第28話 ギャル
*
「あっ、ヤソみん、おはよ...て、どどどうしたの??」
教室で顔を合わすなりフェエルが驚いた。
「ね、眠れなかったの?」
そういうわけではない。
寮の部屋は実に過ごしやすいものだった。
ルームメイトがいるとはいえ、居室内にそれぞれの自室もあるからゆっくりできた。
できたけど......。
「同部屋のライマスが変なヤツでさ......」
「そ、そっか。寮あるあるだね......」
げんなりしながらフェエルと並んで席に着いた。
ぞろぞろとクラスメイトたちが入ってくる。
トッパーたちもダルそうにやってきた。
「よぉ、ザコフェル子ちゃ〜ん」
ヤツらはさっそくニヤニヤと絡んでくる。
「お、おはよう」と会釈するフェエル。
それは明らかに無理して作った笑顔。
トッパーはさらにズイッと迫ってきた。
「今日の昼なんだけどよぉ?ちょっと色々と頼まれてくんねえかなぁ?」
「ど、どんなことなのかな」
「ああ?そんなのイロイロとだよ。イロイロと」
俺はトッパーのいやらしくニヤついた
その視線にトッパーがはっと気づく。
「な、な、なんだよ」
「......」
俺は無言でヤツを睨みつけながら、それとなく鞄の中から御神札を出すフリをした。
直後、みるみるうちにトッパーの顔色が変わりはじめ、
「ま、まあいいや」
それだけ言って壁際の奥の席へと去っていった。
「クッ!くそ!」
悔しそうにツレのマイヤーも続いていった。
ヤツらが席に着いたことを確認してから隣へ振り向くと、フェエルと目が合った。
俺がそれとなく微笑すると、フェエルは嬉しそうに微笑んだ。
そんな中。
「うぃ〜す」
ふいに見たことのない生徒が教室に入ってきた。
紫色の入った長髪をサイドテールに結んだ、生意気そうなギャルっぽい女子。
彼女は、背の低いツレのギャルを伴って、他の女子たちとチャラい挨拶を交わしながら壁際の奥へ進んでいく。
「昨日はサボりか?エマ」
「それがさぁ?イイ感じの店見つけてさぁ?ミャーミャー連れて行ってきたら学校来んの忘れちった」
「いつも気楽なやつだなーお前は」
「トッパーにだけは言われたくねえわ」
エマという女子はツレとともにトッパーたちが占拠する席へ着くなり、髪の毛をいじりながら教室を見まわした。
「あれぇ?ミャーミャーは来てないの?」
「まだ来てねえな」
そんな彼女を横目でじ〜っと観察していると、
「ね、ねえヤソみん。あ、あんまり見ないほうがいいよ」
隣のフェエルに注意された。
「あんなギャルみたいな
「エマ・フィッツジェラルドさんのこと?あの
「えっ?そうなの?」
「ジークレフさんみたいな名家とはまた違うけど、エマさんはフィッツジェラルドバンクの社長令嬢なんだ。なんでも学校に多額の寄付もしているんだって」
フェエルの話を聞いているうちに、ますますあのグループとは関わり合いたくない気持ちが強まった。
メンドクサイ想像しかできない。
改めて「今日からは目立たずにいるぞ」と誓いを立てた。
そのために今日は神使の白兎も部屋に置いてきたんだ。
当然イナバは不満たらたらだったけど仕方ない。
今は大事な時期なんだ。
※イメージ画像
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます