第二十話 銃口
警官は拳銃を抜くと、木の上のライトの方向に銃口を向けた。そして撃鉄を引いた。マイルスは驚き慌てて止めてくれと叫んだ。彼は怖い顔をしてマイルスを睨んだ。ニューヨークの警官は怖い。公務執行妨害で逮捕もありうる。いきなり殴られるというのもある。
と、突然彼はにやりと笑った。そしてジョークだと言った。マイルスはほっとしたと同時に怒りがこみ上げてきて、あっちへ行けと叫んだ。下手をすれば、これでも因縁付けられてパクられる。しかし彼は優しい顔になって、気を付けるんだよと言って、立ち去った。良い奴なのか、変な奴なのかちっとも分からない。
更に夜は更けて行った。“Round Midnight” のメロディーが頭に流れた。もう警官さえも現れない。マイルスは何となく、さっきの警官にまた逢いたくなった。すると「おーい」と呼ぶ声が聞こえてくる。身構えたが、良く考えると日本語だ。同じアパートの住人が、事件を聞きつけてやってきたのだった。彼らは温かい珈琲と、上着を持ってきてくれた。
感謝して珈琲を飲みながらマイルスは考えた。黒猫はいつも朝早く起きて窓の所へ行ってお日様を待つ。彼女は朝まで決して行動しないと思った。みんなと一度アパートに帰って、朝早く出直そうと思った。朝なら公園も怖くない。マイルスはアパートに戻り風呂を浴びて、まだ真っ暗な内に公園に出かけた。
しかしマイルスの予想とは反対に、公園の朝は早かった。すでに夜が明けていた。そしてあの木の上に黒猫の姿はなかった。
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