第3話 俺のポケットからモンスターがこんにちは
「ゆけっ、ザラマンデル!」
『キュイー!』
あんまちゃんとやったことないんだよね、携帯魔物のゲーム。
あんなゲームやってたら性癖捻じ曲がりそうだもんよ。絶対人外フェチの変態になるだろ、有害図書とか言ってエロ本回収してる自治体はあのゲーム回収した方がいいと思うわ。
そんな事を思いつつ、ザラマンデルを前に出す。
現れたのは狼四匹。
どうやら、カレーという嗅ぎ慣れない匂いを感じて、偵察しにきた個体のようだ。
まあ何であれ、先手必勝なんだよな。
「ザラマンデル!かえんほうしゃ!」
だいもんじはまだ使えないだろうかなーって。
『キュイ〜!』
炎でできたサンショウウオの、火精霊ザラマンデルは、小さな口から火炎を放射した。
うおっ、すげえ威力。
瞬く間に三体の狼が火だるまになった。
「キャイン!キャイン!」
生き残った狼は、泣き喚きながら逃げていった……。
ふむ、こんなもんか。
……お?
これ多分、レベルが上がったな。
身体に力が滾り、その上で、俺のこのMPの最大値が数%伸びた感じがするもん。
なるほどね、分かってきたぞ。
俺自身のレベルを上げると、俺自身の身体能力や最大MPが伸びる。
『召喚』のスキルレベルを上げると、呼び出せるもののレパートリーが増えて、恐らくは呼び出す時のコストが減る……。
どっちも上げていけって事なんだろうな。
やってやろうじゃねーの。
晩、ザラマンデルに小屋の見張りを頼んで寝る……と思ったが、昼に殺した狼の報復とかあったら怖いので、俺は小屋の屋根の上で寝た。
ここなら、狼も襲ってこれないはずだ。
……まあ、結局何にもこなかったんですがね?
次の日の朝。
コンビニおにぎりを召喚して食べる。
ツナマヨ……、ツナマヨだ。
握り飯はシャケだと吸血鬼が出てきそうだからな。
そして、一旦ザラマンデルを帰して、別のを召喚することとした。
「来い、『シルヴェストル』!」
『お呼びかなっ?』
シルヴェストル……、蝶の羽が生えた、リスのようなクリクリお目目の、人型の風精霊だ。
残念ながら、大きさといいビジュアルといい、性的なアレを催すようなものではない。
ってか、声的に男の子っぽい?
シルヴァ(森)のニンフ(女妖精)だから女じゃねーの?
まあええわ。
「やあやあ、こんにちは。見た目結構可愛い感じだけど、声的に多分男の子だよな?ってことは欲情しちゃならんな、ホモになってしまう。まあその辺はあんまり気にしてないけど、少なくともロリショタではあるんでヤバいですわね。ああすまん、で、お前って何ができる?」
『風にまつわる事なら大体は』
「ほう、そりゃ良いね。扇風機を買う手間が省けたよ。その風にまつわる事ってのは、モンスター倒したりできるやつなのか?」
『できるよ!』
「素晴らしい。使える子は好きだぞ、好感を持てる。んじゃ、この林に入って、勝てそうなモンスターを殺してきてくれ」
『レベル上げかい?それなら、マスターの近くで殺さないと、《魂(エクスペリメント)》が手に入らないよ?』
聞けば、倒したモンスターのある程度近くにいないと、経験値は得られないらしい。
「なるほどね、教えてくれてありがとう助かったよ。それじゃあ……、うん。この小屋の近くに俺はいるから、そこまで追い立ててから殺すようにしてくれ。但し安全第一でな、引きつけ過ぎて俺が怪我したとかそういうことにならないように、安全を優先してやってくれ。頼んだぞ」
『分かったよ!びゅーん!』
うおっ、速いな。
飛んでった……。
その間、俺は、住環境を良くするために小屋のリフォームをした。
そんな大層なことはしてないけどな。
単に、土の床に召喚した木材を敷いて、扉を窓付きのものに入れ替えただけだ。
それとちゃぶ台くらいは出したかな?そんなもん。
だがそれも一日仕事。かなり時間がかかった。
途中に五、六回程度シルヴェストルがモンスター(ゴブリンとかそういう感じの?)を追い立ててきて俺の目の前で細切れにするなどありつつ、この日も終了だ。
レベルは三回くらい上がったし、上々の結果だろう。
だがしかし、スキルレベルは未だ1のまんまだな。精進せねば。
しばらくはこんな風に暮らすか……。
……そんなこんなで二週間が過ぎた。
シルヴェストルにモンスター狩りをやらせ、常にザラマンデルを召喚してスキルレベルを上げつつ、召喚したこの世界の本を読んで勉強。
知識は力だからな。
最低限、この世界の神話や口伝に目を通し、国の位置関係を把握して、偽のバックストーリーも考えておいた。
こんなところだろう。
スキルレベルも2に上がり、俺本体のレベルは15になった。
人のレベルは、大体15もあれば平均的な冒険者なのだそう。
普通の人はレベルをそんなに上げないんだとか?大体、レベル1のまま生まれ育ち、四十歳くらいで死ぬんだそうだ。中世だねえ。
しかし、金持ちや貴族はレベル上げをしまくって身体能力を上げ、不老長寿を実現しているそうだな。
で、金持ちや貴族は、そうやってレベルも上げてるから物理的に強いケースも多い訳か。
貴族のボンボンだから弱いだろうと思って、調子に乗って喧嘩売ったりすると、拙いってことか。
大体は理解した。
シルヴェストルの話によると、もうこの林には手頃なモンスターが残っていないとのことなので、人里に向けて出発といこう。
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