第8話

俺は、ゼネラルアーマーとゼネラルソードを召喚し、大剣を肩に担いでいる。

クレライン達には、俺が持っていた剣と短剣を渡してある。

途中で、フォレストウルフの大きな群れに出会ったが、このときフルプレートアーマーの便利さを実感した。防御を疎かにするわけではないが、敵の数が多いと、攻撃のすべてを避けることはできない。特に、背中や脚への攻撃は、かわし切れずに革鎧を裂かれることもある。相手が多いと、革鎧がボロボロになって、ダメージが体に届きかねないし、破れたところを咥えられると、そのまま引き倒されることもある。しかし、金属のフルプレートアーマーなら、フォレストウルフの牙や爪では傷付けることも出来ないので、かわし切れない攻撃は無視できる。そして2メートル近いゼネラルソードの威力も凄い。軽い一振りで2~3匹を両断してしまえるので、あっという間に死体の山が出来上がった。

2人も剣と短剣を巧みに操ってサクサク倒していく。


闘いが終わり、「2人は剣が上手いな。俺にも教えてくれ」

2人を褒めながら、フォレストウルフの肉を少し食べ、魔石を10個食べた。

狼爪斬1、長駆1、俊足1,遠吠え1のスキルを得た。


「何で魔石を食べるのよ?売れば金になるのに」とオーリアに抗議される。

「いや、これは俺のスキルなんだ」と言い訳すると、

「いいじゃない、魔石はまだ残ってるし、毛皮も売ればいい稼ぎになるんだし」とクレラインが庇ってくれる。

2人は、手際よく毛皮を剥いでいく。その毛皮は俺が背負うことになった。


「奴隷契約にはどれくらいかかるんだ?」

「金貨が要るわね」

「俺は、そんなに持っていないぞ。この毛皮と残りの魔石でどれくらいになるかな?」

そんな呑気な会話をしながら街へ向かっていた俺達だったが、気がつくと盗賊に囲まれていた。

「へへへ、俺達は領主様の兵隊だ」

「ここを通るなら通行料を払ってもらうぜ。体でよ。へへへっ」

「そっちの奴はいい鎧を着てるじゃねえか。ガキにはもったいないから、もらってやるよ」

と下品に笑う。

俺はエアーカッターを複数放ちながら、前方に突進して3人の男達を斬り殺した。

「オーリア、クレライン、殺れ」と俺が叫ぶまでもなく、2人は左右と後の6人を斬り殺していた。

さすが人殺しを職業にしていた奴らだ、躊躇いがない。

「たいして持ってないな」

俺が盗賊の懐を漁りながらグチると、

「全くケチな盗賊ね。何も持ってない」

2人も、盗賊たちの懐を漁りながら文句を零している。

「こいつらの服と鎧を剥がして着るか?」

「嫌だけど仕方ないね」

俺は今の体格に合った服と革鎧を盗賊の死体から剥いで着込み、オーリアとクレラインも盗賊達が着ていた服を袖をまくったり、ズボンの裾を捲り上げて着込んでいる。革鎧は大きすぎたので諦め、剣帯だけを腰に巻いて、その上からローブを羽織っている。盗賊達の持っていた剣や短剣は有難く頂戴した。


街に戻ると、新しい宿を探して3人部屋を取った。

この宿でも「汚ったねえな。まず、裏庭で体を洗ってくれ。でないと部屋には入れん」と言われた。

裏庭で体を洗ってカウンターのところに戻ってくると

「へぇ~、お2人さんとも別嬪だね」とニヤけている。

「部屋の鍵をくれ」と色ボケした親父をせっつくと

「うらやましいね~。夜は出来るだけ静かにしてくれよ」と、冷やかしながら鍵を渡してきた。

オーリアとクレラインを連れて部屋に入り、

「さてこれからのことだけど、どうする?」

「どうする?って何を?」

「どうやって金を稼ぐかってことだよ」

「今、いくら持ってるの」オーリアに聞かれて俺は、盗賊から奪って、鎧のあちこちに隠していた銀貨を、ベッドの上に広げた。

「銀貨ばかりで82枚か」

「あると言えばあるけど、あっという間に無くなる額ね」

「そうだろ。だからどうするって言ったんだよ」

「普通に魔物を狩って、素材を売ればいいんじゃないの」

「それなら明日さっそく、冒険者ギルドで登録するか。その前に、古着屋で服を買おう」


翌朝、俺たちは古着屋を回って、俺と2人の服を買って着替えてから、ギルドにやって来た。

2人の登録を済ませると街の門を出る。


さて、今日も森の中にやって来た訳だが、今日は試したいスキルがある。

眷属召喚だ。

俺の眷属は今のところ2人だけだ。すると、この眷属召喚は、何を呼び出すのか?新しい眷属か?それともこの2人が遠くにいても呼び寄せることが出来るのか?

俺は2人に少し離れてもらって、『眷属召喚』と念じた。


眷属召喚と念じると、目の前に魔法陣が現れて、ローブで全身を覆い、顔をフードで隠した人影が現れた。

手には長めの杖を持っており、俺の前で片膝をついた。

「顔が見えないからフードーを取れ」

と命じると、黙ってフードを取った。そこにあったのはゴブリンの顔だった。何となく予想はしていたが、やっぱりゴブリンメイジか。

「俺の命令を聞くのか?」と尋ねると、そいつは頷いた。

「話すことはできないのか?」と聞くと、また、首を縦に振る。

『会話はできないのか』

何が出来るか聞こうとしたとき、目の隅に光が点滅しているのに気付いた。意識を向けると文字が目の前に移動して読めるようになった。


眷属 ゴブリンメイジ

名前を付けると強化される。


名前を付けると強化されるのか?

「名前か。ゴブリンメイジだから、メイでいいか。名前を付けるぞ。お前はメイだ」

俺が言い終わると、ゴブリンメイジは一瞬光り、光が収まると、フードの中のゴブリンの顔が、人間っぽい顔に変わっていた。これなら、フードを被っていれば人間で通るだろう。

「顔が人間っぽくなったな、体はどうだ?」

と俺が聞くと、ゴブリンメイジはローブの前を開けた。そこに見えたのは、緑色がかった皮膚をした、ほぼ人間の女の体だった。ステータスが見えた。


名前 メイ

種族 ゴブリン人間

筋力 N

耐久 N

俊敏 N

魔力 G

抵抗 N

スキル ファイヤーボール

状態 ダブリンの眷属


コブリン人間って何だ?

本当によく分からない世界だ。

そんなことより、耐久がNということは、少しでも攻撃を受けるとやられるということか。その場合、再召喚できるかが問題だ。倒されても、再召喚できれば使い勝手が良いが、それっきりなら、戦闘では使えないし、もったいなくて試すことも出来ない。使い所が難しい。

まあ、街の中なら大丈夫か?いや、却って街を連れて歩く方が危険か。まっ、野営のときの見張り役位が丁度いいのかもしれない。

俺がそんなことを考えている間に、オーリアとラクレインが寄ってきて、メイを裸にして体を調べている。

「ふ~ん、肌が緑色ってこと以外は、人間に見えるわね」

「確か、ゴブリンにメスはいなかったはず。でも、この娘は女の子よ。ゴブリンじゃないのね」

「ゴブリン人間らしい」

「へ~、ハーフなんだ」

「ねえ、この娘、喋れないの?」

「そうらしい」

「何が出来るの?」

「ファイヤーボールが撃てるだけだな」

「だけって?」

「相手の攻撃が掠ってもやられてしまう」

「何、それ?超弱いわけ?」

「隠し玉とか、野営の見張り役ぐらいしか使い道がない」

「ふ~ん。このまま連れて帰るの?」

「いや、隠し玉にしたいから、普段は送還しておく」

俺はそう言ってメイの召喚を解除した。

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