双子なんだし、好みも似ているからね
「兄上……」
「なんだい、弟」
「兄上の護衛兵がいない気がするんですが……」
じっとりと責めるような目を向けられる。
「以前よりも私につける護衛は緩くて良いし、時には自由時間を与えようと思ってね」
「駄目ですって! あの護衛兵は護衛どころか捕食するんですよ!?」
「あっはは、
「笑ってないで!?」
六竜に両肩を掴まれ、ガクガクと揺らされる。こんなに互いに触れるのも、三年ぶりくらいだ。皇太子時代はまだお互いの宮に行き来していたが、即位してからはめっきりなくなった。
「良いんだよ。気に食わなければ
「そ、れは、そうですけど……」
「言っておくけど、たとえ
「兄上、手厳しすぎません?」
「私とお前は、
「図体は大きくなっても、やはりお前はまだまだ子供だね、
「……可愛い可愛い弟なんで、可愛がってくださいね」
「さて、それはどうかな。成人もしたし、これからはお前も政治に参加してもらうから、覚悟しておくんだな」
「兄上ぇ……」
今までは要らぬ噂を立てぬようにするため、お互い距離を置いていた。しかし、その距離が悪意を持った者に付け入る隙を与えてしまったようだ。それであれば参政させ、皇帝の補佐役という地位を確立したほうがいい。
「私を支えてくれよ、
「あ、兄上ぇぇぇぇっ!」
大きな犬のように抱きついてくる
だから、彼女にも光に触れてほしかった。
郷で暮らして、妹が育ってきた景色を知った。
自分が見てきたものとはまったく違う景色だった。一緒に生まれたから――たったそれだけの理由で、何不自由なく後宮で暮らすはずだった少女は、随分と血生臭く光の当たらない世界で生きなければならなくなった。
彼女が、その生活をどのように思っていたかはわからない。だが、兄としては彼女に光を浴びせてやりたかった。
影の世界へと帰ろうとする彼女に、せめて、光の世界へ連れ出す手を与えてやりたかった。
自分ではきっと出てこないから。無理矢理にでも彼女を引っ張り出してくれる彼を。
「私が選んだ護衛兵だ。
双子なのだし。
「さて、私は西充媛のところへ弁解しに行かなければ」
きっと、彼女を色々と不安にさせてしまった。一時とはいえ、寵妃という立場を失わせてしまったのだし。
事情は言えない代わりに、誠心誠意謝って愛を伝えて……。
「そろそろ私も子がほしいね」
「兄上ぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
歓喜の声を上げて
◆
白梅宮には、
「……一緒に行かなくて良かったの……皇帝の専属護衛兵じゃない」
「陛下が、俺にここに残れと言われたように感じましたから」
「何よそれ……」
結果、中途半端に視線を逸らすこととなった。
「ぜ、全部聞いたでしょう。私は郷に戻るから、あなたとはこれで最後ね」
自分を抱きしめる手に、無意識に力が入る。
「本気で
当たり障りのない話をしているな、と自分でもわかっていた。ただ、何か喋っていないと……間ができるのが今は恐ろしいのだ。
「陛下は、白梅宮は空けておくと……」
これからどうするのかと聞かれているのだろう。そんなの、訊かずともわかっているだろうに。
「いれるわけないじゃない。私が今ここにいるのだって、
「あの夜、あなたが言った『誰にも望まれない』っていう意味がわかりました」
「……あんなの忘れなさいよ」
自分でも頭を抱えるほどの失態だったのだから。
「あの時も言いましたが……俺が望んでいる。それでは駄目ですか。皇帝としてではなく
視界に入っていた
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