第118話 辺境伯の街の繁華街
side ある成人したての冒険者???
ダンジョンからの帰り、パーティの内のふたりと寄り道をする事にした。成人してからはごくたまに、仕事帰りに酒を飲むことがある。
若鳥の拠点でも食後に集まって、ちょっとしたおつまみと酒を酌み交わしていると意見交換が始まったりもしてそれはそれでいいのだが。
ただ大人の雰囲気というか子供だと来られなかったからか、繁華街の空気感を大人になった気で楽しんでいるわけだ。
リーダーに言わせると大人の世界も楽しいばかりではないかもよ、とのこと。ともあれ酒に溺れたり、飲まれたりしなければ酒場は情報収集にもなり勉強にもなるのでいいんじゃないと言われた。
いつも思うのだが、リーダーは見かけ7、8歳のお子さまである。確かにとか、そうだなとか、ちゃんとしようと話を聞くと思うんだけど、でもやっぱりなんだか眉が下がるんだよ。
これってなんて言うのかなぁ、と思っていたら仲間の1人がなんとなく座りがわるいということじゃないかと言う。
別のやつがおさまりが悪いってやつか、と言ったのでそれは少し違う気がすると他のやつが意見を出す。
そんなふうに大したことない、気の抜けた話をわぁわぁと言い合うのも楽しい。こうしてはしゃげるのも、怪我もなく稼げているからだし。
ふと周りを見ながら、暗い顔つきの奴がほとんどいないことに気づく。身なりは皆労働者なのだが、それなりにこざっぱりしているし食い詰めている感じがない。
景気がいいというより、治安がいいからだと思う。そして皆それなりに働く場所があるんだろう。今の辺境伯領の街では、路上に座り込んでいるような難民みたいなのがほぼいないんじゃないかな。
街中を騎士団と自警団が協力して巡回とかしているし、各ギルドも仕事の相談とかのってくれる。新しく街に来て、頼る人がいなくても相談できる場所や助けを求める相手がいる。
こんなふうにできるのは、領全体にゆとりがあるからだと誰かが言っていた気がする。
ふと不穏な感じがしてそちらを見る。パーティの仲間も同じ方を見ていた。
流れ者っぽい酔った客がふらりと給仕に近づく。俺たちが動く前に近くの熟練そうな冒険者がサッと取り押さえた。
目が合って騎士団を呼んでくれ、と言われたので仲間がひとっ走りする。その間に気絶させた男の手と足を簡単に縛るのを手伝った後は店の端に転がしておく。
よく持ってたなぁ、と周りから感心されたがなぜかうちのクランでは縄とか持っているやつらは多い。そういえばなんでだろうな。
あぁ俺たちは駆け出しだから仕事を選ぶ余裕はない。だから何でもやる。掃除やお使い、探し物、その日どんな仕事をするか分からないから、急にどんな仕事を頼まれても困らないように下準備しているってわけだ。
すぐに巡回中の騎士が来て、酔っ払いを引き取ってくれた。酒代は騎士が払っていた。ヘェ〜と思って見ていると、後からちゃんと酔っ払いに支払わせるらしい。お金がない場合は労働をさせるのだという。
よかった、それなら納得だ。それにしても騎士さんも格好いいなぁ。ヒョイっと肩にかついで楽々と退場したよ。
俺たちも切り上げて拠点に帰る。あんまり遅くなると晩ご飯にありつけなくなるからな。まぁ結局俺たちの大人の時間など、ほんの宵の口でまだまだ奥は深いのだろう。
いつかは朝帰りとかやってみたいが、今はまだ身体を鍛えてしっかり稼ぎたいから睡眠はしっかりとる。
明日も早い、はやく帰ろう。
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