僕は言霊の大賢者〜孤児に転生しましたが、文字を操る言霊スキルで無双します!!〜

陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中

第1話 異世界転生

 結婚式は厳かにすすんでいた。

 と言っても、俺、藤原智樹ふじわらともきの結婚式ではない。俺はこの結婚式場の従業員であり、今日も仕事の一環として、現場の進行に立ち会っているのである。


 教会と披露宴会場が隣接している結婚式場というのは以外に少なく、教会での結婚式に憧れる新婦は多いものの、いざ移動を考えた際に教会と披露宴会場が離れていると、最悪来賓が電車で移動する羽目になってしまう。


 成人式でもないのに、着物やドレス姿の集団が電車に乗るとか、来賓からするとかなり迷惑だよな。だからタクシーに分乗して移動することになり、金もかかるわけだ。

 歩いて行かれる距離にあるのが、結婚式の雰囲気も壊れなくて最も望ましい。


 だからうちの結婚式場は、中堅ながらなかなかの人気だ。披露宴会場も重たいカーテンを開けば、外の景色も見ることが出来て、美しい中庭も見どころの1つだ。

 そんなところも人気だったりする。


 学生時代のバイトで、結婚式で流す動画編集を始めた結果、そのまま就職することになったのだった。俺の仕事の本番は披露宴会場だが、こうして教会の進行にも立ちあうことになっている。


 父親と腕を組んで歩く新婦の為に、観音開きの教会の扉を開いたら、後は後ろの方で進 行を見守る。新郎に新婦を引き渡し、今日も問題なく終わる筈だった。

 閉ざされていた教会の扉が勢いよく開かれて、俺の鼻とオデコをしたたかに殴打する。


 思わず顔を押さえた俺の目の前を、怒りの形相をした若い女がズカズカと進んでいく。

 ──あ、これ、ヤバいやつだ。

 長年の経験から、俺を含めた従業員たちが一斉に女の確保へと動き出した。


 あくまでも大きな騒ぎになって、来賓や花嫁花婿たちを動揺させないよう、静かに、しかし小走りで。だが俺はすぐにさらなる異常に気が付く。外から漂う異臭。俺の数歩前で足を止めた女は手にロープを持っている。


「ふざけんなよ!!あたしと子どもまで作っておいて、今さら他の女と結婚!?

 あたしに隠し通せるとでも思ったの!?」

「ゆ、ユリ!いや、これは……。」

 おいおい新郎、やっちまったなあ……。


 大事にならないようにという配慮もむなしく、ざわつく教会の参列者たち。

「あたしから巻き上げた金で、その女にプレゼントしてたの、もう知ってんのよ!

 許さない!あんたも、その女も!!」


「ちょっとユウジ、ほんとなの!?」

「お、落ち着けって、マドカ!」

 新婦の平手打ちが新郎にきまる。

 あーもうめちゃくちゃだよ。俺が後ろから女を確保しようとした時だった。


「……みんな死んじまえ。」

 女がボソッとつぶやき、ロープにライターで火をつけた!油かアルコールでも染み込ませていたのか、ロープについた火は外につながるロープの先へと進んでいく。そして。


 ドガアッ!!という爆風に、俺と女がふっ飛ばされる。こいつやりやがった!

 外にガソリンタンク置いてやがったな!?

 俺は女が下敷きになってくれたおかげで、大きな怪我をせずに済んだ。


 窓が割れ、中に炎と煙が入ってくる。

 教会の入口は炎で塞がれて通れない。

 早く客を逃さなくては。祭壇の脇の神父が出て来た扉の奥は、非常口になっている。

 煙の量が凄すぎて前が見えづらい。


 非常口の場所をわかっている、俺たち従業員が誘導する他ない。悲鳴と子どもの泣きわめく声の中、出口はこちらだと声を張り上げる同僚の声がする。割れた窓ガラスに気を付けながら、1人ずつ非常口に向かうよう、頭を低く下げて列にならせてすすませる。


 もう誰もいないだろうか?周囲を見回そうとするが、さすがにもうわからない。

 あとは消防に任せて俺も脱出しなくては。

 四つん這いで進もうとした俺の手がなにかに触れる。──さっきの女だ!

 ふっ飛ばされてここで倒れてたのか!!


 お腹をおさえて、

「あ、赤ちゃん……、赤ちゃんが……。」

 と苦しげに息を漏らしている。

『子どもを巻き込んでんじゃねえよ!』

 怒鳴りつけてやりたかったが、煙を吸い込んでしまうからそれどころじゃない。


 気持ちはわかるが、他人を、ましてや赤ん坊を巻き込んだ時点で、同情する気持ちが薄れていく。だがこのままでは母子ともに危ない。もう他に従業員はいない。俺が引きずって行くしかない。女を引っ張り上げようとした時に、再び爆発がおこった。


 俺の体は女を受け止めて吹き飛ばされた。

 頭から血が流れてきて目に入る。

 だんだんと意識が薄れていく。

 赤ん坊、せめて赤ん坊だけでも……。 

 俺の意識は、そこで途切れた。


【──見ツケタ。取リ戻シテ。

 アナタノ絆ヲ。

 救ッテ。彼ラヲ。

 ソシテコノ世界ヲ。】



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