第19話:助けたはずみでヒロインの胸を思いっきり触ってしまってた件……

 男子生徒が慌てながら駆け足気味に俺達の元から去っていった後。


「……あ、あなたねぇ……助けてくれた事には感謝するけど、でも同じ学校の生徒に対してメンチ切ってるんじゃないわよ……!」


 男子生徒が居なくなるのを見届けた幸村はすぐさま俺の方に振り返ってきて俺の事を注意してきた。


「ん? あぁ、まぁでも手は出してないんだから別にいいだろ。それにさっきのアイツだって普通に悪い事をしてたんだから注意はすべきだったろ? 幸村だって俺が悪い事をしてたら叱りつけてくるだろ?」

「え……? ま、まぁ、それは……そうかもだけど」

「な? それなら別に良いじゃねぇか。それに品行方正な幸村に注意されるよりも、俺みたいなヤベェヤツに注意された方が身に染みるってもんだろ? って事でアイツはもう二度と廊下とか階段で走ったりする事はないだろうな、はは」


 あの男子生徒は廊下や階段付近で走るのは危ないって事を身をもって体験したわけだし、これからは二度と学校内で走ったりする事はないだろうな。だってまた学校内を走ろうとしたら、きっとその瞬間に俺の顔が脳裏に蘇るだろうしさ。


「ま、まぁ、そうかもしれないけど……いやでも、何が校則をちゃんと守れよ。アナタ自身が一番校則を守ってないじゃないのよ」

「うーん、それはちょっと耳が痛い話だな。まぁでも俺はこれから真面目な高校生になるって言っただろ? だからまぁ……時間はかかるかもしんないけどさ、それでもちゃんと少しずつは校則も守っていくようにするさ」

「……本当かしらね」


 という事で今日も俺は真面目な人間を目指しているアピールを幸村にしていったんだけど、でも幸村にはまだまだ信じて貰えてないようだ。


 まぁいつか幸村に信じて貰えるようにするためにも、これからは言動をしっかりと改めていくしかないよなぁ……。


「……って、あぁそうだ、そういえば幸村は身体は本当に大丈夫なのか? 後からどっか痛くなったりしてないか?」

「え? え、えぇ……私は大丈夫よ。というかアナタこそ怪我とかしてないの? 私を庇って何処か怪我とかしてないの……?」


 怒り顔だった幸村は一転してほんの少し不安そうな表情を浮かべてきていた。


 もしかしたら自分のせいで怪我をさせてしまっていたらどうしようと不安がっているのかもしれないな。


 という事で俺は幸村に心配させないように笑いながらこう言ってあげた。


「はは、俺をそこら辺のやわな男と一緒にすんなよな。幸村を受け止めたくらいで怪我なんかしねぇよ」

「そ、そう……それなら良かった……本当に良かったわ……」


 俺が笑いながらそう言うと幸村はホッと安堵した表情を俺に見せてきてくれた。俺としてもメインヒロインの悲しそうな表情なんて見たくなかったので、幸村が安堵した表情を俺に見せてくれて一安心していった。しかしその時……。


(……ん?)


 しかしその時、俺は誰かに睨まれている事にすぐに気が付いた。なので俺はその睨まれている方向にチラっと目をやってみると……そこには主人公の坂上弘樹が立っていた。あぁ、まぁそりゃあ好きな女の子が不良に絡まれてたら嫌な気分になるわな。


(はいはい、わかってるよ)


 まぁ主人公の気持ちは俺にもめっちゃわかるよ。だって俺もヒロインの幸村がクズマに調教され続けてついに堕ちてしまったシーンでは脳が完全に破壊されたしな。だからクズマに取られる前にさっさと告白しろよな。そんで早くリア充になってさっさと爆発してくれよ。


「……ま、お互いに怪我がなくてよかったな。あ、それじゃあ俺はトイレに行ってから教室に戻るわ。それじゃあ、またな」

「え? え、えぇ、それじゃあ……」


 という事で俺はそう言いながら幸村達とはその階段前で別れていって、俺はすぐさま男子トイレの方に向かって行った。


 そしてそれから数秒後、男子トイレに到着した俺はそのまま辺りをキョロキョロと見渡しながら誰もいない事を確認していき、そしてついに……。


「う、うわああああっ! 幸村のおっぱい……めっちゃ触っちまったよっ!!」


 俺は興奮のあまり男子トイレの中でそんな事を叫んでいった。


 実は先ほど幸村が階段から落ちてきた時に、俺はすぐさま片手を伸ばして幸村の身体を思いっきりグイっと抱き寄せていったんだけど、でもその時に俺は幸村の上半身を思いっきり掴んでしまっていたんだ。そして幸村の上半身という事はもちろん……幸村のおっぱいも含まれているわけでさ……。


「はぁ、やっべぇよなぁ……俺、めっちゃセクハラしちゃったなぁ……」


 という事で不慮の事故とは言え、俺はメインヒロインである幸村紗枝のおっぱいを思いっきり触ってしまったのであった。だから俺はあの時、幸村に対して身体を触ってごめんとしっかり謝ったんだ。


 ちなみに俺は幸村に謝罪していた時はとても冷静なふりをしていたんだけど、でも内心はかなりバクバクとしていた。


 だって俺は女の子のおっぱいに触れた事なんて今まで一度もなかったんだからさ。それに元の世界の俺は当然だけど童貞だったからさ……。


「いや、それにしても……幸村のおっぱい……めっちゃ柔らかかったなぁ……」


 俺は先ほどの幸村のおっぱいの感触を思い出しながらそんな事を呟いていった。


 いやマジでマシュマロかっていうくらいにふわふわで柔らかかったな。それに幸村のおっぱいは意外とボリューム感もあって何だかとても感動してしまった。


 そりゃあエロゲ本編でも幸村のおっぱいが描かれているシーンは何度も見てきたけどさ……でもやっぱり画面越しとリアルじゃあ全然違うもんなぁ……。


「ふへへ……って、まずいまずい! 気持ち悪いニヤケ面を晒してる場合じゃねぇだろ!」


―― パンパンッ!


 俺はそんなセルフツッコミを入れながらもニヤケ面を止めるために自分の頬を何発か叩いていった。早くしないと午後からの授業が始まっちゃうし、さっさと元の顔に戻して教室に戻らないとだよな。


「……でもあの柔らかくてふわふわなおっぱいをさぁ……近い将来に主人公の坂上が好き放題に弄れるだなんて思うと……いや、それはちょっとうらやまけしからんな!」


 俺はちょっとだけわざとらしくそう言ってみたんだけど、まぁでも幸村の事を幸せにしてくれるのは主人公だけだと確信しているからな。だからあの二人には早く付き合って貰いたいものだ。まぁ羨ましい事には変わりないけどな!


「ふぅ……ようやくニヤケ面も収まってくれたな。よし、それじゃあさっさと教室に戻るとするかな」


 という事で頬を何発か叩いた痛みのおかげでようやくニヤケ面を収める事が出来た。そしてもうすぐ午後の授業が始まってしまうので、俺はさっさと自分の教室へと戻っていく事にした。

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