恋焦がれて恋叶えて

雀三世

1 愛の神

かいや、愛の神様は知っておるか?裏山にある神社の神様が愛の神様なんだよ。もし、お前が愛したいと思えるに出会えたのなら、裏山の神社にそのと結ばれますようにと手を合わせ祈るといい。ひ孫の顔が見たいのぉ」


おじいちゃんはそう言って7年前に息を引き取った。


「じいちゃんの言ってた事、本当なのか?」


ある春先の冷たい風が吹く日の15時、この春から高校2年生の青井あおい かいは歩きながらおじいちゃんが昔言っていた事について考えていた。

辺りは薄暗く、獣が飛び出してきそうなくらい草が生い茂った道、人気ひとけは全くない。

海は少しの恐怖、恋を成就させたい想いを胸に、お賽銭に入れる500円玉を握りしめ、おじいちゃんの言っていた裏山の神社に向かい歩いていた。


「ほんとこの道おっかねぇ、これで話が嘘ならじいちゃん恨むからなあ」


海が小さい頃、よく悪い冗談を言い皆を揶揄からかうおじいちゃんで、周りは皆、おじいちゃんの話を話半分で聞いていた。

海もまた周りと同じく、おじいちゃんの話は話半分で聞いていたが不思議な事に、裏山の神社の愛の神様の話については、なぜだか本当の話に思えたのだ。


と言うのも、おじいちゃんは海が産まれて来る前、おばあちゃん曰く、おばあちゃんとおじいちゃんが出会う前から、おじいちゃんはその神社に晴れた日は欠かさずお参りに行っていたとか。

その効果なのかは不明だが、おばあちゃんと出会い、お父さんを産んで、お父さんはお母さんと出会い、海を産んだ。

おじいちゃんはずっとそれを神様のおかげだと言っていた。

その話だけはおばあちゃんやお父さんお母さんと家族だけはなぜか信じていたからだ。


そして海は、気になる人ができ、おじいちゃんのその言葉に賭けてみようと裏山の神社に向かうことにしたのだ。


そうこうしてるうちに海は神社にたどり着いた。

腕時計を見ると16時を少し過ぎていた。


「やっと着いたあ」


海は手を膝に付き息を整え顔をあげた。


「げっ、階段...まだあんのかよ...」


神社の頭は見えているがそこには、短くも長くもない20段から30段までくらいの石階段があった。1時間と少し歩いて歩き疲れていた海だが、残った気力を振り絞り階段を登った。


階段を登り終えるとそこにはボロボロの塗装が剥がれ落ち、まるで魔界に通ずる扉のような不気味な雰囲気を出した大きな鳥居と、その奥にたたずむ今にも崩れそうなくらいボロボロな本殿があった。


神社は昔からずっと所有者がいなかったのだとか。なので、おじいちゃんが亡くなるまで、掃除やちょっとした修繕しゅうぜんをおじいちゃんがしていて、そこそこ綺麗に保たれていたらしい。


だが、そのおじいちゃんも亡くなり、掃除や修繕しゅうぜんをする人もおらず、7年が経ち、今にいたる。


そして海は日が沈みきってしまう前にとずっと握りしめていた500円玉を賽銭箱にそっと投げ入れ、鳴らしても錆びて鈍い擦れた様な音しか出ない鈴を鳴らし、二礼二拍手し、「同じクラスの梅野うめの 美乃里みのりちゃんとお付き合いすることができますように。」と祈り、一礼をし、後を去ろうとしたその時だった。


葉をザザーと揺らす強い風と、鳥肌が立つくらいの寒気と共に声がした。


「君はお掃除していかないの?」


海はその声の主がどこにいるのかと辺りをキョロキョロと見渡したが、人の姿などなく、恐怖ですくむ足を無理矢理むりやり動かし走りだそうとしたが、出来ずにしりもちをついた。

怖さのあまりしりもちをついたときに目を瞑り、やばいやばいと心の中で何度も唱えた。


すると、


「あれ?君ってよく見るとなんだか前にこの神社を綺麗にしてくれていた人と、どことなく雰囲気?が似てるね!」


と前方1mくらいから若い女性の声がする。


恐る恐る海が目を開き前方を見てみると、そこには、夕日に照らされ、まるで神々しい光を放つ女神の様な美しい黒髪ロングで、胸はあまり無いがスタイルが凄く良く、目はくりっとした二重で暖かいオーラを放った美女が海を見下ろしていた。


「あれ?君はもしかして、私の声が聞こえてる?私の姿が見えてる?」



これが、海と愛の神様の出会いと、海の切なくも儚い恋物語の始まりだった。





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