便利屋Lettuce:Re

Li'l Hatter

片角の鬼娘と猫娘

ここは妖怪たちが住む異形の世界『異界大都市』。その世界に存在する7つの各エリアの1つである繁華街エリアで、『便利屋Lettuce』を営む社長の『元気童子げんきどうし(片角の鬼娘)』とそこの従業員である『ネコマタ(猫娘)』がいました。


──カチャカチャ


「Lv3モアイ貫通弾をくらえーっ!!」


従業員のネコマタは今日も事務所内で携帯ゲーム機をしながらPCのキーボードをカタカタしていると──ガチャっと玄関のドアが開きました。


「オッハローッ!!」


と元気よく挨拶をしながら部屋に入ってきたのはここ、便利屋Lettuceの社長、『元気童子』でした。


「オハこん狐〜。今こっちは『B級怪獣ハンターワイルド』やってる」

「これこれ〜、ゲームもいいけどたまには外に出て、太陽の光浴びようぜ〜」


と元気社長は笑顔でそう言いながらネコマタの肩を優しくポンと手をおきます。


「やだよー、アタシは社長ちゃんと違って隠キャ妖怪だし、事務所で引きこもってデスクワークとゲームするほうが余程楽しいよー」

「いやいや、そんなことないって〜」


2人は楽しく雑談していると──ピンポーン♪ と玄関のチャイムが鳴りました。


「はーい! 少々お待ちを!」


元気社長は一瞬で入り口付近に移動し、ドアを開けます。するとそこにいたのは、『犬を連れた天狗』の姿がありました。


「すいませーん、先程電話で依頼した者ですが……」

「ようこそ便利屋Lettuceへ。どうぞ、あちらの席へおかけください!」


元気社長は笑顔でそう言いながらお客様とペットをソファーの席へ案内します。


「改めまして、自分は便利屋の社長をしています、元気童子と申します。どうぞよろしくお願いします!」

「おはコン狐〜、ネコマタっす。よろ〜」

「クラマです。こちらこそ、よろしくお願いします」


3人はそれぞれ挨拶を交わしました。


「えー、確かご依頼の内容は……『お客様のペットをこちらで預けてほしい』とさっきお電話で伺いましたが、間違いはございませんでしょうか?」

「はい、合ってます。僕これから『ライブ会場』に行く用事があるので、少しの間うちの『ハチ夫』を預かっていただいても構わないでしょうか?」

「もちろん構いませんよ。料金は4000eとなりますが、よろしいですか?」

「はい。お願いします」


2人は打ち合わせと見積りを済ますと、ネコマタは尻尾を揺らしながら依頼主のクラマに話しかけます。


「ところでお兄さん、誰のライブ観に行くの〜?」

「『茨木ちゃん』のライブだよ♪」

「ウエェッ!? 茨木ちゃんのライブだと!?」


それを聞いたネコマタは驚きの声を出すとともに元気社長はビクッと反応しました。


「うぉ!? ネコマタちゃんまさか知ってるのかい?」

「え、逆に知らないの!? 茨木ちゃんは、『究極の鬼アイドル』だよ? 社長ちゃんと同種だから、知ってたと思ったけど」

「悪い、私R&Bしか聞かないから、そういうのには疎くて……」


元気社長は照れる仕草をして答えます。


「えー、それは人生の半分損してるっすよ! 僕、茨木ちゃんのCD大量に持参してますので、元鬼さんに差し上げます!」

「いや〜、流石にただで貰うのは……」

「いえいえ、握手券用に同じCDを複数購入してますので、ただで譲りますよ!」

「そ、そうですか……ありがとうございます」


依頼主のクラマの熱い押しに負けた元気社長は申し訳なさそうにCDを受け取りました。


「おっと、そろそろ時間だ……では、うちの『ハチ夫』をよろしくお願いします!」

「かしこまりました! 道中お気をつけて行ってらっしゃいませ!」

「ライブ楽しんできてねー」


元気社長とネコマタは依頼主のクラマにお辞儀をして見送ると、次はハチ夫に自己紹介を始めました。


「こんにちはハチ夫くん。私は便利屋の社長、元鬼! で、この子はウチの従業員のネコマタちゃんだ。よろしくね!」

「猫と和解せよ!」


──てくてくてく


ハチ夫は2人の自己紹介をスルーして、入り口付近まで歩いて行きます。


「オヨ〜? もしかして人見知り?」

「おっ、あれは散歩に行きたい合図だな。ハチ夫くん、散歩に行くか〜い?」

「キャン!(いきたい!)」

「はぁ!? 散歩に行きたいとか陽キャかよ!! KUSOがぁ!!」

「ウゥーッ!!(やんのかお前!)」


ハチ夫とネコマタはバチバチに睨み合います。


「こらこら、変なところで張り合うなって。ネコマタちゃん、悪いけど事務所の留守番頼めるかい?」

「アタシはこの事務所から一歩も出るつもりはないから、安心して散歩しに行きたまえ!」

「ありがとう。お礼になんか差し入れ買っておくよ」

「んー、期待して待ってる。行ってらっしゃーい」

「行ってきまーす!」

「ワンワン!」


こうして、元気社長とハチ夫は近くの『百鬼公園』へ散歩しに行きました。



「ハチ夫く〜ん、フリスビーやるぞー!」

「ワンワン!(かかってこい!)」


百鬼公園にて、元気社長とハチ夫はフリスビー遊びをします。


「投げるよ! そ〜れ!」


──ピューーン


元気社長はフリスビーをまっすぐ投げると、ハチ夫はそれを空中で華麗にキャッチしました。


「お〜、よしよし。ちゃんとキャッチできて偉いぞ〜。褒美に私のおやつ野菜ケーキを分けてやろう♪」

「パクパク(超うめぇw)」


元気社長からのご褒美を貰ってご満悦のハチ夫君。さぁ、次の第二ラウンドフリスビー投げが始まりました。


「2回目投げるよー!」


そう言って再びフリスビーをまっすぐ投げると、ハチ夫はそれを華麗に──スルーして、芝生の上に落ちている『スマホポーチ』に歩み寄り、それを口にくわえて持ってきました。


「ワン!」

「ん? 誰かの落とし物かな?」


元気社長はハチ夫がくわえて持ってきた『スマホポーチ』を受け取り、中身を確認すると……『白い粉末が入った小袋』を見つけました。


「これは……『違法薬物』!? しかもご丁寧に氏名とヤクザの組織名が書かれているぞ」

「おーい、それは俺の落とし物だ。早く返してくれないか?」


突然後ろから声をかけられ、振り返るとそこには紫のスーツを着た『リーダー格の鬼』と、その男の背後には『5人の子分』が立っていました。


「おっと、そうでしたか。ではお返しします……ってなるかよ、 この暴力団!」

「チッ、バレたか……!」

「バレたも何も、この薬物にアンタの氏名と組織名が書いてあるから、丸わかりだよ」


元気社長は呆れた様子で言いました。


「それは俺が書いたんじゃなくて、うちの子分が「無くさないように」って言いながら勝手に書いたやつだ!」

「え? アンタの子分が? 超親切じゃ〜ん!」

「「「「「くすくす……」」」」」


元気社長のdisり発言にリーダー格の鬼の子分はくすくすと笑います。


「う、うるせぇ!! とにかく、そのブツは

俺たちの資金源シノギだ! とっとと返しやがれ!」

「やだね! 薬物を売買したり使用したりするのは重大な犯罪だよ。妖怪警察に通報してやる!」


元気社長はそう言ってポケットからスマホを取り出し、妖怪警察に電話をかけようとします……が、


「させねぇぜ!」


──チャキッ


「!?」


懐からチャカを取り出すリーダー格の鬼の妨害により、通報はキャンセルされます。


「丸腰の女子相手に拳銃を突きつけるなんて、アンタひょっとしてチキン?」

「俺の名はアンタじゃねぇ!

酒呑会直系、鬼桜組長しゅてんかいちょっけいきさくらくみちょう』だ! おら、テメェもさっさと名を名乗れ!」

「便利屋の元鬼だ」

「……元鬼か。一度だけチャンスをやろう。その薬物を置いて引き下がるのなら、今回のことは見逃してやる。どうだ?」


鬼桜組長に名誉挽回のチャンスを与えられた元気社長は、頭をかきながらこう言いました。


「そんなやっすい口車に私は乗らないよ」

「フンっ、どうやら死にたいようだな……お前ら! あのガキをやっちまえ!!」

「「「「「ヘイ、カシラ!!」」」」」


鬼桜組長の指令にカシラの子分たちはスーツの懐から『チャカ』と『ドス』を取り出しました。


「次から次へと物騒なモン出しやがって……いいぜ、ならこっちも便利屋らしくお客様にサービス提供してやんよ!!」


元気社長は真剣な眼差しで拳を構えます。


「「「「「くたばれぇーーっ!!」」」」」


鬼桜組長の子分たちは一斉に襲いかかってきます……が、元鬼はかつて『家出したターボ婆の捜索依頼』で習得した『高速移動』を活かして、敵の攻撃を見切って回避し、すれ違いざまに『我流の蹴り技がりゅうのけりわざ』を連続で放ちました。


「しゃあぁぁーーーっっ!!」


──ゲシッ!! ビシッッ!!

──バシシッッ!! ゴスススッッ!!


「「「「「グアァァーーッ!!!」」」」」


蹴り技で吹き飛ばした子分たちは、バッタバタと倒れます。しかし、ほっとしたのも束の間。元気社長は鬼桜組長に目をやると、そこにはハチ夫の顔に銃を突きつけて脅す、鬼でなしがいたのです。


「おっと、そこから動くなよ、便利屋のガキャアア!!」

「クゥーン……」

「鬼桜……ハチ夫くんを人質にするなんてずるいぞ!!」

「ハハハッ! さぁ、雑種犬を解放したければ、その薬物をこっちに返せ! ほら、早く!」

「ちっ、何か打開策は……!」


攻守逆転に追い込まれた元気社長は、頭を抱えると、ハチ夫は突然『そわそわと動き回りました』。


「おい、じっとしてろ! 撃つぞ!」

「ん? あの仕草はいったい……『怪人Ansa(AI)』に聞いてみるか」


元気社長はスマホに向かって「Yo! Ansa」と話しかけると、その声に反応してAnsaは起動します。


〈ヘイメ〜ン、ご用件はなんでしょう〉

「ワンちゃんがうろうろ動き回る仕草を教えてくれないかい?」

〈フンが出る合図です〉

「フン?」


──プリっ💩


「うあ"あ"あ"ーーっ!! クッセェェェェェェーーッッ!!!」

「アンアン!(すっきり〜)」


なんと、Ansaの回答は大当たりでした(やったね!)。


「お、本当だ! Ansaありがとう!

うおぉーーーっっ!!!」


Ansaに感謝の意を伝えた元気社長は、全速力で鬼桜組長の背後に回ってから、そのままの勢いでお尻を蹴っ飛ばしました。


──バシィィッ!!


「ア"ッ"ーーーー!!」


\超!エキサイティン!!/


「ハチ夫くん、ナイス快便! 怪我はないかい?」

「ワン!(ないよ〜)」

「ハァハァ……く、くそっ! 犬のフンさえなければ、こんな結果にはならなかったのに……!」

「因果的面だな。悔やむなら務所の中でするんだな……もしもし、妖怪警察ですか?」


〜5分後〜


「通報感謝します! それでは!」

「お疲れ様です!」


元気社長の110通報で駆けつけた妖怪警察は敬礼をし、鬼桜組長と子分たちをパトカーに乗せて連行していきました。


「さーて、フリスビーの続きを……っと言いたいところだけど、まずはハチ夫くんのフン処理からだな!」

「クゥーン……(すまん)」


元気社長は、持参した『トイレットペーパー』と『袋』を使ってフン処理をしたあとに、フリスビー遊びを再開しました。それから数時間後……


──プルルルル〜♪


ポケットに入れたスマホに電話が鳴りました。


「おっと、クラマさんからの電話だ。はい、もしもし」

『クラマです。たった今ライブが終わったので、そちらの事務所に戻ります。ハチ夫にもそう伝えてください』

「かしこまりました! では後ほど……」


元気社長は電話を切ると、クラマからかかってきた電話の伝言をハチ夫に伝えます。


「ハチ夫くんのご主人さんがライブ見終わったんだって。私たちもそろそろ帰ろっか!」

「ワン!(了解!)」

(……おっと、そうだ!)


ふと、ネコマタの差し入れを買う約束を思い出した元気社長は、事務所の帰りに近くのコンビニへ行って『サバ缶』を購入しました。



──ガチャっ


「たっだいま〜♪」

「ワンワン!」

「ンゴォォ〜〜!!」


1人と1匹は事務所に戻ると、そこには休憩スペースで怪獣のようないびきをかいて寝ているネコマタの姿がありました。


「……ふふっ、ネコマタちゃんはオネンネの時間か」


小声でそう言いながら ネコマタのデスクの上に鯖缶をそっと置きます。するとその途端に、入り口のドアが──ガチャっと開きます。


「ただいま戻りました〜♪」


依頼主のクラマが戻ってきました。


「アンアン!」


ご主人の帰還に、ハチ夫は尻尾を振りながら駆け寄ります。


「迎えにきたよハチ夫。僕がいない間、ちゃんといい子にできたかい? 」

「ワン!(勿論!)」


依頼主のクラマの問いにドヤ顔で「ワン!」と鳴くハチ夫の姿を見て、ほっと胸を撫で下ろしました。


「おかえりなさいませ。ライブは楽しんで頂けましたでしょうか?」

「はい! おかげさまで気分はもう、最高潮ですよ! くぅ〜、茨木ちゃん最高!!」


ライブ後の余韻で興奮が冷めない依頼主のクラマの姿に、元気社長は笑顔になります。


「あはは、それは良かったですね!」

「元鬼さん、ネコマタさん。うちのハチ夫をお預かり頂き、ありがとうございます! これは約束の依頼料です、どうぞ」


と、言って手渡された依頼料を受け取った元気社長は、お辞儀をします。


「ありがとうございます! また機会がございましたら、お気軽にご利用くださいませ!」

「はい、またその時が来たら宜しくお願いします! では僕たちはこれで♪」

「道中お気をつけてお帰りくださいませ!」

「ワン!(またな、嬢ちゃん!)

「バイバイ、ハチ夫くん♪」


こうして、元気社長は率先して入り口のドアを開けて、依頼主のクラマとハチ夫にお辞儀をして見送りましたとさ。


〜おしまい〜


※キャラプロフィールは、紹介文に書いてます。

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