番外編 《お姉様大好きリーセア来る!?》⑥

 意識が落ちた瞬間!


 ──ドガッ!!!


 俺の腹部に激痛が走り、すぐに意識が覚醒した。

 背中は壁に打ち付けられていた。


 ベッドの向かい、ソファーの後ろまで飛ばされたらしい俺は、片膝を突きつつ顔を上げる。


「──つぅッ……! や、やっぱりリーセアさん! アンタだったのか!!」


 俺の視線の先には、ユイ先輩のベッドの上に仁王立ちした、藤色の髪の少女が立っている。

 ──しかも素っ裸!!


「せっかく寝てたから放っておこうと思ったけど、ユイお姉さまのベッドにお前がいることに腹が立ち我慢を超えて蹴ってしまった! ゆっくりユイお姉さまを堪能しようと思っていたのに!! 邪魔をしてくれたな少年!! お前のせいだ!」


 無茶苦茶なことを言っている。

 何なんだよリーセアさん……ってもう〈さん〉はいらねーな!


「あんた無茶苦茶だ! リーセア!! それに恥ずかしくないのかよ!!」


 リーセアは俺を見下す様に言ってくる。


「私が恥ずかしいだと? バカも休み休み言え! 私は正々堂々とユイお姉さまの体を堪能しようと思っている!! 恥ずかしいことなどあるものか!!」


 ──どこが正々堂々とだ……! 全くもって違う!

 睡眠薬を盛って眠らせた挙句、強制的にことを成そうとすることのどこが正々堂々だよ!!


 これは当然ダメに決まっている。

 だが、今、俺が言っていることは意味が違う!!


「リーセアあんた素っ裸で恥じらいとかねーのかって言ってんだよ!! このド変態がー!!」

「貴様! 言うに事欠いて私をド変態だと!」

「間違ってねーだろーが!!」


 俺は頭に血が昇り顔を赤くしていた。

 これに気付いたリーセアは、唇に人差し指を当て言う。

「少年、貴様私の裸体に欲情しているのだな?」


 全く違う! 断じて違う!!

 確かにスタイルは良い。


 ユイ先輩より少し低いくらいの身長。

 大体160センチ未満だと思える。

 しかし、出るところは出て、引っ込むところはちゃんと引っ込んでいる。地球なら、モデルやアイドルといった感じだろう。


 だけど──! 


 このド変態にそんな感情は微塵も感じない!!

 男がどんな状況でも欲情するなどはない……!

 たぶん……。

 ただ俺に関しては目の前のリーセアに対しては思わない!

 それに──、


「あんたさっきから俺のこと少年少年と言ってるが、16歳の俺とあんたはあまり変わらないと思うけどな!!」

「私は17だ! 私の方が年上ではないかー!!」


 そう叫んだ瞬間、リーセアは俺の目の前まで接近していた!

「──なっ!?」

「やっぱり鈍いな……。しょ・う・ね・んっ──!」


 すでにこの時には、横に蹴り飛ばされ、窓際の壁に背中を強打していた。侵入者を防ぐだけのことはあり、この部屋の強度は異常だ。


(──くそっ! やっぱとんでもねー……)


 そう思ったのも束の間──。


 再び目の前に現れると、胸ぐらを掴み反対側の床に叩きつけられていた──!


「──ぐっ! がぁあッ!!」


 ──またしても背中に激痛が走る。


 そしてリーセアはそのまま、仰向けの俺の上に腰を下ろしている。

 柔らかな殿部の感触が下半身に伝わってくる。

 俺は反応しないという強い意志を持つ。


「あんた何のつもりだよ!」


 俺の言うセリフにリーセアは思いっきり悪魔の様な笑みを浮かべる。 

 そしてゆっくりと口を開いた。


「もしあなたが、ここで私とただならぬ事をしたら、ユイお姉さまはどう思うかしら……ふふふ……」


 ──とんでもないことを口にしている。この女。


 つまり、俺が想像していることが正しいのなら、男女のそういう行為という事になる。


 俺は必死にリーセアをどかそうとするが、ホールドされている。


「あんた! お姉さんが大好きなんだろ! なら、俺みたいな奴とそんな事をできるのかよ!!」


 これに鼻を鳴らすと返してきた。


「何を言ってるの? おまえ。私はお姉さまを愛しているわ。お姉さまのためなら私の貞操はあなたにくれてやる! それから先はお姉さまと愛し合うの♡ 私は初めてなんて興味ないわ! その先の方が長いのだからね♡」


 リーセア……これは完全に大丈夫じゃないやつだ。

 壊れてやがるこの女……。


「さぁ〜て……。始めようかしらぁ〜……」


 そう言うと、俺のジャージを脱がし始めている。

 そしてリーセアがふと口にする。


「あ〜ら……。反応しちゃったぁ?」

「す、するわけねーだろ!!」

「動揺、すごいわよ? ……ほらぁ、こんなに心臓の鼓動が速くなってるわよぉ?」


 リーセアは俺の胸に手を当て、鼓動を感じ取っていた。間違いなく鼓動は速くなっているが、これは反応してるからではない。たぶん!


 この状況をどうにかしたいという感情からだ──。

 ──そうだと断言したい!!

 と、思うのだが──。


 リーセアは自分が腰を下ろす俺の下半身に視線を落とす。そして、微かに笑みを見せる。


「どうやら反応してるみたいねぇ〜ふふふ」


 もうその笑みは悪魔にしか見えない。

 そしてそのまま続ける。


「感謝しなさぁい。これから気持ちいいことしてあげるんだからぁあ」


(くそ! このままじゃあ、行くところまで強制的に行ってイッテしまう──くっ!)


 俺は未だに眠り続けるユイ先輩達に視線を向ける。

 この状況を当然、分かるはずもないユイ先輩達は、穏やかな顔で寝息を立てている。


 リーセアはとうとう俺の上半身を脱がせやがった。

 今度はホールドしている下半身を脱がせ始める。


(ホールドしながら脱がすなんて器用過ぎんだろ!?)


 ズボンも半分以上脱がされている。

 これによりリーセアの殿部の感覚は直に伝わってくる。そして、そのままパンツ手を伸ばしやがった!

  

 ベッドでは緩やかに寝息を立てるユイ先輩……。


 その正面の床に転がされ、挙句、服を脱がされている。そして下半身に、全裸のリーセアド変態が跨っている。

 なぜか罪悪感がハンパない……。


 ──もう、ダメなのか……。

 そう諦めかけた時──。

 

 ──部屋の入口の方。

 勢いよく開けられる扉の音が聞こえる。

 これに動きを止めたリーセア。俺もなんとか首を動かし入口に目を向ける。

 

 そこには──、沸々と怒りのオーラを纏っているメシアが立っていた。



「会食の時間が近づいても姿を現さない……なんかおかしいと思ったら! 何をやっているんですかーーーー!! リーセアさん!!!!!!」


 メシアが怒り狂っていた。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る