番外編 《お姉様大好きリーセア来る!?》⑧
同時の声に、続けて口を開いたのはユイ先輩だ。
「え゛!? なんでぇ!? 一体どう言うことぉ!?」
そして頭を抱えるミヤさん。
「──意味がわからない……」
さらにミヤさんは、足に両肘をつき、顔を押さえている。
俺は現状を確認してもらうべく壊れた壁を指差す──、戦っている広場を。
「──あっちで……」
これに直ぐベッドから飛び降りると、駆け足で向かった。そして、目の前の繰り広げられている光景に唖然としている様だった。
「なんでリーセア素っ裸!? それにメシアちゃんのあの姿は何?」
「──あの子は本当に何やってんだい……! 皇女様と……! 目も当てられない……」
二人はリーセアの姿に──、メシアの見たことない姿に──、そして、その皇女と素っ裸で戦っているリーセアに呆れ果てていた。
メシアの
何せ、ユイ先輩は黒い壁の向こう側でエミラと対峙していたし、壁が壊れた頃には、龍人化の姿から人間の姿に戻っていた。布面積は少なかったが……。
ミヤさんはと言うと街中で戦っていた。
二人からすれば、驚くべき姿には違いないのだが、それを上回る様に、リーセアの素っ裸の方が印象強かったみたいだ。
メシアとリーセアは未だ、激しい応酬を繰り広げている。色んなことを口走り……。
あまりいい言葉では無い、俺にとって。
「アイルさんの……──後もう少しで入ってたってそんなに際どいとこまでいってたのですかーー!!」
「ふふふっ! ああ、後少しだったぞ! ひょっとしたら触れていたかもしれないぞーー!」
この会話はよく無い……。
ユイ先輩が横にいる状況では最悪だ。
(それに触れてもねーよ!! くそリーセア! ユイ先輩が誤解したらどうするんだよ!!)
──ガシッ!
へ? 『──ガシッ』てなに?
その時には俺の左肩には強烈な圧力が加わっていた。恐る恐る視線向ける。
確か左隣にはユイ先輩が居たような……。
「アイルくーん……。ちょっと詳しくお話聞かせてくれるかなぁあー?」
「──ひぃッ!? ゆ、ユイ先輩……!?」
確実に怒っている。俺を見る目が怖い……。
「ち、違うんです! アレは勝手にリーセアが俺の服を脱がせて下半身に跨って……!? ──ってい、いやその下半身は半分くらい脱がされましたけど……そ、その入ってなくてですね……」
まるで浮気がバレ、言い訳の言葉を連呼する男の様な絵面が思い浮かぶ。
確かに反応した。でも、それは不可抗力で……。
俺の考えていることを口にするようにリーセアがまたしても口走る。
「アイルの反応は早かったぞー? 私の殿部が体に触れた時には体勢は整いつつあったぞぉ〜?」
メシアは怒りさらに力を強めたな、──って今はそれどころじゃない!
ユイ先輩が怖い!
咄嗟にミヤさんを見るが──目から冷気を感じる。
「ゆ、ユイ先輩! 一旦落ち着きましょう! ね!」
「私は落ち着いてるわぁー……。落ち着いてアイルくんに話を聞いてるのー……」
今度は胸ぐらを掴み俺の顔を引っ張り近づける。
その距離はほんのわずか。ユイ先輩の息を感じる。
「ねぇ? アイルくん? 本当のことをいいなさい? 怒らないから……?」
もうすでに怒ってますよね!
これは口にはせずに説明の言葉を探るが、思いつかない!
(ど、どうすりゃいいんだよ……!? 一つ思い浮かんだけど、これは大丈夫なやつか? でも落ち着いてもらうには……よし!)
そう決めると俺は、直ぐ目の前に迫るユイ先輩の目を真っ直ぐ見つめる。俺の見つめる視線に少し手が緩む。
そして──ユイ先輩の唇を自分から奪いにいった。
「──んッ!」
ユイ先輩の短い声。
後方ではミヤさんの怒りの気配を感じるが──。
俺は口を離し、見つめたまま……。
「ユイ先輩、本当に大丈夫なので信じて下さい!」
「う、う〜……。分かった。信じる……」
落ち着きを取り戻した。
ユイ先輩からしてくることはあったが、俺から率先してしたことはなかった。正直照れる。
ユイ先輩が落ち着いたことで、後方のミヤさんがため息混じりに言ってくる。
「で、リーセアはどうすんだい? あの二人、なかなかいい勝負してるから簡単には決着つかないよ……」
「そうですね……。何かリーセアの頭の上がらない人に仲裁に入ってもらうしか……」
「う〜ん……。そうよねぇ〜、メシアちゃんのお母さんのミリーザ様を呼んでくるしかないのかなぁ〜」
ユイ先輩は先ほどとは違い俺の腕をしっかり抱きかかえている。触れる胸の弾力は相当なものだと思う。
不謹慎だろうと事実は事実!
そんなことを考えているとは思わないだろうミヤさんは、隣で頭を掻きながら言ってきた。
「私がミリーザ様を呼んでくるよ……」
そう言い、部屋を出ようとした時、突風が辺りの土を巻き上げ、周辺の木々も大きく揺れた。
二人が戦っている上空に目を向けると、ホワイトドラゴンがその手に何かを抱えホバリングしていた。
両手が抱えるそれは、例えるなら、ラグビーボールに数十枚の窓がついた様な物である。材質はよく分からないが、金属のような物だと思う。
戦っていた二人は手を止め上空を見上げている。
しかし、それを見た二人の表情は相反したものだ。
メシアは口元を緩ませ、リーセアは顔色がどんどん悪くなっている。
そして──、声が響いた。
「何をやっているのですかぁぁぁあああ!! リーセアーーーー!!」
これに明らかに表情が強張るリーセア。
「やっと到着なされましたか……」
「め、メシア皇女!? ま、まさか呼んだのか!?」
動揺を隠しきれないリーセアに、勝ち誇った顔をしたメシア。
「ええ……呼んで差し上げましたよ。リーセアさん──いえ、リーセア・
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