トー横のミナミ

うしP

1 トー横の夜

新宿の夜はいつも賑やかだった。ネオンが煌めく街並み、人々の笑い声、そしてそこに溶け込むようにして、ミナミは友人たちと一緒にトー横を歩いていた。彼女たちの目的地はいつものカフェ。夜風が心地よく、春の訪れを感じさせる。


カフェに着くと彼女たちはいつものように窓際の席についた。外を見れば、街の灯りがキラキラと輝いている。そんな景色を眺めながらミナミはふと思う。この輝く街の一部になりたい、と。


「ミナミ、最近どう?」と友人のサクラが尋ねた。サクラはミナミと同じ大学に通う友人で、彼女もまた、パパ活をしている一人だ。


「うん、まあまあかな。新しいパパができたんだ」とミナミは答えた。その声には少しの疲れがにじんでいた。


「そうなんだ。どんな人?」サクラは興味深げに尋ねる。


「優しい人よ。でも、なんていうか、物足りないかも」とミナミは少し考え込むように言った。彼女の中には、何か満たされないものがあった。


「物足りないって、どういう意味?」とサクラが詰め寄る。


ミナミはため息をついた。「彼は、ただの優しいおじさんで、特別な何かが欠けているの。私たちがやっているパパ活、これで本当にいいのかなって、最近よく考えるの」


「それはね、難しい問題だよ」とサクラは真剣な表情で答えた。「でも、私たちにはこれが最善の選択なんだから、仕方ないわよ」


会話はしばらく続き、彼女たちはお互いの近況を共有した。パパ活に関する話題は尽きることがない。高級レストランのディナー、ブランド物のプレゼント、時には旅行の話題まで。しかし、その話の中にも、ミナミの心には満たされない感情が渦巻いていた。


カフェを出る頃にはもう深夜。街の喧騒は少し静まり冷たい夜風が彼女の頬を撫でた。ミナミは空を見上げた。星は見えない。街の光にかき消されてしまっている。彼女は自分もその星のようだと思った。どこかで輝いているはずなのに、この輝く街の中では、その光さえ見えない。


「またね」とサクラと別れ、ミナミは一人家路についた。歩きながら、彼女は考えていた。このままでいいのだろうかと。彼女の心の中には、まだ答えが見つかっていなかった。


ミナミは一人の夜の街を歩いていた。新宿のネオンは遠くに小さく見える。彼女の心は複雑な感情で満たされていた。パパ活で得たお金は彼女の手元にあり、それは確かに彼女の生活を豊かにしていた。しかし、それだけで心が満たされるわけではない。何かが足りない。何か大切なものを見失っているような気がしていた。


彼女はスマートフォンを取り出し、今日のパパとのメッセージを眺めた。優しい言葉、気遣いの言葉。でも、それらは彼女の心に響かなかった。ただの文字に過ぎない。彼女は深くため息をつき、スマートフォンの画面を消した。


家に着くとミナミは自分の部屋に入りベッドで横になった。天井を見つめながら彼女は自分のこれまでの人生を振り返る。大学を卒業してからの日々。目まぐるしく変わる日々。パパ活を始めた理由。最初はお金のためだけだった。でも今は何のために続けているのだろう。本当に欲しいものは何なのだろう。


彼女はサクラとの会話を思い出した。サクラは自分にとって大切な友人だ。でも彼女といるときもミナミは何かを演じているような気がしてならない。本当の自分を見せることができていない。自分は一体何者なのだろう。この生活は本当に自分の望むものなのだろうか。


そんなことを考えながらミナミは少しずつ眠りについた。夢の中でも彼女は答えを探し続けていた。


翌朝、ミナミは目覚めると、いつもより少しすっきりとした気分だった。昨夜の自分の考えを振り返りながら彼女は新しい決意を固める。今日はいつもと違う一日にしよう。自分が本当に好きなことをしよう。そして自分自身に正直になろう。


彼女は起き上がり窓を開けた。新しい一日が始まる。街はまだ静かだった。ミナミは深く息を吸い込み、自分の中の何かが変わり始めていることを感じた。これは新しい始まりだ。自分自身を見つめ直す旅の始まりだ。

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