第6話 1/29 最強の4位

 職場のエレベーターに、小さいディスプレイがついている。時事ニュースや星座占いなんかが流れてるので、出勤時にボーッと眺めるのが日課。


 ちなみに占いの結果は3位まで。4~12位は表示されない。私はそれ系は気にしない派なんですが、一応自分の星座があるかどうかチラっと見る。一応ね?


 ……ちなみに今日は無かった。

 同乗してたいかついおっちゃん二人も圏外だったらしく、こんな会話が聞こえてきた。


「よっしゃ。4位や」

「いや5位やな。4位は俺や」


 重ねて言うが、ちっちゃいディスプレイには3位までしか映ってない。ええ年こいて、おっちゃん方は自分こそが4位だと張り合っていた。


「よう見てみ。ぎりっぎりサソリの尾が見えとる」

「島さん何月? サソリ座やっけ?」

「んーん。乙女座」


 フぐッ……!!

 私はなんとか我慢した。


(コワモテのおっちゃんが「んーん」とか言うなや……!)


 マスクの下でツッコんでいると、おっちゃん達はガハハと笑いながら降りていった。


 こういうしょーもないボケをどこでも挟んでくんの関西人の悪いとこ。たぶん乙女座も嘘。ノリで言っただけな気がする。いやほんま月曜の朝からバイタリティ高。


 まあでも、自分を4位だと思う考えはちょっとええなと思いました。

 順位がわからんのなら、自分で決めてしまえばいい。調子が悪かったら運のせいにして切り替える。レッツポジティブシンキング。


 しょーもないボケに笑ってしまったのは悔しいが、あのお二人の姿勢こそ最強なのでは……と思いました。

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