第39話 信じる
* * *
あれからずっと寮の自室にこもっている。
自分自身でもよくわからない。
いったいどうしてこうなったんだ?
「猫耳娘に
机の上からイナバに説教をくらう。
わかってはいるけど、認めたくなかった。
あんなに良い子そうなミアに嵌められるなんて、女性不信になりそう......。
でも、冷静に考えればわかることなんだ。
ミアはエマの友達で、エマはトッパーたちの仲間。
トッパーたちは間違いなく俺が気に入らないはず。
ヤツらがミアを使って俺を
「たしかに、脇が甘かったのかな......」
「しかしあの証拠映像は一体なんなのじゃ?本当にお主は記憶にないんじゃろ?」
「ないよ。気がついたら気を失っていたんだ」
「いくら事実無根でも、あの証拠を覆すのは厳しいぞ?」
「あ、あのさ」
「なんじゃ?」
「イナバは俺のこと、疑ってる?」
「そもそも、そんな輩ならお主の魔法は使うことなどできぬ。何せ神の魔法じゃからな」
「そ、そうか。良かった」
「そんな余計な心配はせんでいいから、この状況を打開するための方策を考えることじゃ」
「そ、そうだよな」
ほんの少しだけ安心した。
少なくとも、この白兎だけは俺の味方だ。
そう思った時。
ドンドン!
いきなり玄関から激しいノック音が鳴り響いた。
「ヤソみん!」
ドア越しに声も届いた。
この声...フェエルだ。
転瞬、嬉しさよりも気まずさが溢れてくる。
「ど、どうしよう」
「このタワケが!」
「ぐべぇっ!」
イナバに殴られた。
「な、なんだよ?」
「はよ出ていってやらんか」
「だ、だけど」
「味方はオイラだけだと思っておるのか?ふんっ、愚か者が。お主はフェエル少年の心を信じられんのか?そんなお主のことをフェエル少年は信じられるのか?」
イナバに言われてハッとした。
そうだ。
まず俺がフェエルを信じないでどうするんだ。
じゃないとフェエルにも信じてもらえるわけなんてないじゃないか!
「フェエル!」
俺は跳ねるように立ち上がって迎え出ていった。
「や、やあ、ヤソみん」
「うん......」
ドアを開けて顔を合わせたはいいものの、お互いそれ以上の言葉が出ない。
......ダメだ。こんなことじゃ。
ちゃんと話さなきゃ。
俺が潔白だってことをちゃんと伝えなきゃ!
「あのさ...」
「ねえヤソみん!」
切り出そうとした俺を制するように、フェエルが勢いよく声を上げた。
「まず最初に教えて!」
フェエルは俺の目をじっと見据えて要求する。
その表情は必死そのもの。
フェエルのこんな顔、はじめて見る。
「ヤソみんは、本当にミアちゃんに無理矢理迫ったの!?」
単刀直入。
余計な言葉は一切ない。
それはむしろ、誠実なフェエルのひたむきさに感じる。
自分勝手な解釈かもしれないけど、俺はフェエルから背中を押された気がした。
「......俺はそんなこと、やってない!」
俺もフェエルの目をしかと見据えてハッキリと答えた。
「信じてくれ!」
そのまま見つめ合うふたり。
何秒経っただろう。
いよいよフェエルが口を開いたとき、俺は一転して呆気にとられてしまう。
「わかった。ぼくは信じるよ」
「......え??」
「ぼくはヤソみんのことを信じる」
「そ、そうか。あ、ありがとう......けど、まだ俺、なにも説明していない」
「これから聞かせて」
「そ、それでいいのか?」
「うん。まずはヤソみんの口からハッキリと「やってない」という言葉を聞きたかったんだ。はじめからヤソみんのこと、ちゃんと信じたかったから......」
「な、なんで俺なんかのことをそこまで...」
「ヤソみんと過ごした時間はまだ少ないけど、ヤソみんとの時間はぼくにとって......すごく大きいんだ。人が聞けばバカだと思うかもしれない。でも、これはぼくの本音だよ」
そう言ってフェエルはおだやかに口元を緩ませた。
......胸が熱くなる。
さっきまでの自分が情けなくなる。
イナバに言われたとおりだ。
俺にもちゃんと味方はいたんだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます