第3話 ハルとフワリの赤い糸

「お姉さん、自己紹介遅れちゃって、ごめんね。改めて、私は魅天みそらフワリ、マホウトコロ女学院留年中よ。フワリって呼んでね。……よろしくねハルくん♡」

「こちらこそよろしくお願いします。……ところで、ぼく食べられたら、フワリさんとは永遠のお別れなんですか?」

 白魚の指が少年の顎を撫でまわします。

「そんな顔されたら永遠に閉じ込めたくなっちゃうわよ。それでも好い?」

「はい、永遠に離れたくないです」

「お姉さんね、本当は悪い女なんだよ。出逢ったばかりなのに、もう本気になっちゃったのね」

「フワリさん優しくて格好いいです。好きです。大好きです。……そして初めて逢ったばかりなのに、なんだか初めてじゃない。昔から知ってるような気がして……」

「実はね、あなたを見かけたとき、ついつい懐しさが込み上げてきたのよ」

「もしかして、僕とフワリさん、赤い糸で結ばれてるんじゃないですか?」

「きっとそうかもね。でも一ついいかしら?」

「はい」

「あなたは私に本気、本気の本気で有ればあるほど、本当の私を知るとき、心の痛みに苦しんで赤い糸を断ち切っちゃうかもよ。それでも好いの?」

「僕はフワリさんのこともっと知りたいです。どんなに心が傷つこうと赤い糸を断ち切りません。僕の方こそ、フワリさんから赤い糸から切り離されそうで、心配で心配です」

「誓うわ。私から赤い糸は切り離さない。その代わり、あなたが糸を断ち切っても、追いかけちゃうわよ。好いの?」

「はい喜んで♡」

「まず訊くわね。あなたと本屋で初めて出逢うまえ、ナニしてたかわかる?」

 湿った髪を掻き分け、首筋の痣を晒します。鈍いハル君には、妖艶な仕草にしか見えません。悪い頭をフル回転させています。

「髪洗って乾かす時間がなく、急いで外に出たんですか?」

「うふぅ……当たってることは、当たってるわね。あなたは、あんな時間にお風呂入るのかしら?」

「もっと遅い時間ですね。でも何時お風呂入るかなんて自由ですよね。……ああそうだ、フワリさんスタイル滅茶良いし、運動神経も良さそう。部活でたくさん運動して汗流してシャワー浴びたんですね?」

「うふぅふっ、運動って言えば、確かに運動よね~。……クスクスクス……♡」

 可笑しくて可笑しくて堪えきれず、肢體からだの震えが止まりません。

「フワリさん酷いよ。僕まじめに考えてるのにっ!」

「ごめんなさい。笑いが止まらないのはね、あなたを馬鹿にしてる訳じゃないのよ。可愛くて可愛くて仕方ないからよ♡」

「僕、クラスの女子からは陰で陰キャでキモいって言われてるんですよ」

「まだまだオコチャマな若いメスに、あなたの良さなんてわかる訳ないわ。あなたが世界中のメスから嫌われても、私だけはあなたのこと大好きだよっ~♡」


 フワリさんは勢いで抱き寄せます。ハル君の唇を奪います。舌と舌を絡めあう熱い接吻です。唇と唇が離れても糸を引いています。腕の中で朦朧とするハル君は思います。――糸の色は赤じゃないんだね……。

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