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「ワタシ、凪沙のマブダチなの。ワルやってる頃ツルんでた。ここにするずっと前のこと。ハッカーやってたんだ。凪沙にECHIGOYAの企業情報とか盗ませて、政治屋の裏口座からお小遣いくすねてた。株でも儲けた。系列会社のインサイダーでね。遊ぶカネには困らなかったなあ。二人でホストクラブ店ごと借り切ったっけ」ふふ、と懐かしそうに笑う。「それが、彼女、あっさり家庭に収まっちゃって。もうお母さんだって」

 シュウは出逢った頃の凪沙を思い出す。ピンクメッシュの15歳は、投げやりな瞳でタバコを咥えていた。

「今でも連絡とってる。だから逃げてるの知ってた。応援してるよ。あの子のクレジットの痕跡をヨーロッパのいろんな国で付けて、居場所を攪乱してやってるの」

「そいつは心強い」

「凪沙からアンタのこと聞いてた。あの不良娘をイイコにしたのは、どんなヤツだろ、って興味あった」シュウの顔を見て微笑む。「なるほどね」

「凪沙がマトモになったのはダンナのおかげだ。桂 勉の人柄さ」

「それに気づかせたのはアンタでしょ」

「カスミの情報から、キミらブーステッドをサーチしてた」コクマーが口を挟む。「ヤバそうなのがアンタに接近していたから、ジャックに様子を見に行かせたんだ。近い場所だったし。運がいい」

「オレはが強いらしい」

「運も実力さ。ハナシが変わるが、〈Wake up!〉としてもサイキックたちに呼びかけている。ぜひ連帯したいとね。彼ら──サイキックネットワークには呼び名がある。教えておこう。H、U、Gと書く。〈HUG〉だ。笑えるだろ」

 ハグ──抱擁──抱きしめること。

「マザーというリーダーの命名だ。この呼称から察するに、彼らに戦いの意図はないようだ。少なくとも、彼女がトップに居る限りはね」

 HUG。その呼称を胸の内で反芻した。あの女性に逢えば納得する。誰だって彼女にハグしてほしいと思うだろう。

 光の波間から見えた、柔和な瞳を思い返していた。

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