千代五星異聞奇譚 白光の焔

トヨタ理

青葉ヶ山の伝説

むかしむかし

青葉ヶ山あおばがやまに お狐様という 白狐の山神が おった



しかし

お狐様は 大変に 気まぐれで

たびたび

気分が悪いと 苛立っては 地を焔で焼き

供物が 気に入らぬと 大嵐を 巻き起こした



村が 荒れ尽くされ 困り果てた 村人たちは

お狐様の 怒りを 鎮めるため

村の赤子を 贄として捧げようと 話し合った



その次の日 赤子を 捧げるため

山へ向かっていた村人たちに

通りすがりの とある旅人が こう言った



「この山神は 神にあらず

人を まどわす 魔の妖狐

この私めが 退治して みせましょう」



その夜

旅人は 赤子の代わりとなり

己を 食らおうとした お狐様を

毒を仕込んだ 一本の大槍で 突き刺した



毒に 犯された

お狐様は やがて 骸となり

旅人の 言いつけ通り

村人たちは お狐様を

森の奥の 深い沼に 沈めた


その沼は 後々 白狐沼と 名付けられた



そうして 村には 平穏が 訪れたが

お狐様の 眠る 白狐沼は 

今もなお 呪いが 残され


夜中に 足を 踏み入れた者を

呪い殺すと言われている



————青葉ヶ山あおばがやま 白狐沼伝説より

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