第51話 伝説のアイテム

 俺が古文書に二枚のカードをセットしたのは、三ページ目の枠だ。

 そしてこのページが持っている力は合成だ。

 合成は二枚のカードを一枚にすることで、より強力なカードを産み出すことができる。

 使うのはこれが初めてだけど、合成以外にルビーさんを助けられる方法は思い浮かばない。

 俺は一縷の望みをかけながら、カードを合成する。

 するとセットしたカードは光輝き合わさると、一枚のカードに生まれ変わった。


「カードよ! ルビーさんの傷を癒してくれ!」


 そして俺は合成されたカードを手に取り、ルビーさんへと投げる。

 カードの表面には体力を全快させ、如何なる傷も治すことができると記載してあった。

 これならきっと⋯⋯いや、必ずルビーさんの傷を治療することが出来るはず。


 カードがルビーに触れると、先程の最上級ポーションの時とは比べ物にならない程、周囲が光に包まれる。


「何なのこの光は!」

「眩しくて目を開けることができんのじゃ!」


 俺は咄嗟に目を閉じて、光から自分の瞳を守る。

 そしてやがて光が収まり、少しずつ周囲の様子がわかるようになってきた。


「ルビーさん、傷はどう?」


 俺は恐る恐るルビーさんに尋ね、首筋に目を向ける。

 するとそこには大きな傷はなく、ルビーさんの綺麗な首が見えるだけだった。


「し、信じられんのじゃ! 何をしても治らなかった傷がないのじゃ!」


 良かった。これでダメだったらもう打つ手がなかった。

 俺はルビーさんの喜ぶ姿を見て、思わず地面に座り込んでしまう。


「本当に⋯⋯本当に良かった」


 そしてルリシアさんはルビーさんの傷が治って嬉しいのか、感極まって涙を流していた。


「ユートよ。我はこのまま命を散らすことを覚悟していた。じゃがお主のお陰で我は生き延びることができた。感謝するぞ」

「これはルリシアさんのお陰だから」

「私の? そういえばユートくんが使ったカードって何だったの?」

「僕が使ったカードは⋯⋯エリクサーだよ」

「エリクサー!?」

「エリクサーじゃと!?」


 ルリシアさんとルビーさんの驚きの声が、辺りに響き渡る。


「最上級ポーションと最上級ポーションを合成して作ったんだ」


 この国宝級のアイテムがあったからこそ、エリクサーを作ることができた。だからルビーさんを治療することが出来たのは、ルリシアさんのお陰だ。


「エリクサーは女神が作ったと言われる奇跡の秘薬じゃ! それを合成して作ったじゃと? そのようなスキル聞いたこともない!」

「ユートくんは遂に伝説のアイテムを作り出してしまったのね。もう凄すぎて何て言えばいいのかわからないよ」


 そういえばトアの治療法を探す時に、本でエリクサーを見たことあった。

 でも病を治すのではなく、傷と体力を回復するだけだったから特に気にしてなかったな。

 でもルビーさんの傷が治って本当に良かった。


「それでは約束通り、お主の妹を助けるために我の血を授けよう」

「あ、ありがとうございます」


 これで⋯⋯これでトアの病を治すことが出来る! 全部の症状がなくなる訳ではないけど、大きく前進したことは間違いないだろう。


「少しここで待っておれ。我の血を瓶に詰めてくる」


 ルビーはこの場を離れる。

 正直どうやって血を瓶に詰めるのか気になるが、ここはルビーに任せよう。あまり痛い方法じゃなきゃいいんだが。


「ユートくん良かったね」

「うん。でもルリシアさんが国宝級のアイテムを僕にくれたからだよ。本当にありがとう」

「ふふ⋯⋯私ばっかりユートくんのお世話になっていたから、役に立てたなら嬉しい」


 ルリシアさんは本当に良い人だ。爵位が高い人が下位の者を見下すなどよくある話だ。だけどルリシアさんは初めて会った俺にも偉ぶることはなく、普通に接してくれた。

 彼女ならきっとこれからもルビーさんと良い関係を築いてくれそうだ。


「またせたのう」


 俺とルリシアさんが話をしていると、ルビーさんが戻ってきた。

 手には小瓶を持っており、赤ワインのようなルビー色をしたものが入っている。

 あれが竜の血なのかな?

 どうやら人の血のようにどす黒い色をしている訳じゃなさそうだ。


「これが竜の血じゃ。受け取るがいい」

「ありがとうございます」

「良かったね。トアちゃんに早く飲ませてあげよ」

「うん」


 俺はルビーさんに改めて頭を下げる。

 そして急ぎセレノアの街へと駆け出そうとするが⋯⋯


「なんじゃ? 急いでおるのか?」

「はい。早くトアに飲ませたくて」

「なら我の背中に乗るがよい」


 ルビーさんはそう口にすると、再び竜の姿へと戻った。


「どこまで送ればいいのじゃ? 我の翼なら一瞬で目的地にたどり着くことが出来るぞ」

「本当ですか? ありがとうございます」


 俺とルリシアさんは、ルビーの背中に乗らせてもらう。


「さあ行くぞ。ちゃんと掴まっておれ」


 そしてルビーさんは翼をはためかせて、空高く舞い上がるのであった。



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