
「いい。興味ないし」
ツーンって感じで返すと「えぇ~」っとなぜか落胆された。
キースはラセルに一番近いポジションだから、女性側からこの話題を振られることも多いんだろうね。
七番目とはいえ、れっきとした王子様で、あのビジュアルなんだからモテないわけがない。
「でも、ラセルがどんなプレゼントを好むのかはめちゃくちゃ知りたい。このドクロとか好きじゃないよね?」
「……あいつがそういう系を身につけているところは見たことがないな」
やっぱり。何がいいんだろう。全く決まらない…。
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