嫉妬
凛音が急にキスをしてきて、俺は唖然としていた。
演技がここまで本格的で、俺もつい凛音を離したくないと思ってしまった。それくらい魅力のある女性なのだから、咲希には許してほしい。
この様子を見ていた咲希は遣る瀬無い様子で「もう、無理」とだけ言い残し、一曲も歌わないままカラオケを去ってしまった。
やばい、もう取り返しのつかない所まで来てしまった。
俺がそう考えるのも無理はない。
咲希の目の前で凛音とキスをしてしまったからには「レンタル彼女でした〜!」と言い訳することなどできない。
そもそも凛音とキスをする予定なんて一切なかったし、不意打ちのキスに俺の理性も耐えられなかった。
どうしよう・・・。
「涼、驚いた?」
いたずらをした子供のような顔をして俺を覗き込んでくる。
「凛音、その...き、キスまでするって話してなかったよね?」
「まあ気分でしちゃった」
上目遣いで俺を見つめてくる凛音は蠱惑的で、咲希への罪悪感さえなければ、どんなことをするか分からない。
まあ、それもレンタル彼女である小瀬川 泉との関係だ。
一応、凛音と呼んでいるものの、今はお金を払って成り立っている関係であり、キスも...その一環だと思う。
ただのおじさんにもこうやって凛音がキスをしていると考えたら...。
レンタル彼女はどこまでの関係を許しているのかも、よく分からない。流石に体の関係は駄目だが、キスまではセーフなのか?
「取り敢えず、今日はもう帰りましょ」
と凛音に言われ、俺は部屋を出ようとするが、
「あっ、お金」
そうレンタル彼女として無理難題を解決してくれたのだから、当然お金は払わないといけない。事前に準備してきたお金の入った封筒をカバンから出す。
そして凛音に渡そうとすると、
「お金は大丈夫。咲希と早く仲直りするのよ」
とだけ言い残し、凛音が部屋から出て言ってしまった。
後を追うか迷ったが、凛音の言葉に甘え、俺は封筒をカバンにしまった。
咲希になんて伝えようかな。
凛音が実はレンタル彼女だったと伝えたら、一体どんな反応をされるんだろう。
なんでレンタル彼女をしているのか、そしてどうして俺にお金も貰わずにキスまでしてきたのか、俺自身にも多くの疑問を抱いているままだ。
隠し通そうとしても、いずれバレるだろう。きっと咲希はこの一件で俺自身については何も言ってこないだろうが、凛音とどういう関係なのか探られ、凛音に直接連絡を取られたらもう終わりだ。
俺が咲希に虚言を吐いたせいで、レンタル彼女を借りることになったという隠したい事実がすべてバレてしまう。そうなれば咲希との関係は良くなるとは到底思えない。
だから俺は、咲希に「嘘だった」と伝えることを心に決めた。
この時の俺はまだ知る余地もないだろう。
レンタル彼女として現れた幼馴染、小瀬川 凛音と逢えなくなることを。
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