不死鳥狩りは悪人共にお任せを!
おにいちゃんです
Prologue
……今から、数十年前。
今や世界のほとんどの国が所属している国際連合。その組織が、全世界に対してある布告をした。
色々と長ったらしい声明文は出していたのだが……まあ、正直なところ誰も覚えちゃいないだろう。
重要なのは、その中身。端的に言い表すのであれば、こういう内容だ。
『超能力者は実在する』というもの。
まあそれ以前にも、存在自体はまことしやかに囁かれていたらしい。それが表に出されただけのこと……だったら、みんな苦労しなかったんだろうけどなぁ。
国連は、能力全般に対してこういう名をつけた。
その名は
何の捻りもありゃしないくせにこの世界を端的に表現した、クソみたいな言葉をつけやがったんだ。
だから、俺はTなんて呼ばない。能力と、そう呼ぶ。
そして、超能力が公的に定義づけられた事で面倒も起こった。
まあ、我々市民にとって一番実感しやすい事は“治安の悪化”だ。
能力を持つ物と持たざる物の格差が広がっていき、さらには持つ物の中でも性能的
まあ、それを助長したのは紛れもなく公的機関だがな。
才能という個性を一つの区切りに入れ、その中で区別していれば当然ながら差別は広がる。
しかもさらに酷い事に、国や私的機関が“能力のための専門学校”なんて物を生み出しやがった。
そうすると、人は当然夢を見る。
己の身に余る力を得た人間は、得てしてそうなるものだ。
無論、自分がそうでないと宣うつもりもない。そして、悪どい大人はそんなビジネスチャンスを見逃さない。その結果が、これだ。
さらにはそんな能力者に対抗するため、人は技術での対抗を始めた。
能力を増幅させたり、一時的とはいえ消しちまうなんて事もやってのけた。そういう技術さえあれば、自衛には十分だったのだが……
あろう事がそいつらは増長して、“能力者を殲滅しよう”だなんて言い出す。
結果的に治安がヤバいくらいに悪化し、日本には公に出ないような武器の類が溢れかえった。
「うぅ……! わん! わんわん!」
そんな最悪の世界で、更にはよく分からない事が起こる。
……三年前のことだ。
自分たちをクローンと名乗る謎の集団が、アメリカの保有する島を占拠して全世界に戦線を布告した。
しかもその組織、どうやら日本政府が一枚噛んでいた物らしい。
そしてその結果、兵器として扱っていたクローンの一部が反撃をしてきたという話はインターネットじゃ有名だ。
本当か嘘かはわからないが、その兵器型が輸出されて国外で数々のテロ行為や紛争に加担しているという噂もある。
まあ結果として、米国政府は武力によって鎮圧を行ったが……日本国政府が、諜報部隊を送り込んでいたとも聞く。
もし本物であれば、憲法九条にバチバチに抵触するような奴等。まあ、絶対に存在してはいけないような組織だ。
おお怖い、自分で思い返しただけでも狂った世界だ。
きっと掘り起こせば、その根はもっと深いと分かるだろう。
そんな最悪の世界だから、きっとこういう事もよくある話のはずだ。
「ワンッ! ワンワンワンッ!」
……四つん這いの少女が、犬と争っているという事も。
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