第20話 生徒会②
「あなた、ローブのアレクサンドリアね。あなたの噂を聞いたことがあるわ」
ピンクの髪をおさげにした女の子がそう言った。
今日はドレスを作りに来たのでしょう? と笑う。
「私が一緒に素敵なドレスをデザインしてあげましょう」
場所は生徒会室の入り口。
そんな場所にいるので中に入れない。
ヒロがそんな女の子の前に立つ
「部屋の入り口に仁王立ちして何を言っているんだ」
女の子には皆優しくしていそうな雰囲気のヒロだが、この男爵令嬢とは仲が良くないみたいだ。
「あら、平民がこのメンバーに会うのはとても緊張するものなのよ。まずは私が話しかけてあげることで、緊張を解こうと思ってるのよ」
そこに、空気の読めないライオネルが割って入る。
「ドレスのデザインは僕がする予定だぞ」
「あら、あなたにデザインができるとは思えないわ」
未だに入り口で言い合いをしている3人に、中の人物が声をかける。
「客人が中に入れないだろう。通してやってくれ」
そう言われ、慌てて中に入る男爵令嬢とライオネル。
ヒロはやれやれと手を広げ、気を取り直してアレクサンドリアを中へ誘導する。
アレクサンドリアが目の前の、さきほど声をかけた人物に目をとめる。
「ウィリアムスですね、お久しぶりです」
一般の生徒であるアレクサンドリアが、突然高位の者に声をかけたことに、部屋にいる者たちが驚く。
第2王子ははじめ単純に驚いたが、自分が呼び出した相手が本当は誰なのか気が付き、すっと王族の表情をまとう。
「お久しぶりです」
知り合いなのかと、部屋にいる者たちが王子の顔を見る。
その中で、静かに彼は告げる。
「6月生まれの魔女の娘、アレクサンドリア殿」
目の前のローブの少女が『6月生まれの魔女の娘』と呼ばれたことに驚く面々。
その中でウィリアムス第2王子は、アレクサンドリアに近づいた。
そして、最上級の礼をした。
片膝を付き、手を取り、額に押し当てる。
この礼は、近年この国では、国王がその母に対して礼をする時のみ用いられていた。
側近がそばに寄り、「救国の魔女の娘とはいえど、やりすぎです」と注意する。
それに対して、さり気なく手で制する。
「
既に、知らなかったとはいえ魔女の娘を呼びつけてしまう失態をやらかしている。
この件を父上に報告するとき、うまいこと言わないと物理的に首が飛ぶぞ」
側近はその事実をうまく飲み込めずに動揺しながらも、静かにうなずき、うしろにさがる。
動揺を静かに隠せないのはライオネル少年。
「え、魔女の娘? アレクサンドリアが? 本当?」
最初はミーハーな気持ちで興奮していたが、はたと何かを思い出した。
「え、てことは、挨拶したい家族って?」
ライオネルが言う大きな独り言を聞いていた第2王子。
余裕そうな笑みの裏で、背中には冷や汗をかいている。
「それは聖騎士だろう」
うなずくアレクサンドリア。
「はい。そう呼ばれています」
ようやく自分のやらかしに気がついたライオネル少年は、膝から崩れ落ち、「聖騎士の奥さんダンスに誘っちゃったよ〜」と喚いていた。
それを横目にヒロが話しかける。
「ああ、だからあの箱をいともたやすく開けることができたのですね」
アレクサンドリアは特に答えなかったが、魔女の娘ならあの開かずの箱を開けることなど造作もないことだろう。ついでに尋ねる。
「あの箱の中身はなんだったのでしょうか?」
「からくり箱にはたいていお菓子が入っているのです」
「ということは。あれは、ずっと開けていなかったはずですから、中身は……」
「はい。腐っていました」
驚く者、喚く者、反応はそれぞれであったが、部屋の隅の方で固まっていたのは、生徒会の一員のハイル少年。
ヒロとのやりとりのあと、アレクサンドリアがハイルに近づいてきた。
「ハイル先輩。こんにちは。先日、宝石がほしいと言っていましたね」
そんなアレクサンドリアに、勢いよくうなずくハイル。そして、肯定するのはまずいかと思い直し、勢いよく今度は首を振った。
そして、アレクサンドリアが次に何を言うのか、固唾を飲んで待っていた。
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