お祭り騒ぎ

いよいよ祭りが始まった。

村の人達は皆自分ができる全力のお洒落な格好で祭りに出てくる。

もっとも田舎だし踊りもあるから動きやすい服の人でワンポイントでお洒落を取り入れている人も多い。


「一緒に祭りを楽しもうね!」

「もちろんだよ。色々食べまくってやろうじゃないか」


かくいう俺達もそんな中の一人。

フィアは俺がシャハミーであげたブレスレットを付けているし俺もフィアに服を選んでもらったりした。

浮かれながら家の外に出る。


目に飛び込んできたのは祭りの熱気とどんちゃん騒ぎ。

二人の目に映る人々の顔は笑顔で溢れていた。


「私達も行こっ!」

「ああ!」


二人は人々が集まり笑い合う会場へと走っていった。


◇◆◇


「わ〜!いろんな屋台があるね!」


アンから事前に聞かされていた通り周りの町から商人が集まっているようだった。

いい匂いがそこらじゅうからしてきて食欲を刺激してくる。


「まずは軽く何か食べようか。何食べたい?」

「焼き鳥食べたいな」


フィアは焼き鳥が好物だと言っていた。

昔おじさんから貰った焼き鳥の味が忘れられなくて本人曰く焼き鳥のためだけに城を抜け出していたと言っても過言ではないらしい。


「分かった。お金は用意してあるから」

「やった!探しに行こう!」


お金は今まで狩りをしたりして貯めた分がある。

元々はこれでベットのツケを返そうとしたのだがピアットさんからいらないと言われたので遠慮なく祭りで使える。

祭りを満喫する準備は万端ということだ。


二人で手を繋ぎながら焼き鳥の屋台を求めて歩く。

はぐれないように繋いでいるのだがこういったイチャイチャを目的としてないスキンシップもいつもとは違った良さがある。

何気ない行動に幸せを一つまみ加えたイメージだ。


「あ、あれじゃない?」


フィアが指を指す方を見ると確かに焼き鳥を焼いている屋台があった。

色んな部位の肉がタレと塩の2種類ずつ焼かれていた。


「何をお求めだい?」

「フィア、何がいい?」

「うーん……」


フィアはメニュー表を見ながら真剣に吟味する。

俺には見えてない違いが見えてるのだろうか?

考え込むこと3分、ようやく決まったようだ。


「皮をタレと塩1本ずつで!」

「はいよ!そっちの兄ちゃんはどうする?」

「もものタレを1本くれ」


俺はシンプルにもものタレにした。

オーダーを聞いた店主は手際よく肉を焼いていく。

タレの香ばしい香りがたまらない。


「はい!おまち!」


できたての焼き鳥を渡される。

金を払いゆっくり食べられそうなスペースに移動する。

二人並んで座り焼き鳥を一口かじる。

タレは相当こだわっているようで甘じょっぱくて香ばしく本当に美味しい。


「そっちも美味しそうだね」

「一口いる?」

「いいの?」


そう言いながらも目が輝いている。

俺は苦笑して頷きフィアの前に焼き鳥を差し出した。

フィアは嬉しそうに一口食べる。


「うん、おいしい!お返しに私のも一口あげる

ね」


フィアが皮タレを俺の前に差し出してくる。

キスは何回もしているのに何故か少し気恥ずかしい。

それでもせっかくくれるのだからと一口いただく。

ももとはまた違うコリコリとした食感がすごくおいしい。

一つ望むならめちゃくちゃ酒が飲みたい。


「お酒飲みたいって顔してるよ。ダメだからね?まだ怪我が治ってないんだから」


顔に出ていたのかフィアにバレる。

怪我はだいぶ治ってきたが完治はしてない。

そのため俺は飲酒を禁じられていた。

元々フィアに酒を飲むなと言った立場だから一人だけ飲むつもりはなかったけど。


「分かってるよ。怪我が治ったらいつか一緒に家で飲もうね」

「いいね〜!ジャックさんとアンちゃんを呼んだらすごく楽しそう!」


フィアが酒を飲んでるところを見たことはあっても一緒に飲んだことはない。

せっかくだしおいしそうな酒とおつまみでも調べておこう。


「さて、次はどこへ行こうか」

「次はアルの行きたいところだよ〜」


それから俺達は祭りをこれでもかと楽しみまくる。

先日の一件で顔を覚えてもらったらしく俺もフィアも村の人達にたくさん話しかけられた。

関係をたくさん聞かれたが婚約者と答えておく。

気の良い人は奢ってくれたりして楽しくて村の人達と更に仲良くなれた有意義な時間だった。


「たくさん食べたね〜……」

「そうだな。踊る余裕残ってる?」

「うーん多分大丈夫」


俺達は踊りのことを考えずたくさん食べてしまった。

フィアからは不安な答えが返ってきたが最悪見てるだけでも十分楽しめるだろう。

みんなが踊る広場へ向かおうとしたとき俺はあるものを見つける。


「フィア。あれ見て」

「……?あっ!」


俺が指を指した方向にいたのは仲睦まじく並んで歩くジャックとアンだった。


甘酸っぱい恋の予感を感じた二人は顔を見合わせて笑顔になりしばらく遠くから見守った。


────────

明日より新しく『親から一軒家を貰ったので婚活を始めようとしたら幼馴染が立候補したので結婚して人生勝ち組!』の連載を開始します!


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