第59話 三角関係
星矢は自分はずるいとかんがえはじめた。
2人を天秤にかけている。
この時は翔太。
この時は颯人。
都合の良いように考えている。
形式的に結婚とか婚姻届とか
なっていない。
ましてや、性別も同じだから
未だ法律的に手続きできない。
できる地区もあるようだが、
2人の住む場所はパートナー制度は
男女のみとなっている。
できるのならやりたいと翔太は
嘆いていたが、星矢にとっては
好都合だ。
未だ揺れ動く気持ちに納得できていない。
翔太を嫌いになったわけじゃない。
いつの間にか一緒に住むようになって
そばに感じられるようになって
マンネリ化し始めたのか
外の世界に行きたいのか
颯人から連絡が来るとどこか刺激を
求めてしまう。
まだ星矢は公表してない。
恋愛対象は男性だということを。
それでも一瞬でも会っただけで癒されている。
まるで、結婚に慣れてきた
3年目の浮気みたいな感覚だろうか。
一緒に住んでからまだ3ヶ月しか経っていない。
洗面台の鏡の前、いつものように
寝起きのまま、歯磨きをする。
今日の仕事は全体会議で資料を
まとめる役割を与えられていたはずと
現実を思い出す。
衣食住、何不自由なく暮らしてはずなのに
求める人はその時に寄って違うのかと
ため息をつく。
トントンとドアをノックした。
「星矢、ごめんな。
今日、俺、職場の人と
飲む約束してるから
夕食自由にしていいぞ。」
「ああ、そうなんですね。
わかりました。
楽しんできてください。」
「怒ってる?」
「え、いえ別にそんなことないですよ。
会社の付き合いありますよね。
せっかく転職して、
心機一転すっきりしたんですから
新しい人間関係築くのに
飲み会は必須でしょう
営業職はなおさらっすよ。」
「ま、まぁな。
寂しい思いさせちゃうけど…。」
翔太は星矢の後ろに周り、
肩をぎゅっとハグをした。
「ほら、朝は時間ないんですから
行きますよ。」
星矢は磨いていた口の中を水でゆすいだ。
「星矢、最近そっけなくない?
俺のこと構ってくれてないじゃん。」
「そんなことないですよ。
話し相手してるじゃないですか!
先輩、ごめんなさい。そろそろ時間だ。」
腕時計を指差して、
ソファの上にかけて
おいたジャケットを着る。
靴べらを使って靴を履くと逃げるように
玄関のドアを開けた。
「あー、もう。
いってらっしゃいも
言わせてくれないのかよ。」
星矢はため息をついて、歩きながら、
スマホを触る。ラインを開いて、
颯人の文字をタップした。
翔太が飲み会だとわかるとすぐに
颯人に連絡する癖がついた。
いつも行くのは居酒屋。
流れで颯人の家に行くこともある。
星矢も翔太のいない時間が1人になることに
不安を覚えた。
颯人と一緒にいることで心満たされていた。
どっちが好きか誰といるのがいいかなんて
考えていない。
その瞬間に一緒にいたい人と一緒にいる。
翔太と一緒に暮らし始めてから
そんな生活が続いていた。
宙ぶらりんの気持ちのまま
これでいいのかと
過ごしていると
颯人から衝撃的な発言があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます