ベルの闘う理由
倒れ込んだまま幸乃は答える。
その後、いつもの場所の川で体を洗い2人は話しはじめた。
幸乃が服を脱いだ後のベルの体を見る、華奢ながらも引き締まった体、小ぶりだが形が整っている胸、無駄な贅肉が付いていないしなやかな美脚、女性の幸乃でも思わずドキッとしてしまうほどだった。 その視線が気になりベルは幸乃に話しかけた。
「私に何かついていますか?」
幸乃は慌てて両手を振って何とか話題を見つけ答える。
「いや、何でもないよ、あの…… ベルちゃんのこともっと知りたいなって、何で冒険しているのとかさ、ほら、やっぱり仲間なんだし知りたいじゃん」
幸乃のその質問にベルは少しの間考えこむ、そして目をそらしながらゆっくりと話し始める。
「親友を取り返すために?」
「はい」
いつもの無表情のままベルは言葉を返す。
「冥王と呼ばれるものが私の故郷、フィテアトルに舞いおりました、その冥王は彼女を操りこの地方のどこかにいるのがわかったので、それを追っているところです」
ベルは寡黙な表情で淡々と話す、何でも冥王と呼ばれる者とその勢力がこの世界に現れていて、彼らに奪われた親友を助けるために活動をしていて、その中で奈美を知っている勢力に幸乃と行動すれば失った親友に近づけると誘われこうなったらしい。
そして2人は川で体を洗い、いつもの教会に礼拝堂のベンチに戻り就寝した。
さらに幸乃がシェルリについて話し始めた。
そしてしばらく話すと2人とも眠りについた。
※
翌日。
北部、ラーニラの森。
ギルドから目的地へ歩く、20分ほど歩くと郊外の閑静な住宅街、10分ほどでそこを抜けると足首の高さぐらいの草が生い茂る草原地帯に入る、その中央の土でできた馬車が4列に並んで通れるくらいの広い道を進む、周りには所々策があり、その中には羊や山羊、牛の群れがあった。
(あれは家畜よね……)
幸乃は口元に右手の人差し指を当てながらそう予想する。
さらに50分ほど進むと分かれ道に出くわす。
一つは北の都市ロヴシュキに向かう直線の広い道、もう1つはこの道から分かれるように分岐している。
それはラーニラの森を経由して北東の都市、イトゥルップに向かう細い道だった。
「確か右ね」
幸乃はギルドでの案内を思い出し細い道に入っていく。
20分ほど進むとベイマツやオウシュウトウヒのような30メートルくらいの背が高く、細長い葉、直線的な幹が特徴の針葉樹の森に2人は入っていく。
敵がいるのはここという情報から無意識のうちにゆっくりと、物音をたてないような歩き方になる。
「近くに何かいますね」
ベルが静かに囁く、幸乃がそれを聞いて耳を澄ますと背後から物音が聞こえ出す。
2人ともすぐに後ろを見る。
グォォォォォォォ
「うわっ、あれが白いトラ……」
そこには2メートルもあろう巨大な体、白と黒の縞模様、そして鋭い牙を持つトラがこっちをにらみつけていた。
「行きます、
ベルがそう話しかけると2人は兵器を出し始める。
(来たれ、我が魂の剣ティファレット)
「来て! 私のせいなる力の化身!マリン=アルテミス」
──そして
「マリン・バスター!! 」
幸乃はトラに向かって鉄砲水を繰り出す。
グァァァァァァァ
トラはそれに対して前足を出して結界を張る、それで幸乃の攻撃を完全に防ぐ。
「防がれた!!ってかあのトラ魔法使えるの?」
「いや、自然の動物が魔法を使えるのはあり得ません、誰かが意図的に与えたんでしょう」
ベルがそう説明している間にトラは2人の間合いを詰めてくる。
グァァァァァァァァァァ
「やべっ!!」
スッ
幸乃が叫ぶ瞬間、ベルもトラに対し間合いを詰める。
接近した瞬間。
切望なる力・我が魂の剣に宿り切り裂け
アドベント・スレイシング
そう叫ぶと彼女の剣が黄色に光り始る。
ベルがトラの攻撃を掻い潜り攻撃をヒットさせる。
ズバァァァァァァ
その衝撃でトラは空中に舞い上がる。
幸乃は何をすればいいかわからず唖然としていた。
「今です、幸乃さん、無防備のトラに攻撃を!!」
(あ、そうだ!)
「マリン・バスター!!」
幸乃が慌てて術式を繰り出す。
ドォォォン!
幸乃の放った鉄砲水はトラにヒット、トラの体が5メートルほど吹き飛び、地面に落下、3メートルほど地面を転がる。
ボロボロになり、満身創痍となったトラ。
グゥゥゥゥ
何とか立ち上がろうとする、その時……
「マリン・バスター!!」
幸乃がとどめの一撃を与える。
グハッ
その攻撃がトラに直撃、2メートルほどトラの体は吹き飛び倒れる、同時にトラにまとわりついていたオーラが消えていった。
「これ、勝ったってこと?」
「はい、依頼は達成しました、後はその証としてトラの牙を持ちかえるだけです」
そう言うとベルは自身の剣でトラの木々は時の牙を切断、手に持った。
「では、ギルドに戻りましょう、ハァ……」
ベルが少し疲れを見せながら幸乃に話しかける。
幸乃はここに来るまでの道のりを思い出す。
(──そうだ)
そして作り笑いをしながら問いかける。
「ベルちゃん、この疲れた中街まで歩くのって面倒だと思わない?」
「確かに、こう疲れた時に歩いて帰るのは少し酷ですね、少し休憩しますか?」
「いや、そう言いたいんじゃなくって考えがあるの、だからさっきの直線の広い道まで歩こう?」
時間は昼を過ぎたころ。
そして先ほどの道に出る、幸乃が辺りを見回すと……
「あった!」
幸乃が北の方の道からこっちへ向かってくる馬車を見つける。
後ろには荷台があり、5人くらいが入れそうな広さで幌をかぶっていた整備されていながらもどこか古そうなこの世界では一般的そうな馬車だった。
荷台には荷物が所狭しと積まれており、それがこの馬車は荷物の運送の馬車であることが予想できた。
5分ほどでその馬車は2人の目の前にたどり着く。
「どうする気ですか?」
無表情の彼女の問いに幸乃は馬車に向かって歩きながら答える。
「ヒッチハイクよヒッチハイク!!」
5分ほどでその馬車は2人の目の前にたどり着く。
そして馬車の人に話しかける。
中にいるのは肩までの白いひげを生やし紺色の服の初老くらいの男性だった。
「お願いがあるんですけども……」
その彼に幸乃は交渉する。
「この値段でどう?」
「うーん、しかし……これなら?」
「じゃあ、これで!」
「これでは駄目かの?
「うーん、まぁこれなら……」
5分ほどで交渉は終わる。
スッ
それを察したのかベルは幸乃の隣に歩を進めた。
「ベルちゃん成功したよ、タダとはならなかったけど114 Eauで街に行けるわ」
嬉しそうに飛び跳ねながら幸乃は話しかける。
そして2人は馬車の後ろの荷台の部分に乗る。
馬車に揺られながら100分ほどするとストレンセの中心部に到達、そこで2人は降ろしてもらった。
「ありがとうございます!!」
ペコッ
幸乃は元気な声で、ベルは何も言わず頭を下げる。
そして馬車は去っていく。
馬車が去り際、幸乃が営業スマイルで手を振るう。
そして馬車が完全に彼女の視界から消えると幸乃は手を振るのをやめる。
「じゃ、ギルドに戻ろっか」
「はい」
そして15分歩くとギルドに到着し、2人は報告に入った。
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