呪瑠璃(じゅるり)

団田図

序章

 ここは地獄の1丁目

 今日はとある学校の卒業式


「えーそれではこれより、閻魔大王閣下校長の式辞です」


 司会進行役の赤鬼教頭がマイクを置き、目線をステージへ移すと、燕尾服えんびふくに身を包んだ険しい顔の校長がステージ中央の髑髏どくろが積みあがった演説台へと足を運んだ。


 その巨体が定位置につくと、軽く咳ばらいをし、マイクに向かって話し始めた。


「春だというのに地獄で悶える餓鬼畜生どもの血で育った彼岸花が狂い咲くこの佳き日に、『獄立ごくりつ怒鬼吐忌どきどき呪学院じゅがくいん』卒業証書授与式を挙行できることを喜ばしく思うぞ。

 たった今、卒業証書を授与した10万名の卒業生どもよ、おめでとう。貴様たちはこれより一人前の立派な呪いとして旅立つのだ。

 わら人形になるもよし、お城の姫を眠り続けさせるもよし、人間の醜き歪んだ願いである呪いを実現させ、その役割を果たせ。

 そして、その呪いを実行した人間を、ここ地獄へと引きずり込むのだ。

 なんといっても今年は、すべての卒業テストに満点をたたき出した者がおる。


 よくやった!『瑠璃』!


 お主はこれより人間の姿となり人間界へ入り込み、さらなる呪いの普及に努めるのだ。地獄で受けた億千の苦しみを忘れず、その身を粉にして働いてこい!

 貴様らの前途に呪い多からんことを祈念して式辞とする」


 昨今、人間界では道徳心が高まり、地獄への落伍者が減る一方。


 そんな状況を危惧した閻魔大王が地獄に呪い学校を設立し、現世に強い恨みを持ったまま地獄に落ちてきた堕獄魂だごくこんを集め入学させた。


 入学が許されたものは苦行から解放されるも、呪いに関する理論から歴史までの全てを勉強させられるのであった。


 そして卒業後は呪いそのものとなり現生へ渡り、地獄の人材不足を補うべく一人でも多くの堕獄魂だごくこんを作り出す役割を与えられるのであった。


 3年の組、恨めし若き乙女・瑠璃るりはこの学校を首席で卒業した数少ないエリート呪い。そのわずかなエリートだけが閻魔大王の許しを得て、呪いの力を持ったまま輪廻転生りんねてんせいすることができる。そして、その者に課せられた使命それが、


 呪い普及地獄誘致活動。


 これは、そんな彼女の現世での高校生活を追った青春グルメホラーストーリーである。



 青春グルメ?

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