同居を頼まれる
「あなた、誰?」
俺に突きつけられた言葉は、どん底に落とされたことを示すメッセージだった。
「見ての通り、小瀬川 凛音さんは記憶をなくしてしまったんだ。それも生まれた時からの記憶の全てを。これはどうしようもない...」
と院長が頭を抱えて言った。
すると横で様子を見ていた健が、隠してきた事実を言い放つ。
「実は、小瀬川はレンタル彼女をやめたいって言っていたんですよ」
「え?」
それじゃあ彼女がレンタル彼女、そしてVtuberをやろうとしていた目的が全くわからない。レンタル彼女とは相当厳しい仕事であり、それでも続けていた凛音を見ると、何らかの信念があったとしか思えない。
ただ、Vtuberと両立出来ないと考えてやめただけかもしれない。
もう凛音の記憶が早く戻って色々聞きたいことだらけだ。
「彼女がVtuberを志望していた理由もあまり聞いたことがありません。自分の力で誰かを笑顔にしたいという感じで抽象的な話しか志望書に書かれていなかったので」
ますます彼女の謎は深まるばかりだ。
俺たちがそんな話をしていると、病室の廊下を小走りで走ってくる音が聞こえた。
その音はどんどんと近づいてくる。
「誰だ?」
院長がそう言い、扉を開くと、そこにいたのは...
「凛音、凛音は大丈夫ですか!?」
心配そうに立っていたのは、咲希・・・ではなく、小瀬川 凛音の父だった。
咲希にもいずれこの話を伝えないといけないが、それ以上に凛音の父が病院に駆けつけられた事自体に驚いている。
凛音の父は貿易関係の会社に勤めているため、そう簡単に帰国することは出来ない。きっと健の方から連絡を送ったのだろう。
3日で日本に帰国してきた。
そして急いでいた凛音のお父さんは俺の存在に気づき、
「西條 涼くん!!君も来てくれていたのか!で、凛音の様子は!?」
目線を向けた院長は横に首を振り、「記憶喪失しました」と告げると、膝から崩れ落ちてしまった。
「本当だったのか・・・。院長、これから自宅で過ごすことになると聞いたのですが、頼れる親戚もいないんですよ」
院長は、
「日々の行動自体には全く問題がないんですよ。ただ、誰か付き添いがいた方が良いのは間違いないんですよね」
すると凛音のお父さんは何かを閃いたかのような仕草をすると、俺の方を向いて言い放った。
「涼くん!凛音と同居してお世話をしてほしいんだけど、良いかな?」
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