救ったが?中二病女
私はニートだった。
しかし、『小説家になろう』にて小説を投稿。その間、色々あったが、私は小説の書籍化が決まった。
私の小説、『最弱な転生で不幸な私』の書籍が決まってからの物語である。
書籍化が決まり、私はその作業に案の定追われていた。家族はそんな姿を見て、
「見て!母さん!お姉ちゃんが働いてる!」
と琴音が。
母と父はただただ無言で涙していた。
私はそんなアホ家族を放って作業を続ける。
夏美が家に来た時、
「うちの家族がアホになった」
と私が言うと、
「まぁ、でも、ずーっと心配してたからじゃないの?」
と見事に正論を言った。
サークルの方はよく関西組とは会う感じだ。関西組とは大空みるこ、ふうりん、ナマケモノ、偽善者の四人のことだ。リアル名だと、実空千里、琴浦夏美、望月知恵、二宮真希である。
しかし、東京組と地方組はあまり会うことはなく、最後に会ったのは前の夏コミである。つまり、初対面以降会ったことはない。しかしながら関西組も全員集合はまだないのだ。偽善者についてはまだ会ったこともなく、この頃の私はその本名も知らない。
そんな夏が過ぎ去り、もう秋風が吹き始めた頃の話である。
秋風が吹き始めたと言ったが、一日の大半を室内で過ごしている私は風の変化など知る由もなかった。
私は自室で『なろう』に上げている連載小説の更新の為、キーボードを打っていた。
「おねーちゃん。ポテチ買ってきて」
「何で、私が」
「暇そうだから」
「どこが?」
しっかりパソコンで仕事してますが?風を装っているが、書いているのは一銭にもならない『なろう』の更新である。
結局言い合いになり、コミュ力の低い私が負けた。横暴だ。
仕方なく、私は買い物に出かけ、さっさと用をすませ、帰路についた。
すると、道でうずくまっている女性の姿があり、私は駆け寄った。
「あの……大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。問題ないが、少し水を飲みたいんだが」
「わっ分かりました」
私はダッシュで近くの自動販売機まで行って水のペットボトルを買ってきた。
「おっおまたせしました」
「どうも感謝する」
と彼女は私の買ってきた水を乱暴に取り上げた。
彼女は買ってきた水をごくごくと体内に入れた。
「本当に感謝する。そうだ。お金……」
と彼女は財布を取り出し、中を漁った。
「あっ、いえいえ結構です」
私は断った。所詮、100円ぽっち。しかも、琴音の金だ。私が気にすることではない。
「そ、そうか」
と彼女は申し訳なさそうに財布をしまった。
「じゃあな、命の恩人。また会ったら、何かさせてくれ」
といい、彼女はその場を去った。私はその背中に手を振っていた。
また会うって、そんな日来るわけないか。と思った
中二病チックな女性と別れて、私は足早に家に向かった。そして家に入ると、
「遅い」
という冷たい言葉が私を待っていた。
「まずはお帰りでしょ」
と琴音に指導すると、
「うるさいなぁ、元ニート」
と言って、私の持っていた鞄をガシッと取り上げた。
最近、琴音の様子が変だ。私が立派なニートだった頃はまだこんなに冷たくなかった。 「琴音、最近何かあった?」
と私は聞いたが、
「何のこと?特にないけど」
絶対何かあるやろこいつ。
ツンデレ妹のことは一旦放っておき、私は自室のパソコンに向かった。本の作業で忙しいが今のところは現実逃避?の為に久々にヲタクサークルのチャットを覗くことにした。
チャット内会話————————————
ケンタロウ『冬コミは何も出さないという形でいこうかなと思います』
ふうりん『私は出す。夏のリベンジ』
ナマケモノ『私もー。できればふうりんさんと合作したーい』
ふうりん『いや、もう描いてるし』
ナマケモノ『残念だぜよ』
アルカリ電池『ナマケモノさんのキャラが読めない……』
ふうりん『てか、みるこは冬コミ行くの?』
大空みるこ『行きたいとは思ってるけど』
ケンタロウ『いいですねー。本の作業進んでますか?ふうりんさんやナマケモノさんも〆切大丈夫?』
ふうりん『大丈夫なわけない』
ナマケモノ『今からiPadと睨めっこしに参ります』
大空みるこ『私はまあ、ぼちぼち』
ふうりん『みるこに負けるだと?』
大空みるこ『いいから、仕事しろよ』
ふうりん『くそっまだ一銭も稼いでいないくせにっ!』
大空みるこ『グサッ』
私はこの場所が凄い好きだ。本当に好きだ。
この場所の人はこんな駄目な私を認めてくれる。私に話してくれる。立派な人たちに囲まれて私も自分の生き方を見直すことができた。彼らは間違いなく私の恩人だ。
ピンポーン
「何だ?」
ブ◯リーのようにベルに向けて返事した。
「千智、ちょっと出てー」
と母が言ったので私は仕方なく出ることにした。
「はい、どなたー」
「おお!やはりここであったか、命の恩人!」
私は静かに扉を閉めた。
「何で閉めるんですか!少しくらい話してくださいよ!」
「もう、キャラ崩れてるじゃん!」
もうキリがないので、訪問者。すなわち、あのとき私が救った中二病女子を家に上げた。
私が彼女を連れてくると
「あら、千里の友達?もう千里先に行ってよー。、ほら、そこにかけて、お菓子持ってくるわ」
と母親は完全に歓迎ムードである。
私って夏美とかもいるしボッチじゃないと思うんだけど。何で?
友達は誰でも大切というのが母の考え方なのだろうか。思い出すと、夏美のときもそんな感じだったっけ。
などと私がぼーっとしてると中二病女子は
「どうしたのだ?」
と尋ねてきた。
「いや何でもないです」
と私は返した。
「時に、貴方の名前を問いたい」
「あっ実空 千里です。であなたは?」
と私が問うと、彼女はバッ!バッ!と謎のポーズを二つキメて……。
「山田 優やまだ ゆう」
と答えた。そこは中二病貫かないのね。
「ところで、何の用に来たのですか?」
「いや、私はただ単にお礼を言いたかっただけなのだが」
どうやら優は根はいい奴のようだ。と折角思いかけていたのに私は次の質問をしたことを酷く後悔することになる。
「で、どうやってここに……」
「ああ、君をつけてきた」
「優さん。そろそろ帰りましょうか?」
「普通に追い返そうとしてるよね?君」
私はこの女を『ストーキングウーマン』と心の中で定義づけた。
その後、本当に感謝しにきたのか?と思うほど優はこの家で寛いだ。私の本棚から無言でラノベを借り、ぶつぶつ言いながら読んでいた。読んでいた本はソードア◯トオンラインだった。
「すたーばーすとすとりーむ……」
どうやら感性に刺さったらしい。イキ◯トのようにならなければいいが……。
「優さんはラノベとか持っていないんですか?」
「いや、持ってるぞ」
「へーどんなもの持ってるんですか?」
「なんて、言ったかな?とら◯ラとかおさ◯けとかだろうか」
ラブコメばかりじゃないか。
「あと、宇宙一の無責任男シリーズとか」
めちゃ古い。この作品がマイナーかメジャーか私は分からないのだが、琴音に前聞いたら「?」と返ってきたので、若者はもちろんあまり観ない(アニメの話である)代物だろう。
「ああ、タ◯ラーね。私もアニメは観ました」
ギリギリ知ってた私はその話を広げることができた。
そして暫く穏やかな会話が続き。
「いやぁ千里と話すのは面白いなー」
いつの間にか優は完全にキャラ崩れしていた。登場して少ししか経っていないのに。
「中二病キャラはもういいんですか?」
「いいよ。私は君に心を許した。君をタメで話してくれ」
どうやら私は彼女に心を許した『友人』という立場を授けられたようだ。
ピロピロピロピロピロ
優の電話が鳴った。
「何だ?」
と優は中二病モードに入り、電話に出た。
そして、電話に出たと思うとすぐ優は露骨に嫌な顔を見せた。
「あ、へい」
「どうしたの?」
「ごめん。千里。私、ちょっと帰るわ」
と優は席を立った。
「じゃ」
と言い帰っていく優に私はまた手を振った。
数日後
長い休憩の日数をとっていた私は案の定〆切に追われていた。
夏美からは「それこそ、千里!」と言われる始末。
結果私はカンズメ状態。家からも出てないし、チャットもここ最近は見れてない。
「ヤバイなーヤバイなー」
と唱えながら私はパソコンに向かい作業をする。
すると、琴音が帰ってきた。
「おかえりー」
母の声だ。私はそんなこと気にせず、作業に向かう。
「あら、どうしたの?」
といという声に私は興味を示した。何かあったのか?
そして、次の琴音の言葉を聞いた瞬間。私の手が止まった。
「私、学校行きたくない」
立派な高校生である琴音。
勿論友達もたくさんいる。
琴音は充実した生活を送っていると。
私は思っていた。
だからこそ、その言葉は衝撃的だった。
その翌日、琴音は引きこもってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます