東京異界で、聖女の加護を受けて魔王契約して最強へと至る

高月夢叶

第1話 聖女の加護/魔王との契約

ショッピングモール内で、人々の悲鳴が響く。


漆黒の衣装に身を包んだ、手に持った、片手直剣を逃げ惑う人めがけて無造作に剣を振り降ろす。


楽しい雰囲気のショッピングモール内が、殺戮ショーと化していた。




『通り魔だー、逃げろー!』という声に聖女のフィオナさんと自称魔王のルナちゃんとの幸せなデートの時間がかき消される。  

  

人々が逃げていく逆の方向を見ると、漆黒のコートに黒のパンツ姿。手には片手直剣を持った男がお客を切りつけていた。  

  

 その姿に僕は、暗黒騎士を連想した。  

  

「そんな、銃刀法違反だろ......」  

  

あの格好と武器は異世界の住人だろうか?黒の剣士キ〇トかよ! 

 

あんなのが目の前に迫ってきたら逃げるしかない!  

  

フィオナさんとルナちゃんを連れて逃げようとした時、後ろから逃げてきた女の子が転んでしまった  

  

 腰が抜けたのかその場で動けづにいる。  

  

 だけど、無情にも、暗黒騎士は迫ってくる。  

  

 俺は、意を決して、通り魔と女の子の間に割って入った。  

  

 「沖田さん!!」とフィオナさんの叫び声が聞こえる。  

  

俺は、暗黒騎士と対峙したのだった。  

 

逃げ遅れた少女を庇う様に、暗黒騎士との間に割って入った。 

 

 片手直剣を持つ相手に現在、俺の手には、さっきまでフィオナさんが選んでいたピンクの歯ブラシセットが握られている。 

 

(ヤバイ、咄嗟とはいえ、持って出るものを間違えたか?!) 

 

こんな装備?でどう通り魔と戦えというのだろうか 

 

 明らかにリーチが違い過ぎる。コップで防いで、歯ブラシで攻撃しろとでも言うのか?! 

 

俺、死んだな。聖女様とちびっ子魔王と同棲してデートまでして、一生分の運を使い切ってしまったのだろう。 

 

 後ろに、後ずさりするもこれ以上、下がってはフィオナさんの元まで暗黒騎士を近づけてしまう。 

 

 ここで、俺が、食い止めなくては!! 

 

高校の頃に選択体育で剣道をとっていたから、その経験が活かせるかもしれない。 

 

 試してみるか?と、間合いを詰めながら、相手の出方を見る。 

 

 (動いた。そのかぶり方は胴。)


半歩後ろに後退して、剣筋を見極めて避ける。 

 

なんとか避けたが、大剣とは違い、連続斬撃出来るのが、片手直剣の利点。 

 

次の斬撃がくるのを、コップで防ぐ。ことなど出来るはずがなく、コップが弾かれ、斬撃が手の甲をかすめ、薄皮が切れる。 

 

 さらなる攻撃が来る前に振り降ろされて、右脇に隙が出来たところを歯ブラシで肩関節を思いっきり突く。 

 

 暗黒騎士がよろめいたのを見逃さず腹部にがに股で蹴りをお見舞いする。 

 

男は、「ゴフッ」と呻き一、二歩腹を押さえたたらを踏み、後退する。 

 

「やったか!?」 

 

(しまった、これは禁句だった!) 

 

「沖田、今のうちに、我の元へ来るのじゃ!」とルナちゃんが必死に呼びかける。 

 

俺は、フィオナさんとルナちゃんの元へ行くと暗黒騎士から離れた、階段の踊り場へと移動する。 

 

「お主、怪我は無いか?」 

 

「ああ、手の甲をかすっただけだ」 

 

 

「お主、よく、その程度の傷で済んだものじゃな。んと強運の持ち主なのじゃ」 

 

 

「僕も、これには、驚いているなまさか、歯ブラシセットで相手にダメージを与えることができるとは思わなかったな」 

 

「良かったです、ちゃんと加護は効いているみたいですね」 とフィオナさんが安堵の表情を見せる

 

「フィオナさん加護って?」 

 

「それは、外出前に、わたしと、したじゃないですか。覚えていませんか?」 

 

フィオナさん、白銀の雪のように綺麗な、銀髪のロングヘアーを揺らし、

サファイアブルーの無垢の瞳で見つめてくる。


黒のラインが入った、水色の神官服そのスリットから覗く、生足がセクシーでドキリとす...


いや、一〇代後半の美少女からこんなことを言われたからといってなにを考えているのだ、こんな緊急事態に!


「したと言うと?」 煩悩を振り払い、僕は気を張り直す。


なんのことだろう?まさか、アレのことだろうか?


(そして僕は、思い出す。外出前のあの甘い出来事を―) 

 

「したって、もしかして出掛ける前のあのキスのこと?」 

 

「はい、思い出してくれましたか?わたしの加護の付与方法は、チークキスなのです」 

 

 

とドヤ顔で言う。思い出したのだろうか、羞恥が混ざり、顔を赤くする。

 

 俺は、こんなに緊迫した状況なのに、フィオナさんのことを可愛いと思い、 心臓が跳ねるのだった。 

 

               *** 

 

このままでは、暗黒騎士を倒す手段が無い。 

 

 絶体絶命の状況に頭を悩ませていると、ルナちゃんが、ある提案を持ち掛けてくる。 

 

 「沖田、我と契約を交わしてあの騎士を倒すのだ!」 

 ルナちゃんは、燃え盛るような灼眼の瞳で真摯に見つめてくる。


綺麗な亜麻色のミディアムヘアーと相まって、その容貌に一四歳の少女の容姿ながら見惚れてしまう。

「そんなこと、僕にできるはずがないだろ?!」 

 (だって、僕はどこにでもいる普通の学生でそれも陰キャだ。そんな自信がない)

「いや、だから我と契約すれば、それが可能なのじゃ!」 

 

「我は、魔王で種族はヴァンパイア。吸血鬼じゃ」 

 

「そんな、中二病設定を俺に信じろと?」 

 

中学生は自分がアニメキャラに成りきる厨二病設定が好きと聞く。 

 

 きっと、ルナちゃんも、その類なのだろう。 

 黒を基調とした、魔王を想起させる、ファンタジックな服装が、それを物語っている。

 こんな緊急事態におふざけはやめてもらいたいものだ。 

 

 

 

「え?もしかして、マジで言っている?」 

 

「大マジじゃ、最近覚えた言葉で、本当と書いてマジなのだな。そして本気はガチとな」 

 

「そんなことは、今はどうでもいいよ!」 

 

しまった、思わず突っこみを入れてしまった。緊急事態にバカなことを言うから。 

 

 

「で、どうするのじゃ?契約するのか、しないのか!しない場合は皆、死ぬがな」 

 

「ルナちゃんが戦えばいいじゃないか」 

 

「残念ながら、我は、勇者との戦いで負け、現代に転生し復活したのはいいが、弱体化していて上手く力が使えないのじゃ」 

 

そんな、フィオナさんや、ルナちゃんを守ためには俺が契約して戦うしかないのか? 

 

でも、ヴァンパイアと契約するということは、人間を辞めるということだよな? 

 

 それには正直、抵抗があった。本心が怖いと訴えかけている。 

 

 昔、ダークファンタジー小説で主人公が蜘蛛に噛まれて、ハーフヴァンパイアなってしまう話を読んだことがある。 

 

 ファンタジーは好きで楽しんで読んでいたけど、まさか自分の身に起こることになるとは思いもしなかった。 

 

 「俺が決断を下さないと、皆が危険な目に遭ってしまうんだよな」 

 

「そうじゃな、頼りになるのはお主だけじゃ覚悟を決めるのじゃ沖田よ」 

 

 

「わかった。僕は、人間を辞めるぞ、ルナ―!」と沖田は契約を結ぶ、決断を下すのだった。 


「では、我と契りを交わすぞ。覚悟は良いか?」



「ちょっと、待ってくれ!心の準備が、トマトジュースじゃ駄目か?」


「なにをふざけたことを言っておるのだ。さっきの威勢はどうした!?早くせんか!」


「あー、もう。南無三!!」僕は仏へ助けを求めて叫んだ。


ルナちゃんと向き合い、ルナちゃんは契約呪文を唱え始めた。


『汝、我とここに、血の盟約により魔の契りを結ぶことをここに誓わん。汝は我、我は汝。ここに契約を交わしたり』



とルナちゃんは契約の呪文を唱え終えると思むろに首筋を露わにしてくる。


「さあ、我の血を飲むのじゃ」とルナちゃんは首筋を差し出してくる。


「そんな、僕血なんて飲んだことない。これって飲まないといけないやつ?」


「契約の儀式じゃからな、嫌なら血滴を舐めるだけでもよいが、思うような効果は望めぬぞ?」


「仕方ない、飲むよ。皆を守るためだ」


僕は、意を決して彼女の首筋に噛みつき、血を吸う。


「んっ、く......」とルナちゃんは艶めかしい声を発する。


僕も、変な気持ちになってくる。



「よし、これで、我とお主と魔力のパスが繋がったぞ」


「そ、そうなのか?!」



「これでお主に我の魔力が宿ったぞ。魔法が使えるようになり、ヴァンパイアの身体能力を得たことだろう」



「僕に、力が......」


体の奥底から暖かくなったかと思うと、強烈な激痛が走る。


体中の細胞が組み換えられているようだ。


「ぐ、うがーーーー」


あまりの激痛に僕は気を失うのだった。


               ***


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