第1話


 物を作ること。それは、笑顔を作ること。



 カランカラン


 扉が開いた音がする。陽の光がうっすら青く、窓の外から差していた。


「いらっしゃいませ」


「こんにちは、ここで折り紙を売っていると聞いて。」


「えぇ、売っていますよ。」


 折り紙。紙一枚が作り出す奇跡。作り手の感情すらも折り込まれるこの世で一つだけの奇跡。それは、きっと笑顔を呼ぶ。


「おぉ、これはすごい。」


 部屋には、あちこちにツルが飛び、カエルが鳴き、桜が咲き、そして、たこが飛んでいた。


「どうぞ、お好きな物をお選びください。」


 その男性は、一面にある折り紙を見て、千羽鶴で目が止まった。


「こちらですか?」


「あぁ、すみません。」


 少し、謙遜しながらも、男性は受け取った。


「綺麗ですね。」


「失礼ですが、何かありましたか?」


「すみません、実は癌が見つかりまして。少しでも笑顔になってほしいな、と。」


「なるほど、それでは一緒に作りましょうか、千羽鶴を。」





 必ずしも、千羽鶴は千羽でなくても良い。


 そう言ったら、笑って「お願いします。」と言ってくれた。




 折り紙は、時に命を折る。


 父の言葉が、少しわかった気がした。

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