第4話 誕生日プレゼントは……

 まだ結婚する前のこと。

 私は誕生日に、旦那とUSJを訪れた。


 二人とも20代後半。

 そこそこ年を重ねている私は、誕生日シールなどは特に貼らず、シンプルにアトラクションを楽しんでいた。


 そして、ハリーポッターエリアで事件は起こる……。

 舞台は「オリバンダーの店」。

 ご存じの方も多いだろうが、ここは店に入った人の中からひとりが選ばれ、映画のように杖の番人が杖を選んでくれるお店。


 ……そう、なぜか私はそのひとりに選ばれたのだ。

 もともと人前に立つのが得意ではない私。

 隣には目をキラキラさせた子どもたちもいた。


 なぜ、なぜ私……?

 ぜひとも代わってあげたい……。


 断ることなど許される空気ではなかったので、おずおずと前に出る私。

 30近い女がみんなの前で杖を振って、魔法の呪文を唱えるという地獄のような時間……。

 これ、あくまで私だったのがよくないだけで、普通の人ならウキウキワクワクで楽しめるだろう……。

 そう、これはあくまで私の問題……。


 そして、杖を選んでもらった私。

 ここでは選んでもらった杖を記念に買うことができる。


「これはあなたと出会うのを待っていた杖です」

 そう言われ杖を差し出された私。


「どうする? 誕生日だしほしいなら買ってあげるよ」

 と旦那。


 USJに来るまでのお金はすべて旦那が出している。

 すでにいろいろもらいすぎていて、さらにプレゼントまでは……。

 と、思いつつテーマパークの魔力で、記念にほしいような気もしてくる私。


 誕生日プレゼントに……魔法の杖……。


 ちょっと一回冷静になろう……。


 私は妄想した……。


友人「ねぇねぇ、誕生日プレゼント何もらったの?」

私 「え~、聞きたい? 実はねぇ、杖を買ってもらったの!」

友人「……え?」

私 「あ、ただの杖じゃないよ! 魔法の杖!」

友人「は……?」

私 「ふふふ、しかもねぇ、私と出会うのを待っていた埃のついた魔法の杖だよ! いいでしょ~」

友人「…………。あ、ああ……。まぁ、ほしかったなら……よかったね。だ、大事にしなよ……」


 ……よし、やめよう。

 私は心を決め、杖を買うのはやめた。



 あれから数年が経った。

 う~ん、やっぱり買ってもらった方がよかったかな……?


 いまだに悩んでいる私なのでした(笑)。

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