迷宮のアンチノミー。〜 光と闇の絆 〜

猫野 尻尾

第1話:心に舞う一陣の風。

二話完結。


二律背反にりつ・はいはん


世の中には陽と陰が、表と裏があるように、お互いが相容れない矛盾した

存在でも相互的に深く結びつく愛もある。



彼女の名は「渋谷 真那しぶや まな」現在女子高一生生。

髪はストレートで長く黒髪。

性格は内向的、おとなしめ、と言うよりは極度の人見知り。

被害妄想的要素もあって自分でも自覚はしているがどうしても人の前では

萎縮してしまう。


決断力に乏しくてはっきり嫌だって言えなくて、うじうじしてるから、

そのせいで一部の女生徒からイジメにあったりしている。

揉め事や喧嘩は大嫌い・・・地震、雷大嫌い。


で真那の肝心のビジュアル・・・まあ言ちゃ〜クラスの他の女子には悪いが

真那のビジュアルはクラスでもダントツでトップクラス。

これで、堂々としていたら完璧だったんだろうけど・・・。


そして、そんな消極的な彼女にも、ひとりだけ気になる男子がいた。


彼の名は「一条 高雅いちじょう こうが


短髪で金髪。

しかも背は高いし、めちゃイケメン男子だし・・・だけど性格はまじツンデレ。


真那の中流階級と違って、彼の家は昔からの由緒ある大富豪・・・いわゆる

昔で言う華族の出。

まあ、今はお互いさほど生活感に差があるわけでなないが、やはり高雅とは

否定できない隔たりがあった。


高雅はいつも無愛想、ぶっきらぼう、人を寄せ付けないオーラを放っている。

人に媚びは売らないし、愛想もない・・・しかも喧嘩が強いときている。

天は二物を与えたイケメン・・・イケメンと言うよりは美しい。

それは高雅が人を寄せ付けない気品に溢れた持ち主だったからかもしれない。

真那は高雅が笑った顔を数度ほどしか見たことがなかった。


別に媚び売らなくてもいいから笑ってたら、もっと女子の友達もできるのに・・・。

あ、でもモテ過ぎると愛がヤキモチ妬きそうだった。


真那は密かに「一条 高雅いちじょう こうが」のことが好きだったが、

でもそんな彼に想いを寄せても、月とスッポン・・・釣り合うはずないと

思っていた。

だから真那にとって高雅のことは淡い恋心でしかなかった。


入学した頃は高雅のことは、まだいいな〜って程度のほのかな憧れ・・・。

それが毎日のように彼を見てるうちに真那はどんどん彼に惹かれていった、


恋しい気持ちを伝えたいって思うけど真那は消極的な性格だから「好きです」

なんて言葉は恥ずかしくてとても言えないわけで、だからもし告白して

「悪い、他当たっれくれ」って言われたら一生立ち直れない。


よく考えたら真那は高雅とまともに話したこともなかった。

朝、顔を合わせたら「おはよう」の挨拶と「さよなら」の挨拶くらいはする

けどその程度。

彼はぶっきらぼうに「おう」って答えるだけ。


でも彼に挨拶をする・・・真那はそれだけでも嬉しかった。


だからこのままなんの進展もなく気持ちを告白することもなく高雅とは

淡い思い出になって行くんだろうなって真那は思っていた。

お互い離れ離れになって二度と会えなくなるのかなって考えるとすごく切ない

気持ちになった。


だが高雅の真那に対する態度は他の女子に対する態度とは少し違っていた

ようだが真那はそのことに気づかずにいた、


そんな想いが届かない日々が続いて行く中・・・。

それが起こったのは放課後のことだった。


真那はまた同じ学校の女子数名にイジメにあっていた。


「へたれ女・・・役立たず〜」

「ほら、金出せよ・・・私らが有効に使ってやるからさ」


「ごめんなさい、お、お金なんか持ってません」


「なに、口答えしてんだよ、このポンコツが・・・」

「5秒やる・・・5秒以内に金出せ・・・おまえみたいな・・・」


その時だった・・・。


「おい、おまえら俺の彼女になにしてくれてんだ?」


「彼女?・・・」


「真那は俺の女だ」


「渋谷が?・・・一条の女?・・・まじで?」

「一条だろ?」


「おまえら俺の彼女をいじめてるだろ、まあ面倒くさくて黙認してた俺も

悪いけどな」

「だがよ、もう勘弁ならねえ、真那に指一本触れてみろ・・・明日学校に

来れなくなるぞ・・・」


「それって脅しかよ」


「手を引かねえと許さねえぞ、そう言ってんだよ」


「くっそ〜おまえら、いつの間にそんな関係になってたんだ?」


「鈍いおまえらが気づかない間にだよ」

「いいか?今後、真那をイジメたら俺が黙ってねえからな」


「くそ面白くもない・・・おい行くぞ」

「ったく・・・なんであいつの彼氏がよりによって一条なんだよ」


そう言って彼女たちは意外だって言うように捨て台詞を吐いて去っていった。


高雅の真那に対する態度は他の女子に対する態度とは少し違っていたと

書いたが、実は高雅は前から真那のことが好きだったのだ。

だが、高雅のほうから真那に付き合ってくれとは言うのは、女に媚びると言う

ことへのプライドが許さなかった。


このイジメを目撃したことで、真那と高雅は相容れない運命の道を歩んで

行くことになる。


そいて真那の心に高雅と言う一陣の風が舞った瞬間だった。


真那には自分の前に立つ凛とした高雅の自信に満ちた佇まいに近寄りがたい

違和感を感じた。


つづく。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る