「桜の木の下の禁じられたメロディ」

あらやん

第一章 運命の出会い

第1話 春の訪れ

春の息吹が高校の校庭に桜の花を満開にさせていた。新しい制服を着た生徒たちが、入学式に向けてわくわくしながら集まっていた。その中で、ひときわ目立つ存在、かなで。彼女は少し不良っぽさを醸し出しながらも、新たな学校生活への期待を胸に秘めていた。


奏は、外見からは想像もつかないほど感受性豊かで、新しい出会いに対する好奇心が強かった。彼女はいつも、自分とは異なる世界を持つ人々に興味を抱き、心の中で新しい何かを探していた。


一方で、校庭の片隅には、地味でおとなしい唯奈しいながいた。彼女は、他の生徒たちの喧騒から離れた場所で、一人本を読んでいた。その穏やかな表情と、控えめな立ち振る舞いは、彼女の内面の温かさを映し出していた。唯奈は、静かに自分の世界に没頭することを好んでいた。


奏は、唯奈のその静かな姿に目を留めた。唯奈の存在が、奏にとって新しい世界の扉を開く鍵のように感じられた。しかし、その時はまだ、積極的に関わることはしなかった。


入学式が始まり、新しい生活のスタートを告げる言葉が校長先生から発せられた。生徒たちは一斉に立ち上がり、校歌を斉唱した。その瞬間、奏と唯奈の視線が偶然交差した。二人は何も言葉を交わさなかったが、その瞬間に何か特別なものを感じた。


式が終わり、生徒たちは教室に向かった。奏は友達と楽しく話しながら歩いていたが、心の中ではずっと唯奈のことが頭から離れなかった。彼女は、どうしても唯奈に声をかけたいと思っていた。


その後、奏は偶然にも唯奈を見つけた。唯奈は一人で教室の隅に座り、本を読んでいた。奏はその静かで控えめな姿に改めて魅了され、思わず声をかけた。


「ねえ、君、一人で何読んでるの?」


唯奈は驚いて顔を上げたが、奏の優しい笑顔に安心感を覚え、小さな声で応えた。


「あ、これ、好きな小説なんです。」


奏は、唯奈の穏やかな話し方と、その瞳の輝きに引き込まれた。二人の会話は短かったが、その瞬間に生まれた小さな絆は、これからの彼女たちの関係の礎となった。


その日の夕方、奏と唯奈はお互いのことを思いながら帰路についた。奏は、唯奈の静かさとその控えめな魅力に心を奪われていた。一方、唯奈もまた、奏の不良っぽい外見とは裏腹の優しさに魅了されていた。二人の心に、新しい感情の種が静かにまかれ、ゆっくりと芽生え始めていた。

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