21 いい加減な冒険譚 その21

 原宿ダンジョン……情報は一応調べて来た……ギルドハウスに提出されてる情報くらいだけどな。ええとなになに?……女性が苦手とする魔物が多いって。虫系が多いのかな……Gとか(そりゃ野郎でも苦手な奴が多いよな……)


※ツトムくんは苦手ではないが、不意打ちで顔に飛び付かれたりすれば……(誰でも腰抜かすわっ!)


━━━━━━━━━━━━━━━


──大の大人でも逃げ出すよな……スタンピードって……──


 中に入って気付くのは、新宿ダンジョンの洞窟型ではなく、森林のように視界が通らない密林型ということと……遠くから虫らしい音というか声というか……鈴虫のような軽やかな耳に良い音ならいいんだが……


ぎちぎちぎち……


ジーー・ジジ・ジーー


ぐちゅ……ぬちゅ……


 ……と、どう考えても気色悪そうな音というか声?……しか聞こえてこない。まぁ、まだ遠いので接敵まで時間は掛かるんだろうが……


「どーーも悪い手合いが多そうだ……2人とも気を付けて下さい」


 念の為にとインカムを耳に付けて貰っている。短距離専用だがジャマーが掛かっていても割と鮮明に声が届く特製品だ。


「いざって時は」


「助けてくれるのよね?」


「まぁ……画的には良くないんでしょうけどね? じゃあ、インカムを起動して下さい」


『はい!』


『これでいいかしら?』


『……感度良好です。では、行きましょう』


 既に魔導ドローンは2人の背後で浮いて録画を続けている。俺はその背後で全体を索敵している。自分の背後も目ではなく体表面で感じている状況だが、今はドローンの背後を写すカメラもある為に片眼鏡モノクル型のモニターで映像を半透明に映して視ることができる。


(単純にそのままを映しても意味は無いか……)


 と、サーモグラフモードに切り替える。これで体温のある魔物なら映り込む筈だ。録画用のカメラには影響は無い。あれは全モードのデータが録画されてるし、その内の感熱モードのみに制限した映像を受信してるだけなのだ。


◆◇◆


 暫くの間、密林の獣道らしき道を歩くだけの画となっていて、盛り上がりに欠ける内容になっていた。編集では最初の数秒だけ残して全カットかなぁ?……と思いながら背後と左右に注意を向けているが……


「出ないねぇ……」


「原宿ダンジョンって狩り尽くされてるのかな?」


 などと緊張感が抜けた様子でだべっている2人。外の人間が疎らとはいえ、中で活動してる冒険者・探索者が少ないとは限らない。だが、確かに様子がおかしい……例え魔物の数が減っているタイミングでダンジョン入りしたとしても、何十分も魔物が出て来ないなんて有り得ないからだ。大量に、一度の戦闘で全滅させたとすれば、空白の時間はある。だが……リポップで同じタイミングで……


(まさかっ!?)


 俺は有り得ないその仮定が……もし、本当にそうだとしたら……と、フル回転で考える。もし、それが本当だとしたら……


(不味いかも知れない……だとすれば、今行動を起こさなければ……)


 そして、インカムに静かに……だが確実に2人に伝える。


『いいか、2人とも……今すぐ撤退するんだ……恐らくだが『撤退理由って……あれ?』え?……』


 台詞に割り込まれ、恐る恐る、前を見ると……


「なっ……!?」


 そこには、人差し指で指し示された方を見たツトムの目には……


「すまん、撤退を!」


「「わかった!」」


 ……と、即座に180度ターンを決めて撤退の疾走を開始した……


 歩き進めていたその先には、多数の魔物が僅かな時間差でリポップを開始しており……誰かが大量に、僅かな時間で殲滅した名残りがあった……


━━━━━━━━━━━━━━━

※大規模殲滅魔法で吹き飛ば焼き尽くされた地形と、未だ消えずに残されていたドロップ品……そして、数体の冒険者・探索者らしい食い残された死体が在った……。その更に奥には……強大な圧を持った魔物が……(ツトムくんしか感付いてなかったけど)

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