7-陸、図書館の君として探される?

『陸、説明を求めます。京極が大学の図書館で人探しをしているらしいわね?』

コンちゃんからのメールにびっくりする。そんな話、知らないけれど……。



隣に座る西野(α)にきいてみる。

「なぁなぁ、京極様が人探しをしてるって噂があんの?」

「お、陸にしては早いじゃん?そうだよ、ここんとこ図書館に出没しているらしいよ。」

「…………別に図書館に行く位、普通じゃね?学生だし?」

「図書館嫌いのお前が言うな。資料を探すと言うより、館内を歩き回られているから誰かを探しているんだろうって。こんな機会、そうそうないから俺もこの後行く予定。陸もどうだ?京極家と交流を持てる機会だぞ?」

首をブンブンと振った。お近づきになんてなりたくない

ここが小説の中の世界だとかそんなことは信じていない、ただコンちゃんが京極様を警戒している以上、何かはあるのだ。 コンちゃんは上流階級のΩだ、その分本能、つまり 第六感が強いのだ。コンちゃんを不安にさせる者に近づく訳にはいかない。


『そのようです。でも!俺を探している訳ではないかと!課題なんて見てもらってないし!図書館で会った記憶もありません!』

『じゃあ、誰を探しているの?』

『存じません!』


「お~、高速入力」

コンちゃんに返信している俺をからかうように西野が言う。

いや、俺必死だから。構っている暇無いから。

あ、いや、

「西野は誰を探しているか知ってんの?」

「…………馬鹿?俺が知ってる位だったら、京極様は既に見つけているだろ。」

「あ、いや、なんつーか。性別とかさ」

「ああ…不明だよ。探されているのが番様なのか、側近なのか。千葉さんとか京極様が直接リクルートしたらしいし?」

「ああ…」

猪瀬、千葉、といえば京極様の両翼で有名だ。コンちゃんは

『特に千葉よ千葉!ヤツがリクルートしただけあって人間の心が無い!黒い事はほぼヤツがやっているわ』

なんて言ってたなぁ……。

コンちゃんの為にもターゲットを知りたいけど

『陸!余計な事をしないでよ!君子危うきに近寄らずなんだからね!』

と先に釘をさされてしまった。コンちゃんってサトリ?俺の事をよく分かっている


「陸、顔がデレデレ。……いづれ会わせてくれよ?」

「おう」


図書館からはできるだけ離れて過した。どうしても図書館に行かなければならない日は、京極様のスケジュールが埋まっている時を調べるようにした。

『二人が出会うのは梅雨の時期だった。だから、それさえ乗り切れば…………』


もうすぐ、梅雨明け。

『ざまあみろだわ、作者!陸を守りきってやる!』

コンちゃんのはしゃぎっぷりが伝わってきて、和む。


あと、少し…

なのに、京極様からの招集命令がかかった。

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