追放編2 そのための力
「魔王軍が来るぞ!みんなかまえろ!」
アラゴンが周りのみんなに号令をかける。
綺麗な金の髪をなびかせ緑色の目で鋭くモンスターを睨む。容姿は恐ろしく整っていて、みちゆくひともみんな振り返る程だ。
村が全焼してからからおよそ8年、色々なことが.....本当に色々なことがあって俺とセレーネは今、王子アラゴン率いるガーディアンズのメンバーとして、この国エンプレイアを守護している。
アラゴンめ、男の俺が見てもかっこいいもんな。
アラゴンはセレーネの方を見るとウインクをする。
「あ、あはは.....」
セレーネは乾いた笑みでアラゴンに手を振る。
8年近く経ち、セレーネもだいぶ変わった。金色の髪こそ当時と変わらないが顔立ちも大人っぽくなってとても綺麗なお姉さんになった。
「おい、セレーネ。王子だぞ、もっとサービスしてやれよ。王子とくっついたら一生安泰だぞ」
俺がそう言うと呆れたようにセレーネがこっちを見てくる。
「私が王子に嫁いだら誰があなたの面倒を見るんですか?エルリック、あなた生活能力皆無でしょう」
「はいはい、ごめんなさいお母様」
俺が冗談めかしに言うと、セレーネが腕の皮膚をつねってくる。
「次私のことを母親だといったら、もう太陽は拝めないものと思ってください」
「エルリック!無駄話をするな、来るぞ!」
アルゴンにそう言われ、俺だけじゃねーよ!と思いつつ、気を引きしめる。
魔王軍の数は100人は行かないくらいと小規模だ。規模からして偵察組だろうか?小隊長的なやつもいるにはいるがなんか微妙なステータスだ。
彼らはこっちにいっせいに突撃してくる。先頭にいるのは小隊長だ。
「リーダーは私が相手取る!セレーネ、君は僕の後ろで私の回復に専念しておくれ」
アラゴンはセレーネにそう指示する。
確かにセレーネは支援魔法に適性がある。しかし魔力の量が桁外れなため魔法アタッカーとしても十分に活躍できる。
そんなセレーネにこの指示をするということは.....
「いい所を見せたってわけね」
俺はニヤッとしながらつぶやく。
「しかし、私は――」
セレーネは抗議しようとするが、ここはやつの肩を持ってやろう。
あいつは仕事のない俺をガーディアンズに誘ってくれた恩人だ。まあ、初めはセレーネだけを誘って、俺はいらないと言っていた。しかしセレーネがゴネてなんとか俺も入れて貰えたんだが.....
「いいじゃねぇか、アラゴンを見ておいてやれよ」
「ですが.....心配なんです.....」
セレーネは少し弱々しそうにそう言う。
「心配なんていらねぇよ」
俺は笑いながらセレーネの1歩前に立つ。
「雑魚は全員俺が殺す。そのための力だ」
後にセレーネに聞いたが、この時の俺は俺の父を殺したフルードにそっくりだったらしい。
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