幼稚な六年生

「いけー! ファイト!」

 熱い応援の声が飛び交い、白熱した戦いの3X3スリーエックススリーというバスケ。燕井つばめい小学校の六年生達は、小さな二コートで二試合を同時に繰り広げていた。

 他より人数が多いカナデのグループは、運動音痴だということでカナデが抜けている。この相手には、以前負けたことがあるからだ。カナデにはただその試合を眺めていることしかできない。

 カナデは、『くやしい』と歯を食いしばっては……いなかった。


 いや、やっぱ、強者達と強者達の戦いは見てるのが一番だわ~。


 どこまでも呑気なカナデであった。

 応援もそこそこに、試合は終盤に差し掛かる。

「三グループー! 五秒ルールに気を付けて!」

 三秒ルールならぬ五秒ルールを完全無視して相手ボールになってしまっている。そんなグループメンバーに注意をした。ふとボールに目をやると……。


「俺のボール‼」

「いや、こっちのボールだって‼」


 お前らは六年生か⁉ そうツッコミたくなるほど幼稚な言動だ。床に転がって、ボールを抱えた男子と敵チームの男子がボールを引っ張り合い争っている。


「あははっ」


 爆笑しながら視線を横に動かすと、隣のコートで3X3をしている二チームも、床に転がってボールの取り合いをしている。

「はははははははははっ」

 本来、バスケはパスをし合って相手を振り切るものだ。決して、取り合うものではない。


 六年生なのかと疑うほどに幼稚な試合だった。





「これ俺のボール!」「こっちのボールだって!」→『幼稚な六年生』



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