第3話 かなり使えるカードマスターの力

俺はセレノアの街に向かう途中、カードマスターの能力について再確認していた。


「アーカイブ」


俺は古文書を呼び出すキーワードを口にする。

すると目の前に本が現れた。


「これが古文書というやつか。しかも宙に浮いてるぞ」


古文書は、手に入れたカードをセットすることが出来るようだ。

俺は身体を上下左右に動かしてみるが、古文書は同じ様についてくる。


「だけどこれは剣を使う時邪魔じゃないか」


このままだと戦いの時、古文書も斬ってしまいそうだ。

だが古文書は俺の言葉を聞いていたかのように、俺の左側に動いたり、背後に移動する。

どうやら俺の意思で古文書の場所は決められるようだ。


それと古文書の表紙にはⅠと数字が書いてあった。これはどういう意味なのだろうか?


とりあえず俺は古文書のページを捲ってみる。

最初のページは、バトル中に使用するカードをセットする場所になっており、五つの枠があった。

そして次のページを見ようとしたが、捲ることができない。


「どういうことだ? 二ページ目を見るには何か条件が必要なのか?」


他のページも見ようしたが、結局確認できたのは最後ページだけだった。

最後のページは、常時カードを保管できる場所になっていて、十の枠がある。しかし十の内三つは既にカードが入っていた。


「これは⋯⋯パワーブースター、フォースブースター、真実の眼?」


カードにはそれぞれ文字が書かれている。


パワーブースター⭐3⋯⋯身体能力が強化される。

フォースブースター⭐3⋯⋯魔力が強化される。

真実の眼⭐2⋯⋯物の能力を見ることが出来る。


これは初回特典のようなものなのか?

だけどこれでもまだ、バトル中に使用できる枠が二つあった。

このカードマスターの能力はデメリットもある。

バトル中にカードが0枚になると命を失うのだ。そのため出来れば五枚の枠は埋めておきたい。

その時ふと目に止まった物があった。

大きな岩だ。俺の身長の五倍くらいはあるな。


「これは使えそうだ。せっかくだから試してみるか」


俺はその大岩に向かって手をかざし、言葉を発する。


「カードとなりて我が手に集え」


すると十秒程経つと大岩が光を発し、カードへ変わる。

俺はカードマスターのスキルである、カード変換を使ってみた。


「おお⋯⋯本当にカードになったぞ。これが物をカードにする力か」


カードはまるで意志があるかのように俺の手に収まる。

俺は大岩⭐1のカードを手に入れた。

これでバトル中に使えるカードは四枚になり、空いてる枠は一つとなる。


「やはり思っていた通りの力だ。この物をカードにする力だけでも、かなり使えそうだな」


後は実際の戦闘でどの程度使えるか、楽しみだ。

俺は久しく忘れていた高揚する気持ちを抑えながら、セレノアの街に向かう。

そしてセレノアの街の入口に到着すると、俺を待ち構えている三つの影があった。


やれやれ。懲りない奴らだな。


「そこの没落貴族!」


何やら大きな声で騒いでいるぽっちゃりした子供がいるが、俺は無視して街の中へと入る。


「お前! ドイズ様が呼んでいるんだぞ!」

「無礼だろ! 止まれ!」


そしてドイズと呼ばれた少年の横にいる二人も騒ぎだしたが、俺は聞こえなかった振りをして、そのまま冒険者ギルドの方へと向かう。


「ちょっと待て! 無視するな!」


ドイズが怒りを露にして話しかけてくるが、俺は何事もなかったかのように三人の横を通り過ぎていく。

失礼な奴らの話など聞く必要もない。ただの時間の無駄だからな。


「待ってくれ。ユート」


ドイズが慌てた様子で引き留めて来たので、俺は仕方なく止まってやる。

今回は一応は名前を呼んだからな。


「何か僕に用があるの?」

「貴様! 何度も呼んだのに無視しやがって!」

「今は急いでいるから手短に話してほしいなあ」

「俺達を舐めているな。不遇職の分際で!」


もしかしてカードマスターのことを言ってるのか?

カードマスターが不遇職なんて、勘違いしてるな。だけどそのようなことを教える義理もないので、答える必要はない。


「ドイズ様はお前と違って重騎士のジョブを持っているんだぞ!」

「ゴールドランクのドイズ様にひれ伏すがいい」


ジョブにはランクがあり、下から順にホワイト、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ブラックに分かれている。

これは有用なスキルを覚えたり、成長率が高いジョブが高ランクに設定されているのだ。


「何で? ゴールドランクだから強いわけじゃないよね?」


実際に下位のランクでも上位のランクの人に勝てたりもする。要は本人の戦い方と努力次第ということだ。


「没落貴族のクセに生意気な!」

「事実を言っただけだよ」

「こいつ⋯⋯本当に腹立つな。いいか! とにかくネネちゃんに近づくなよ! わかったか?」


理不尽な命令は聞く必要がないので無視する。


「もしネネちゃんに手を出すなら許さないからな!」


ネネとは確か同年代の女の子だ。精神年齢二十二歳の俺が十歳の子供に手を出す訳ない。


俺はドイズの叫び声を背に、冒険者ギルドへ向かう。


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