宿泊場所はあの施設

 1450Eauオウル……




 幸乃はさっきの市場での茶葉の値段を思い出す。


(とりあえず私たちの世界での1円が1Eauオウルってことになりそうね……)












 ※










 幸乃は再び繁華街に立っていた。


 さっきとは変わらず大勢の人たちが所狭しとごった返していた。




「あ、そうだ、あれ買わなきゃいけなかったんだ」


 奈美から言われた物を回に探し始める、10分ほどすると……




「あ、そうそうこれこれ!!」


 指定した物を手に取る。




「へぇ~これは使えそう」


 Falke魔式litterae手紙と呼ばれる手紙を買う。




 街並みを見ながら幸乃は感じる。




「やっぱり、人間じゃないような人種もいるみたいね……」




 幸乃は周りを見渡してみる、奈美に聞いた亜人と呼ばれる人獣だと直感的に感じた。


 道端には狐の耳としっぽを持った人種茶髪の頭の上からひょいと出た耳とお尻のあたりから出ているしっぽが特徴的だった。


 しかしそう言った人たちは人間達に比べるとどこか服が汚れていたり破れていたりとどこか貧しそうだった。




(ああいう人たちってこの世界では貧しいのかな……)




 そう考えながら街を歩く。




 さらにホテルに行ってみる、茶葉の値段からもらったお金は大した金額ではないと考えた幸乃は安そうな小汚いホテルへ行ってみた。




「うちは一泊4500 Eauだよ」




 ホテルの店主のその言葉に……




「OKOK~わかりました、ありがとうございます」




 と言ってこの場を立ち去る。






 さらにホテルの値段を聞いて今の資金ではホテル宿泊は不可能だと判断した幸乃は別の方法を考える、そして街のマップを見る、そしてたどり着いた結論は……




「教会?」




 街のはずれに教会がある事を地図で見る幸乃。


 彼女はアメリカで留学した経験があり、教会ならそう言った救済をしてもらえるかもしれないと考え教会に何でもいいから寝泊まりできるところが無いか尋ねる事にした。


 また、その地図からもできるだけ情報を吸収しようと。


 ギルド、教会、官庁などの場所を覚えた。










 ※










 幸乃は30分ほど歩いて教会にたどり着く。




 教会は人々が大勢いる雑多な街並みを外れた郊外にあった。


 隣には湖があり、純白の壁に神秘的な模様が教会の外壁に描かれており、それが祭っている神様の神秘を表していた。






 幸乃は今教会が行事をしていないことを確認するとシェルリにアイコンタクトを取りカメラを回し始める。そして教会の中に入り、主人らしき人物に出会う、そして主人はこの教会の祭司のゲントナーだと名乗り、幸乃は少しの間教会の中で寝泊まり出来ないか聞いてみる。




 その祭司は口の周りには茶色のヒゲを生やしていて小太りだが身だしなみは整っていて上着と下が一つになっていてワンピース形式のゆったりとしたコートの服装、いわゆるローブの服装をしていた。




「そういう事情ですか、朝の礼拝の時間までは礼拝堂は使わないのでその時間までそこのベンチの部分ならいいですよ」




 その言葉にガッツポーズをして喜びのポーズをとりお礼を言う。


「本当?ありがとうございます」




 そしてカメラの方向を向いて大喜びする。


 次に教会を使うのは明日の朝と聞き、今日は教会の礼拝をする場所のベンチで寝泊まりすることにした。




 そして幸乃はFalke魔式litterae手紙を取り出す。




(私、戸波幸乃は郊外の教会でしばらく寝泊まりします)




 そしてそんな内容を手紙に書きこむ。




 奈美に宿泊先が決まったらそのFalke魔式litterae手紙で宿泊先を冒険者ギルドに張り出すように指示されていた、その手紙の右上には鳥のマークと、「transmission(送信)」の文字があり、そこを3秒間押すと「missum est(送信しました)」との文字が記された。




 手紙を買った人から聞いた話では近くのギルドにその情報が送られ、掲示板に同じ内容が記載されるという。




(ま、明日か明後日の朝には来るでしょ)




 そう考えながら幸乃は休憩を取り始めた。




 ※














 夕方、教会のほとりの湖に立っていた、透き通った様なきれいな水に夕焼けが写っていてとてもきれいだった。 そして、体を洗おうとして道から見えないところを探し、ちょうどよい草むらの影を見つける。


「ま、たまにはこんな生活も悪くなさそうね……」




 それを見た彼女が微笑しながらそうつぶやいていると……




「あれ?」


 湖の中に何と目があった。




「にゅー」


 その目はそんな音を出しながら湖の水面から出てくる。




 水面から出てきたそれは水色で透明な色をしていて背丈は幸乃と同じくらいで太さは腕くらい、イトミミズのように長細い体をしていた。




「え?」


 あまりにも唐突な出来事に幸乃は唖然とする、すると……




「にょー」


 そんな音を発しながらその生物は幸乃にまとわりついてくる。




「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと何よ!!」


「ちょ、ちょっと!!スカートん中はいるな!!服の中?え?肌に直接まとわりついて!!」




 スライムはその幸乃の声を無視するように全身の肌にまとわりつき小指ほどの太さの触手を出してくきて、その触手のように肌に絡みつく、さらに下着を押しのけてその中にも堂々と入り込んでいた。




「にゅ~~」




「イヤ!!本当やめて!!ちょっと!!」




 幸乃は何とかしようと暴れてもがくがスライムは気にも留めずに動く、そしてシェルリが出てきてカメラを回し始める。




「ちょっと、あんた何でカメラ回してんのよ!!しかもねばねばしてるの出してるし!!」




 その叫びの通りその生物はねばねばしたような粘液を放出し始める。


 その粘液が幸乃の体にまとわりつく。




「……」


 それを何者かがじっと見ていた。






 幸乃は見た、黒髪の肩までかかった様なセミロング、身長は165cmである自分と同じくらいの少女がこっちに向かっているのを……




「そこのあなた、そうあなた、助けてください本当お願い!!本当お願い!!」




 それを見た幸乃は藁にもすがる思いで必死に叫び始め助けを請う。




(……)


 そして状況を見て何が起きているかを察するとその人物は。




 タッ


 幸乃に接近し始め──




 そしてその子は剣を右手に現出させる。




 ズバッズバッ




 その子はその剣で幸乃にまとわりついていた生き物たちを切りつける、当然幸乃の服も切りつける事になるが……




「え?服が切れない……」




 服には傷一つ付かずスライムだけに攻撃を与え、スライム達は悲鳴を上げながらこの場を去っていった。


「にゅ~~にゅ~~」




「はぁ……はぁ……」






「あなた、ありがとう……」


 謎の生物の絡みつきにもがいていたせいで息切れしながら何とかお礼の言葉を話しかける。






「あれはスライムの一種です、亜種や人間にまとわりつくのは彼なりのコミュニケーションです」




 黒髪の少女は表情を変えずに話し始める、その瞳は淡い水色で透き通った様なきれいさだった……


 服装は白と黒を基調としたドレスにロングスカート、体のラインは理想的に整っていてさっきから表情を変化させないおとなしそうな、幸乃と同年代くらいの女の子だった。




「そ、そう……」


 何とか息を整えながら幸乃は言葉を返す。




「あなた、名前聞いてなかったわね、私は戸波幸乃、あなたは?」




「私はカーレンベリグ・ルフライヤーです」

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