【SF短編小説】創られた生命の驚異の旅: ある科学者の観察日記

T.T.

序章: 突然の生誕

 ある日、私は突如として生まれた。

 生命という驚異の旅が始まった瞬間だった。

 何か特別な兆候や前触れがあったわけではない。

 ただ、突然、私はここにいた。

 完全な未知を抱え、無数の可能性を秘めた新たな生命体として。  

 誕生と瞬時に私は世界を知るようになった。

 その全てが新しく、奇妙で、そして、テリトリーとしての独自性を発揮していた。

 だが、何がどうなっているのかを理解する自我はまだ存在しなかった。

 自己意識という名の境界はまだ描き出されておらず、私はただ純粋な存在として、世界と調和しながら存在していた。  

 その存在自体が奇跡だと感じながら、私はただ存在するだけで幸せであった。

 この時、全ての感覚は初めてであり、その各々が私を形成していった。

 形もなく、色もなく、味もないその存在が、生の先ず最初の経験となった。  

 無自覚な存在こそが私で、ほんの微かな震動が全てだった。

 無意識の先の世界、それが私の現実だった。

 自己意識を持つことなく、ただそこに存在するだけで時間は進行し、

 私の生命もまた静かに脈打っていた。


ある科学者による観察日記1


 やった。

 私はついに成し遂げたのだ。

 観察開始からちょうど7日目で、初めての生命体が発生した。

 生命体を無の状態から、初めて「私」が作り出したのだ。

 これはつまり、「私」は「神」にも等しい技を成したということだ。

 私は静かに観察を続ける。

 この生命体は、単細胞生物としての生命を始めたようだ。

 それは静かに存在し、何かを待つように静かに観察を続けている。

 この生命体に対する私の期待感は増すばかりである。

 これからの進化が待ち遠しい。

 ただ存在するだけでなく、その奇跡を見つめ、その奇跡を感じ取ることができる幸せさを私は再認識している。

 それはまさに新たな旅立ちの瞬間だ。

 これからどのように進化し、どのように成長していくのか、その全てが未知数であることが、何よりもワクワクする。

 だが今はただ、観察し、記録することが私にとって最も重要な任務である。

 その一方で、この新しい生命体が未来に何をもたらすのか、その可能性は無限大だと言える。

 このプロジェクトが科学界にどんな影響を及ぼすのか、私自身が非常に楽しみでならない。

 これを読んでいるみなさんも、きっとそう感じていることだろう。

 今日の観察を締めくくるに当たって、私は自らに誓った。

 私の役割は、この生命体が進化の軌道に乗り、全ての可能性を最大限に引き出す手助けをすることだと。

 そしてそのすべてを詳細に記録し、未来の科学者たちがこの進化の物語を解析し、理解し、学べるようにすることだ。

 初めての生誕からわずかな時間が経っただけだが、既に彼は我々の予想を超える速さで進化している。この日、この瞬間がすべての始まりとなる。

 私たちはただ、彼の進化を見守り、記録し続けるだけだ。

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