亡命開始
「ソフィア=ブロードベントがアルバート=カルヴァンに最後の命を出します!あなたも生きて私をこの国から連れ去りなさい!」
「お任せください。このアルバート。必ずや殿下の命を遂行いたします」
殿下の幸せのためならばなんだって成し遂げてみせよう。
「それでは殿下。すぐにでもこの城から脱出するのでご準備をなさってください」
「今から脱出するのですか!?」
「思い立ったが吉日とも言いますしこれ以上ここに残って殿下に負担をかけるわけにはいきませんから」
「ろくに作戦も練らずに脱出できるとは思えないのですが……」
「ご安心を。既に計画を練り準備も整えてあります」
ありえないことだとは思ってたけど冗談半分で殿下との逃亡計画を練ったことがあるんだよね。
まぁそんなことはわざわざ殿下に伝えるつもりはないけど。
過去の俺グッジョブ!
「私は自室から色々持ってきますのでその間に殿下はご自慢の平民コレクションに着替えておいてください。着替えも用意しておいてくださいね?」
「な……なんでコレクションのことを……!?」
「なんのための護衛だと思われていたんですか?あれくらいでは俺は撒けませんよ」
「う……ごめんなさい」
「まぁ過去のことはいいです。とりあえず着替えておいてください」
「わかりました……」
殿下に着替えておいてもらいその間に俺はお金や着替えなど旅に必要な物が入ったバックを取りに行く。
なんでそんな物が準備されてるかって?
ありえないことだと思ってたからせめて妄想くらいは楽しみたかったんだよ……
俺も平民の服に着替えてバックを持ち誰かに見つからないようにこっそりと再び殿下の部屋に向かう。
「殿下。アルバートです。入室してもよろしいでしょうか?」
「入ってください」
殿下から許可が出たので入室する。
殿下は既に王族は絶対に着ないであろう町娘のようなワンピースを着ており着替えもちゃんと用意している。
気品は残ってるのに年相応の少女って感じですごく可愛いな。
「着替えはこのバックに入れてください。私と同じバックに入れるのは嫌かもしれませんがご容赦ください」
「嫌なんかじゃありませんよ。よろしくお願いします」
殿下が着替えをバックに押し込み準備が整う。
「では……本当に良いんですね?」
「構いません。よろしくお願いします」
これ以上はもう戻れない。
俺も殿下も覚悟を決めた。
「失礼します」
「きゃっ!?」
殿下をお姫様抱っこの形で抱き上げる。
めっちゃ柔らかいしなんか甘い匂いするし温かいしずっとこのままでいたいなぁ……
とはいえこれは時間との勝負だ。
律儀に城の中を通って脱出するわけにもいかないし早いので殿下を抱いたままバルコニーから飛び降りる。
できるだけ着地の振動が殿下に響かないようにそうっと猫のように着地し殿下を立たせる。
「大丈夫ですか?」
「え、ええ大丈夫です。それにしてもよくこの高さから人を一人抱えた状態で躊躇なく飛び降りれますね。もしかしてアルバートは猫ちゃんなんですか?」
「これくらい殿下の専属従者なので余裕です。それに殿下は羽のように軽かったので」
「お世辞がお上手ですね」
お世辞じゃなくて本心なのに……
さて、城を脱出してもまだここからが本番だ。
明日の朝に間違いなくバレて追手が放たれる。
それまでにいかに国境付近まで近づけるかが鍵になってくる。
「ここからは時間との勝負になります。これをお使いください」
「これは……フードですね。確かにこれなら少し顔を隠せそうです」
気休め程度だがそれでも無いよりかは遥かにマシだ。
「まずは馬に乗って城から離れましょう。馬はこちらに用意してあります」
「馬……?いつの間にそんなの用意してたんですか?」
「これも専属従者として当然のことでございます」
そして俺と殿下は王都の少し郊外に行ったところにある牧場に移動する。
広い土地に馬が自由に過ごしている。
もっとも今は夜なので寝ている馬も多いが。
さてとお目当ては……あそこか。
「殿下、この馬に乗って逃げましょう」
「え!?勝手に盗っていっちゃうんですか!?」
「大丈夫です。この馬は私の趣味の遠乗りのためにちゃんと牧場主と契約して買った馬です。私事で買った馬を王城で飼育するわけにはいきませんから遠乗りするとき以外はここで預かってもらってるんです」
「そ、そうだったんですね」
「申し訳ございませんが殿下は私の前にお座りください。護衛面と旅費面でそちらのほうが都合が良いので」
「それは別に構いませんが……」
殿下の了承を得られたから俺は先に馬にまたがり殿下を引き上げる。
そして殿下も馬にまたがり俺は手綱をしっかりと握ることで殿下がすっぽりと腕の中におさまる。
あ〜殿下と一緒に乗馬なんて夢みたいだな……
効率と安全を考慮した結果だったけどこんな嬉しい副産物がついてくるとは……
「では殿……ムグっ」
呼びかけようとしたところ殿下に手で口を抑えられる。
「敬語はこれから無し。ね?アル」
「……分かったよ。フィア」
そして二人でニコリと笑い合い夜の牧場を駆けて行った。
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